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第3話 王女様と遭遇

「犬じゃないよ!ドラゴンだよ!」


しまった!

ついうっかり大声で訂正しちゃった。


案の定、女は驚きから不審者を見る目に変化した。

「なぜドラゴンがこんな所に…まさか外で騒いでいるドラゴンとはお前の事か?」

目を細め殺気を立ててこちらを睨んでくる。


「ち、違うよ?私は犬だよ犬。そう犬。ワンワン!」

「そんなわざとらしい犬がどこの世界にいるか!」

咄嗟のウソが即バレした!


腰の剣を抜刀して近づいて来た。

やばいやばい。

「ちょ、ちょっと待って!私は用事を頼まれて此処に来ただけだよ!悪いドラゴンじゃないよ!」

私は必死に言い訳、じゃない本当の事を話した。


必死さが通じたのか女は立ち止まる。

ここは何としてでも説得しないと!

「用事だと?誰に会いに来たのだ?」

「えっと、王様?」


バカ!

何で疑問形なんだよ!

しかもよりによって王様に会いに来たとかどう考えても不審者過ぎるでしょ!

自分の言葉に自分でキレてしまった。


女は不審者を見る目から険悪な顔になり、歩みを再開した。

「どこの世界に王への使いにドラゴンをよこす輩がいるのだ!」


デスヨネー。


「私だってそう思うけど、でもちゃんといるんだよこの世界に!えっと確かシノレっていう少年だよ」


「シノレ!?」


シノレという言葉に女は衝撃を受けたのか、険悪になっていた顔が元に戻る。

あの少年ってそんな名前が知れてるのかな?

そういや王様に書状を届けろとかって言ってたし、実は結構な実力者とか?


「シノレ殿がお前を使いによこしたのか?」

殿、いただきました!

…あの少年は何者なんだ?

「そうだよ。このカバンに入っている書状を渡せと命令されて…」

カバンを開けようとするけど…あれ、何で開かないの?


「そのカバンはシノレ殿のマジックバックか」

「何そのマジックバックって?」

「そんな事も知らないのか?お前は本当にシノレ殿の使いなのか?」

そりゃこの世界ではまだ初心者だし。


「本当だよ。何故か知らないけど使い魔としてさっき召喚されたばかりなんだ。右も左もわからないのにいきなりおつかいとか頼むんだよ?あの少年、鬼畜だと思わない?」

「確かに私もシノレ殿は鬼ち…人使いが荒いとは思うが、まさか人の言葉を話すドラゴンを使い魔として召喚するとは…」

女は顎に手を添えて何か考え事を始めた。


「こっちとしてもさっさと使いを終らせて帰りたいんだけど」

早く帰って元の世界に帰してもらわないと。

「わかった。そのカバンの中身は書状とギルドカードが入ってるのだな?」

「…その通りだけど、よくわかったね」

「シノレ殿は使い魔をよこす時は大抵そうだからだ」

女は剣を鞘に納めて私の前で屈んだ。

そして私の首に掛けられているカバンを開け、中身を取り出す。


「なるほど、確かにシノレ殿からの書状だ。父上に届けるから一緒についてこい」

「いや、お前のとーちゃんに渡すんじゃなくて王様に渡して欲しいんだけど」

一瞬ギっと睨まれてすぐにくっくっくと笑い始めた。

変な笑い方だ。


「この私をお前呼ばわりするのはシノレ殿くらいしかいないと思っていたが、さすがに彼の使い魔だな。目上への言葉使いも態度も主と一緒って事か。私はこの国の第一王女クロエ・ラクシュエルだ。そして私の父はこの国の国王であるグランツェル・フェリスだ。覚えておくがいい」


おうじょ?

ちちがこくおう?

え?

えーーーーーーーーーー!

まさか側近を誰一人つけていないこの女が第一王女!?


「え、えっと。あのこのたびはたいへんしつれいなはちゅげん、あ、噛んだ」

「いまさらあらたまる必要はない。それにしてもお前はとても変な使い魔だな。まるで人間みたいではないか?」

人間だよと言いかけたけど、何とか思いとどまった。


王女にカミングアウトなんかしたら、人体実験とかされるかもしれない。

「ソウデス、ワタシハヘンナツカイマデス」

慌てて誤魔化した。

「なぜいきなりカタコトで話すのだ?まさか何か隠し事でもあるのか?」

感のいい王女様だな!

