第7話 冒険者の聖地にやって来た
シノレに教えてもらった繁華街に到着した。
人通りが少ない場所を見つけそこへ降り立った。
そしてそこから繁華街までは4つ足で歩くことにした。
「なんだあれ?」
「犬か?」
「翼が生えてるよ」
「ああ、シノレさんの使い魔か」
「今度は鳥じゃないんだな」
「ってかあれドラゴンじゃね?」
「城で騒ぎのあったドラゴンか!?」
「超かわいー!」
…シノレさん、っパないっす
シノレさんの使い魔か、ですべて納得されちゃったよ。
まあ納得してくれた方が行動しやすくていいけどさ。
周りでいろいろ噂されているけど、とりあえず無視した。
お目当ての物を買いに行かねば。
屋台はどこだ?
…あった。
屋台発見。
おー、肉の焼けるいいニオイだ。
屋台の前に着くなり早速注文した。
「おやじ、1つ頂戴」
周りからものすごく注目されているが無視だ。
「え、どこにいるんだ?」
屋台のおやじはキョロキョロとあたりを見渡す。
「下だよ下」
その言葉でようやく私の存在に気が付いたみたいだ。
「なんだおまえさん。言葉を喋るのか?」
「そんな些細な事はどうでもいいんだ。とりあえず肉ちょうだい」
困惑気味だけど、とりあえず私の注文を受け入れてくれたようだ。
べちょ。
目の前に肉を投げ捨てられた。
ブチッ!
「こらおやじ!なんで地面に投げ捨てるんだ!私は犬じゃなくてドラゴンだぞ!ちゃんと皿の上に置いてよこさんかい!」
投げ捨てられた肉には砂がいっぱいついている。
さすがに食えた物ではない。
でもそういや私も犬やネコによく投げ捨てて与えてたよな。
少し反省。
「うちは皿とか無いんだが?」
おやじはけろっとしながら反論してきた。
「じゃあどうやって食べるのさ?」
「手渡しだよ。お前さんは手で受け取れるのか?」
両手を見てみるが一応指はある。
手についた砂を払いながらもう一個頂戴と差し伸べたら手渡しでくれた。
早速食べてみる。
「うまーー!」
なんだこのうまさは!
香辛料が違うのかな?
なんにしてもとても美味だ。
すぐに食べ終わったが、お代わりは自粛した。
他にも食べる物はいっぱいあるだろうし。
お金は相手に取って貰えとシノレは言ってたが、自分でカバンを開けれるしお金も掴み事もできた。
「おやじ勘定は?その落ちてる肉の分も合わせて」
「あ、ああ、4銅貨だ」
銅貨はこれかな。
4枚取り出しておやじに手渡しする。
「なかなかうまかったぞ!落ちてる肉は悪いけどおやじが始末してね」
「わかった、って何だそののぼりは?」
結構目立つはずなのに今気づいたのか。
「ってシノレさんの使い魔だったのか!どうりで変なやつだと思ったよ」
今なんか引っかかる言い方だったよね?
どうりで変なやつとか。
まあいい。
気にしていたら負けだ。
「そういやこの辺で超安い道具屋とかないかな?」
「シノレさんの使い魔がいつも利用してる店なら──」
「そこはだめ。最近ふっかけるので別の店に変えようと思ってる。いい店知らない?」
そう言うとおやじは何やら納得したようにうなずく。
「確かに。あの店で買ってるのはシノレさんくらいだろうよ。あそこより高い店なんて無いくらいだよ」
まったく、シノレが引き篭もってるから相手に調子にのっちゃうんだよ。
やっぱ引き篭もりを矯正しないといけないな。
おやじは何件か安い店を教えてくれた。
「ありがとう。肉おいしかったよ」
次の店を目指した。
ニオイのする屋台がいっぱいあるけど、少し向こうにひときわ目立った建物を発見した。
5階建てくらいの建物で剣や杖を装備したつわものが出入りしている。
衛兵と違って服や鎧に統一感がない。
何だろうと遠くから眺めていると、後ろから話しかけられた。
「ねえ君ってドラゴン?」
振り返ると3人の男女がいて、女性が私に声を掛けた来たようだ。
こ、これはまさかエルフという種族ですか!?
女性は耳がとがっていてスレンダーな体型だった。
「そうだけど」
とりあえずは返事はしたものの、見とれてしまっていてうわの空だった。
映画でしか見たことのないエルフが今目の前に!?
「こいつシノレさんの使い魔みたいだぜ?」
巨漢で大きな剣を背負った男はのぼりを見て同僚に話しかけている。
「そうだよ。私はシノレの使い魔だよ」
3人がおおっ!とどよめいた。
エルフへの興味をようやく満たしたので、さっき気になった建物の事を聞いてみよう。
「あの建物って何なの?いっぱい人が出入りしてるけど」
エルフが丁寧に教えてくれた。
「あれはね冒険者ギルドよ。出入りしているのは彼らは私たちと同じ冒険者。私達もあそこに用事があるんだけど一緒にくる?」
おおお!
それは是非にも!
「お願いします!」
頭を下げた姿を見たエルフが、変なドラゴンねと笑っていたけど、そんな事は気にもならない。
「でもあの人ごみだとなんだか踏まれそうよね」
ふむ。
あれだけの人だし、確かに危険だ。
「じゃあ俺の肩に乗っかるか?」
いいアイデアです!
早速飛び上がり肩に着地する。
「なんだかぐらぐらして怖いかも。爪立てたら悪いし。やっぱり飛んで入るよ」
巨漢の男は少し残念そうな顔をしていたが、こっちも知らないうちに傷つけるのもいやだしね。
「私はシノレの使い魔でナァズっていうんだ。よろしくね」
「私は精霊使いのセイナよ、よろしくね」
「俺は大検使いのビットだ、よろしく」
「…エイク、盗賊だ」
3人と一緒に入ると、皆驚いてこちらを見てくる。
「やっぱ注目されてるわね」
気にしない気にしない。
中に入るとそんなに人はいなかった。
あれ、おかしいな。
出入りはいっぱいあったのに。
辺りを見渡すと階段を登っていく人がかなりいた。
2階以降に用事があるのか。
「で、入ってきたけど何か用事があるのかな?」
何かをしたいというのは特にない。
「んーと、ただの好奇心です」
ぶっちゃけちゃった。
「ぷっ」
セイナは口を押さえたが少し遅く噴出してしまった。
「なので私の事は気にせずに、そちらの用件を済ませてください」
「じゃあお言葉に甘えて」
3人は階段の方へ歩き4階まで登った。