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第5話 私の能力とエルナスさん

「ただいま」

シノレの部屋に窓から入る。


「おかえり。遅かったねナァズ」

…ムカツク少年だな。

おつかいに行ってやったのにねぎらいの言葉も無いのか!


「私を元の世界に戻せ!」

「無理」

まさかの即答?!


「文献とか調べれば載ってるでしょ!」

「ナァズをお使いに行かせた後に調べたけど載ってなかった」

「え…調べてくれたの?」

「興味深い案件だったからね、時間の無駄だったけど」

なんてこった。


「じゃあ召喚された勇者に合わせてよ」

「どうして?」

「もしかしたら同郷かもしれないじゃない」

「……めんどくさい」

その一言だけ?

このめんどくさがりめ。


「うーん、じゃあこれからどうしようか」

「どうするもなにもナァズは僕の使い魔なんだから働いてもらうよ?」

「なっ!この人でなし!」

「いや僕はヒューマンだから人だよ?むしろ人でなしなのは君だと思うけどね。ドラゴンだし」

ぐぬぬ。


シノレは机に置いていたメモを私に見せる。

「次はこのリストに書いてある物を買ってきて欲しいんだけど」

「いーやーだー!」

「使い魔なんだから働きなさい」

「働きたくないでござる」

「それはこっちのセリフだよ。僕だって働きたくなんてないよ」

「そりゃ気が合うね、まさに主従一体だ」


ん?


あれなんか聞いたことのあるフレーズだ。

えーと。

いつ聞いたんだったかな?

「どうしたのナァズ?」

急に考え込んだ私を不思議そうに見てくる。

そうだ!


「思い出した!」

「何を思い出したの?」

「ここに召喚された時に変な声が聞こえたんだ」

「変な声?」

「えっとなんだったかな。たしかシノレとの主従契約完了とか、スキルがどうとか」

シノレは目を細めた。


「…詳しく話して」

「詳しくって言われても、えっとサーヴァントとしてスキルを習得の後に…エルナスの知識だったかな?」

「エルナスの知識!?」

かなり驚いたシノレは、すぐに考え込んだ。


「後はさっき私が言った主従一体ってやつと竜族の心得とせーりゅーの鱗ってのと…」

必死に思い出そうとうなってはみたものの…だめだ。


「…思い出せない」

「思い出せないってことはまだいくつか覚えてるスキルがあるの?」

「多分あったはずなんだけど…」

いろいろありすぎて忘れちゃったのは仕方のない事だよね。


「ナァズは召喚された直後の事は覚えてる?」

「覚えてるけど…」

覚えてるはずだけど、そう言われるとなんだか心許無い。

「じゃあさ、僕が最初なんていったか覚えてる?」

「あ、それなら覚えてるよ。ナァズは喋れるの、だったかな」

「いやその前」

えっ?

何か喋ってたかな?


「…あっ、思いだした。何を言ってるのかわからなかった」

「それって僕の言葉が理解できなかったって事かな?」

「そう、あと周りの本の文字も読めなか…った、ってあれ?」

最初見たときは確かに何が書いてるのかわからなかったのに、今は何故か全部理解できるんだけど?

「もしかして今は文字も理解できる?」

「うん。なんでだろう?」

「なるほど」

シノレは手を顎に添えて考え込む。


「ナァズが習得したスキル、エルナスの知識のおかげでこの世界の言語や文字を理解できるようになったんじゃないかな?」

「…あーっ!そういえばさっき話した変な声の後にシノレの言ってる事が理解出来るようになったよ、確か」

「やっぱりそうか」

シノレはまた考え込む。


「エルナスの知識って何なのかわかるの?」

「知識の神エルナス、この世界の4神の一人さ」

「神様なんだ」

「戦の神バーキル、契約の神ラクナス、豊饒の神セリナス、そして知識の神エルナスの4神さ」

「なんかナスナスナスと最後にナスがついてるけど兄弟か何かなのかな?」

「三姉妹の女神だよ」

女神なんだ。

「知識の神エルナスの知識をナァズは習得しているんだ。もしかしたら言語以外にも何か恩恵があるかもしれないね」

現時点でそのスキルの恩恵は、会話と言語の読解しかなさそうだけど。

まあそれでも十分だと思うけどね。


「他には主従一体だっけ?」

「うん」

「なんだろうね。エルナスの知識に聞いてみることとかできないのかな?」

「聞くってどうやって?」

「心の中で聞いて見たらどう?」

んー。

エルナスさん、主従一体ってどんなスキルですか?