「いえいえ、隠し事なんてないっすよ?」

ジロっと睨んできたが、すぐに笑顔になった。

くっそう、なんてまぶしい笑顔を…。

美人はいいよね、まったく!


「ねえねえ、ひとつ聞きたいんだけどおま…クロエは本当に王女なの?」

クロエはくっくっくと笑いながら私を見る。

「お前と言いかけ、今度は呼び捨てか。不敬にも程があるな」

しまった!

ついうっかり呼び捨てにしちゃった。

「まあいい。私は王女に見えないか?」

「だって側近とか侍女とかまったくいないし」

「そりゃそうだ。ここは私専用の敷地だからな。いわば自室だ」

なるほど、そう言われると不自然じゃないか。

「でもさ、無用心じゃない?私だってこんなあっさりと侵入できた訳だし」

「それはお前がシノレ殿の使い魔だからだ。彼のギルドカードには王宮のどこにでも入れるように設定されている。本来であれば窓などいたる所に魔力結界が張られているので、誰も通れないようになっている」

さっき感じた違和感はその魔力結界ってやつなのね。


それにしてもあの少年、そんなにすごいヤツだったんだ。

特権を与えられるとか、すごくない?

不用心過ぎるとは思うけど。

螺旋階段を下りて扉の前につくと、クロエはその脇にあるコンソールに手を当てた。


「何やってんの?」

疑問に思ったので聞いてみた。

「なんだ刻印魔法も知らないのか?」

刻印魔法?

なにそれ、魔法の一種?


「刻印魔法とはその刻印に触れると己のマナと引き換えに、その刻印に刻まれている魔法を発動する事ができるのよ」

「んー…スイッチみたいなものかな?オンにすると電気がついたりテレビが見れたりとか?」

なかなかに便利な世界だ。

「電気?テレビ?何だそれは?」

あ、やば!

「妄想です」

慌てて目を逸らす。

あからさまに逸らしすぎたかな。

ジト目で私を睨んでくる。

まるで蛇に睨まれた蛙状態だ。

「…まあいいわ。この刻印魔法はその扉を開くための魔法が刻まれているのよ」

クロエが刻印をなぞると扉が開いた。

引き戸だった。

手で触れたら開く自動ドアみたいなものか。



クロエは外に出ると、扉の前いた衛兵に伝言を託ける。

一人はすぐに走り去るが、もう一人がクロエに神妙な顔で話しかける。

「クロエ殿、場内にドラゴンが紛れ込んだとの情報があります。とても危険ですので自室で御自粛を」


んんっ?

衛兵が王女を上から目線で命令してるように聞こえたけど?

しかもどうして殿呼びなんだろう?

クロエ様かクロエ姫って呼べばいいはずなのに。

この国は本当によくわからない。


「ドラゴンなら、そこにいるな」

おっと紹介された。


「ホワイトドラゴンのナァズだよ、よろしくなー」

フランクな自己紹介をしてみた。

衛兵は私をみるなり硬直してしまった。


「お前はナァズというのか」

そういえばクロエには自己紹介してなかった。

「シノレがつけた名前だよ。変な名前だけどな」

「そうか?私は悪くないと思うがな」

顎に手を添えて私を見ている。


「ド、ドラゴンですと!?」

衛兵はさすがに驚き、すぐに私に対して警戒態勢をとる。

「騒ぐな。あと下の騒ぎも鎮めて来い。このドラゴンはシノレ殿の使い魔だ。邪悪なものではない」


邪悪ですって?!

しつれーな!


「いやしかしクロエ殿、ドラゴンを──」

「さっさと行け!」

クロエが有無を言わさず命令すると、しぶしぶながら衛兵は申し受けた用件を遂行に向かった。


「…ここは変な国だね」

「そうか?」

不思議そうにクロエが私を見つめる。


「だって王女なのに衛兵になめられているでしょ?何なのクロエ殿って?私よりもさっきのやつを不敬罪で投獄すべきでしょうに」

別におかしな事を言ったつもりはないのだけどけど、何故かくっくっくと笑われた。


「確かにそうだな。私が正当な第一王女であればそうかも知れないな」

「正当じゃないの?」

「私の母は平民なのさ。父上と関係を持ったのは一度きりだそうだ。地方の視察の時にね。だから私は出自を疑われているのさ」


「…なるほど。物語ではよくある話だね」

「そうなのか?私は結構本を読むが、そのような話は無かったぞ」


そりゃ住んでた世界が違うからね。

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