第6話 リザレクションでウハウハ?
「ナァズの習得したリザレクションは完全復活で、さらに部位欠損まで治すんだ。凄いスキルだね」
え、そうなの?
「魔法で簡単に治せるんじゃないの?」
「簡単ではないよ。修行を積んだ高位の神官でさえ50%の確立で失敗するんだよ。しかも部位欠損を治すのは高位中の高位さ」
じゃあ簡単に死ぬわけにはいかないんだね、この世界でも。
「切断された腕とかは魔法でくっつけたり出来ないの?」
「くっつけるだけなら出来るよ。でもナァズのリザレクションは欠損してもう存在しないパーツも多分治せると思うよ」
それってもはや治すってレベルじゃないと思うけど…。
「多分そのパーツが再生されるんだろうね」
そんな凄いスキルなんだ!
…歯とかも再生されるのかな?
「ナァズの習得したリザレクションは大金持ち待ったなしの一直線コースだよ」
まじですか!?
「教会は低い確率でしか蘇生しない魔法で、莫大な金額のお布施を貰ってるからね」
さすが宗教法人、儲かってそうだね。
あ、意味が違うか。
「竜玉に付与出来るって言ってたけどその竜玉はどこにあるの?」
「さあ?」
「念じてみるとかしてみたらどうかな?それで出なかったら聞いてみればいいし」
念じて出るのかな?
出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ!
「出た!」
気がつけば左手に持っていた。
水晶のように透き通った丸い玉だった。
「出たね。なるほどこれが竜玉か」
シノレは竜玉にかなりの関心があるようだ。
「じゃあ次はリザレクションを込めてみようか」
込めるって言ってもどうすればいいのだろう?
さっきと同じように念じればいいのかな?
リ~ザ~レ~ク~ション!
左手で持っている竜玉を凝視していたら急に発光を始めた。
「光った!」
「凄い!」
光を放った竜玉は透明度がなくなり純白な色に染まった。
「これを使えばリザレクションの効果があらわれるのかな?」
「多分そうだね」
そういうなり私から竜玉を奪い取った。
「わ、こら返せ!」
「これひとつで一体どのくらいの値段になるんだろうね」
まさか売るつもりか!
「こら!売り物じゃないぞ!か・え・せ!」
シノレはあははと笑うが返そうとはしない。
「大丈夫、売らないさ。ナァズが危ない時用として僕が持っておくよ」
…そうか、自分が死んだ時は自分で唱える事は出来ないよね。
そう考えれば、緊急用に渡しておいても問題ないか。
なし崩し的に奪われただけのような気もするけど。
「ナァズの事はこれでかなり知ることが出来たね」
うん、出来る事がいろいろ増えた。
「では早速買い物に行ってね」
「なんでやねん!」
おもわず大阪弁でツっこんでしまった
「僕は君の主人だからね。使い魔に命令するのは当たり前の事だよ」
「不当労働反対!」
「ナァズの好きなものを買ってもいいからさ」
むむっ!
「おいしいものとかあるの?」
「そりゃいっぱいあるに決まってるよ。出店も毎日出ているし、この町の散策ついででいいので買い物もよろしくね」
食べ歩きか…。
悪くない。
「言っとくけど私はいっぱい食べるよ?」
「あはは、全然かまわないよ。お金はいっぱい持ってるからね」
な、なんだと!
シノレは金持ちなのか!?
ボンボンなのか?
いや待てよ。
たしか国王が稀代の刻印魔術師だとかって言ってたな。
「刻印魔術師ってなに?」
「え、唐突な質問だね」
さすがに流れぶったぎり過ぎたかな。
「刻印魔法とは刻印された魔法を自分のマナを使って発動させる、マナさえあれば誰にでも使える魔法さ」
「それはクロエから聞いたよ」
「なんだクロエに会ったの」
「うん、城に忍び込んだらクロエの部屋、じゃない廊下で会ったよ」
「…何で忍び込むかな?」
「違う!ちゃんと正面の橋から行ったよ!でもドラゴンだって騒ぎになっちゃって…」
「あわてて逃げて、その先でクロエと会ったって訳ね」
「そういう事」
私は悪くないよ。
「そうだ、国王からクロエとの婚約を取り付けてこいって命令されたよ」
「僕とクロエの結婚話か。国王はまだ諦めてなかったんだね」
「シノレはクロエの事は嫌いなの?」
「いや、好きだよ。おっぱい大きいし」
おっぱいかよ!