『主従一体はマスターやサーヴァントが経験した事を共有できるスキルです』


「うわっ!」

「どうしたの?」

「女の人の声が聞こえた」

「もしかして女神エルナスの声?」

「どうかわからないけど、エルナスさんに主従一体のスキルの事を教えてと心の中で聞いたら答えてくれたよ」

シノレは今の私の言葉を聞いて目を輝かせた。

「じゃあやっぱりそれは女神エルナスの声なんだよ!すごいなナァズ」

僕もいろいろ聞いてみたいな、なんて言いながら私の目の前で座る。


「で、なんて言ってくれたんだい?」

「えっと、マスターやサーヴァントが経験した事を共有できるスキルだって」

「経験を共有か。それってナァズに魔物を倒してもらえば僕はこの部屋にいるだけで経験を積めるって事かな?」

なにその夢のようなスキル!

「それってシノレが学校で勉強すれば私も学力があがるって事!?」

「僕の仮説が正しければそういうことだね」

まじですか!


「「じゃあ僕(私)は自堕落な生活を送るからがんばってきて!」」


ふたりでハモった。

そりゃもう見事に。


「こらシノレ、私より年下なのに引き篭もりはよくないぞ!」

「こらナァズ、君は僕の使い魔なんだから、僕のために働いてきなさい!」


…だめだコイツ。

楽な事ばっかり覚えやがって!

30秒ほどにらみ合ったけど、解決されぬまま次の話題に移った。


「後は竜族の心得とせーりゅーの鱗だったね。それも女神エルナスに聞いてみたら?」

そうだね。

自分の事だし知っておかないと。


エルナスさん、竜族の心得とせーりゅーの鱗ってどんなスキルですか?

『竜族の心得は肉体強化、全耐性強化、全魔法抵抗強化、全異常抵抗強化、知覚感知の効果があります。聖竜の鱗は聖闇耐性無効の効果があります』

結構いっぱいあるんだ。

でもそのスキル内容の効果がわからない。

今のをシノレにすべて話すと、少し思案顔になった。


「肉体強化はそのまんまの意味かな。ナァズの肉体がいろいろ強化されてるんだろうね。物理的な攻撃面や防御面とかいろいろ。全耐性強化は元素系攻撃のダメージを軽減してくれるのかな。全魔法抵抗強化はすべての魔法を抵抗できる可能性が強化されるんだろう。全異常抵抗強化はマヒや混乱とかを防ぐ可能性を強化してくれるんだろうね。知覚感知は…第六感のようなものがとてもよく働くのかな?最後の聖闇属性無効は全耐性強化の最終版かな。元素系攻撃の中で聖闇攻撃はすべて無効になるんだと思うよ」

なるほどわからん…。

でもなんとなくわかったような気がしなくもない。

…まあそのうちわかるようになるでしょう。


「ついでに忘れてしまったスキルが何なのかも聞いて見たらどうかな?」

それはとてもいい考えだ。

エルナスさん、さっき教えてくれた以外のスキルも教えてください。

『ホーリーブレスは聖なる炎です。闇属性を持つものには特に多大なダメージを与える事ができます。リザレクションは完全蘇生の魔法です。死んだものを完全に蘇生させることができます。部位欠損なども治せ、体力も回復します。竜玉にリザレクションを付与する事が可能です。エルナスの知識は所有者の言語や識字、その他いろいろ補助します』


…なんだかエルナスの知識はとてもすごいスキルっぽい。

その他いろいろって…どこまで補助してくれるのだろう。

めんどくさがりのシノレに教えると厄介そうだ。

自分で調べるのが面倒だからって質問攻めしてきそうだ。

ノイローゼになる未来が目に浮かぶ…。

よし、黙っておこう。

シノレにはエルナスの知識以外を伝えた。


「リザレクションだって!?」

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