第2話 初めてのおつかい
普通だったら、今の私の境遇に同情してくれても罰は当たらないよね。
なんだか無性に腹が立ってきた。
おつかいなんて無視してこのままどっか別の場所に飛んで行こうか。
…でも他に知り合いとかいないよね、こんなところに。
いろいろ考えてたら、いつのまにか城の近くまで来ていた。
そのお城は海の上に建っていた。
違った、湖だ。
何て言うか…。
一言で言うと豪華絢爛たるお城。
浦安にある城よりも立派だし。
よくもまあこんなお城を造ったものだと、関心を通り越して呆れる。
この無駄に広すぎる城、いろいろ大変そう。
管理とか掃除とか。
…ところで何処に王様いるんだろう?
このまま進むと不法侵入になっちゃう…よね?
とりあえずは入り口から普通に入ろう。
その入り口は…あれかな?
湖の真ん中に建っているお城と町を結ぶ大きくて長い橋。
勝鬨橋と同じ可動橋だ。
そして今は跳ね上がっている。
あれを上げるにはすごい動力を使いそうだけど…さすがに人力じゃ無理だよね?
今はそんな橋の事なんて気にしてもしょうがない。
さっさとおつかいを終わらせよう。
ゆっくりと降下して衛兵が立っている前に降り立つ。
…すごく広い。
跳ね上がっている橋は4車線程の幅がある。
よくこんな巨大な橋が跳ね上がったものだ。
驚きを通り越して驚愕しちゃった。
いったいどんな強度をしてるいるのやら。
感心していると怒声が上がった。
「ドラゴンだーーーー!」
その衛兵の叫びに応じて武器を携えた衛兵が集まってきた。
そして間髪を入れずに私へと攻撃してきた。
「ちょ、ちょっと!」
面を食らったものの、槍攻撃は何故か簡単に回避出来た。
だけど、数が多い。
ここは一旦逃げよう!
4本足で一気に駆け出した。
「町のほうに逃げたぞ!」
「逃がすな殺せ!」
「町に被害を出させるな」
どうしようどうしよう。
ってやばい、前からも衛兵が来た!
あわわ…。
あ、そうだ。
飛んで空へ逃げよう!
すぐに空へと駆け上がった。
ふう、これで一安心だ。
って弓!
じゃない、矢だよ、矢が飛んできた!
やばいやばい。
「撃ち落とせ!」
いやいやいやいや。
それ殺人だからね!
違った。
殺竜だからね!
って何言ってんだ私。
とにかく矢の届かないところまで逃げよう!
一気に上昇してようやく逃げ延びた。
危なかった。
危うく命を落とすところだった。
しかし、これからどうしよう。
正面からは入れない。
だったら裏口とか?
同じ対応をされて逃げ出す未来が目に浮かぶ。
しかたがない。
忍び込むしかない…よね?
不本意だけどしょうがない。
言っておくけど私はちゃんと正面から入ろうとしましたよ?
免罪符にはならないけど、とにかく自分に言い聞かせた。
よし!
覚悟も決まった。
さて、どっから侵入しようかな?
上空でお城をぐるりと見渡す。
…あそこにしよう。
中央より少しはずれにある塔の窓へと向かった。
窓から中に侵入したときに何か違和感を感じた。
さっきのは何だろう?
窓をくぐった時だったかな?
1分ほど考えたけど、思考するのをやめにした。
考えてもしょうがないから。
とにかく王様にこのかばんの中に入っている書状を届けないといけない。
螺旋の廊下を歩いていると、前方から来た人と鉢合わせになってしまった。
「…何故こんなところに犬がいるんだ?」