「おっぱい以外に好きなところは無いの?」
私の質問に顎に手を添えて考える。
「んー。美人だし強いしおっぱいだし、第一王女じゃなけりゃよかったのに。おっぱい大きいし」
なんでおっぱいが2回も出るんだよ!
このおっぱい星人め。
「クロエが第一王女で身分が違いすぎるから結婚しないの?」
「まさか、身分とかは関係ないよ」
「でもさっき第一王女でなきゃよかったのにとかって言ってたし」
「僕はね、もっと気ままに生きていたいんだ。クロエと結婚したらもういろいろ大変でしょ」
あー…たしかにね。
国王が義父になったら今の暮らしはできないよね。
「でもクロエって出自を疑われてるんでしょ?だったら駆け落ちをすればいいんじゃないのかな?国王はともかく他の連中はクロエの事なんて探さないと思うけど」
「ナァズはよく知ってるね。でも国王が駆け落ちなんてすぐ見つけ出すと思うよ。クロエの事は大好きみたいだし」
…確かにそうだね。
あの国王ならやりかねない。
「で、何で結婚の仲介なんかやってるの?」
「国王の前でクロエの事を呼び捨てにしたら罰を与えられちゃって…」
てへっ。
「それはナァズが悪いね」
「その国王にシノレは稀代の刻印魔術師だって聞いたんだ」
「なるほど。刻印魔術師はさっき言った刻印魔法、つまり刻印具を造る魔術師なんだ。僕は自分の研究がてら造ってるだけなんで、稀代でもなんでもないんだけどね」
特に誇るわけでもなく淡々と喋るシノレを見て、シノレの事がなんとなく判った気がする。
肩書きとかの興味はまったく無く、束縛されるのが嫌いなんだろう。
学者肌と言うやつか。
「あともうひとつ。マナってなに?精神力みたいなもの?」
「そうだね、ほとんどの人が産まれた時から備わっているよ」
産まれた時から刻印魔法は使えるのか。
「よし。話も終ったし買い物に行くか」
「行ってくれるんだ」
「言っておくけど買い物はついでだよ?メインは食べ歩きだからねっ」
「はいはいわかりました」
「あ、でも町に行ったらまた騒ぎになるかもしれない」
「ああ、それなら大丈夫」
そういうなりシノレは奥の箱から何かを取り出し持ってきた。
「これをつければ大丈夫」
のぼり旗だった。
シノレの使い魔と書かれている。
「こんな恥ずかしいのをつけないといけないの?」
「いままでの使い魔にもつけてたから問題ないよ」
お腹の周りにベルトを巻かれて専用の穴にのぼり旗が差し込まれた。
「そういえばクロエはこのカバンの事をマジックバッグだとかって言ってたけど、どんな効果があるの?」
「このカバンはね、僕が許可したもの以外には開けれないんだよ」
「なるほど、って!食べ歩きが出来なくなるじゃないか!」
「ならば持ち主をナァズに委譲しよう。そうすれば君が望んだ相手以外には開けれないようになるから。もちろん僕は前持ち主としてナァズが拒否しても開けれるけどね」
シノレはショルダーバックの中にお金とメモをいれてカバンを閉める。
「とりあえず道具屋に行けばいい。そしてカバンの中のメモを見せれば揃えてくれるとおもうよ。リストに無い物は店主に聞いてどこで買えばいいか教えてもらえばいい」
「行きつけの店とかないの?」
「あるにはあるんだけどね。使い魔が相手だから最近ふっかけてきているんだよ。見せしめにもなるしナァズが選んだ店で買えばいいよ」
見せしめか、怖い事言うなぁ。
そういえばお金の価値がよくわからない。
その疑問を投げるとシノレが詳しく教えてくれた。
金貨1枚は銀貨10枚分、銅貨1000枚分に相当。
銅貨20枚で5人家族が1日暮らせるらしい。
1ヶ月計算だと金貨1枚あればかなり遊んで暮らせるほどの価値があるそうだ。
「なんとなくわかった」
「じゃあよろしくね」
「行って来る」
同じようにまた窓から飛び出した