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雨の中の冷たさ




 雨の中の墓場で感じた冷たさが、蘇ってくる。

どうしようもできない憎しみまで蘇ってきて、気持ち悪くなった。


「心配しているだけです! それのなにが悪いのですか!?」


 腕を振り払い、白瑠さんと目を合わせたくないから他所を睨む。

白瑠さんがじっと視線を送ってくるのがわかる。

いたたまれなくなり「帰るわよ!」と蓮真君達に怒鳴った。


「俺、パス」


 よぞらの隣に立つ蓮呀が右手を上げて答える。


「は?」

「ちょっと急用思い出したから、よぞらをよろしくな。夕飯までには帰るから、べっぴんさんの愛を込めたご飯を作っておいて」


 あたしを横切りながら、早口で伝えるとウィンクした。

自由すぎる。

「おい? 蓮、何処行くんだよ?」と蓮真君が彼女を追い掛けた。


「仲間に訊いてみるだけだ、狐月の顔知ってるし、聞き込みでもさせる」

「ぼくも行く」

「いちゃいちゃしたいのか?」

「違うっ! 違うからな!」

「……」


 ニヤッと意地悪な笑みを向ける蓮呀に否定する蓮真君は、何も言っていないのにあたしにも否定する。

二人は立派な門を潜って行ってしまった。

 パチン、という音がしたので振り返ると白瑠さんが閉じた携帯電話をしまっているところだった。


「てっちゃぁん、汚してごめぇんね」


 よぞらの後ろに立つ岩神に、にへらと笑いかける。その様子はいつもの白瑠さん。

もう気にするのをやめてくれただろうか。

岩神は顔をしかめて、血塗られた敷地内を睨んだ。

一言謝ると白留さん車を取りに向かった。


「いくわよ、よぞら」

「……はい」


 よぞらは岩神達に頭を深々と下げるとあたしに歩み寄る。

岩神鉄志はあたしを警戒するように見た。


「……アンタ、悪魔付きか?」

「そうよ」


 簡単に頷くと、祖父そっくりなしかめっ面を作り上げる。

あたしは気に止めず、その場を後にした。



 悪魔どもと接触した経緯を先ず見つけ出さなければ。

ヴァッサーゴの能力を使えば不可能ではないが、積極的ではないから難しい。

早く早坂狐月を見つけ出して、アイツにたどり着かないといけない。

アイツが仕掛けてくるその前に。

アイツに大切な誰かを奪われるその前に。

 窓ガラスに薄く映る赤い瞳を睨み付けて、頭の中の住人に怒鳴りつけた。

やっぱり沈黙しか返ってこない。


「はぁい、到着!」


 誰も口を開かないまま、車は家に到着。

車から降りると白瑠さんの携帯電話が鳴った。あまり携帯電話を使わない彼には珍しい。

白瑠さんは車に寄り掛かると弾んだ声で話した。

 それを横目で見てから、ずっと思い悩んでいるよぞらの背中を押して先に家に入る。

玄関には藍さんの靴があった。

ブーツを脱いで早足で廊下を行くと、ダイニングテーブルに藍さんがいた。


「お嬢達、おかえり!!」


 ノートパソコンと向き合っていた藍さんは笑顔で迎える。

幸樹さんはソファーの背凭れに座っていて、微笑んでくれた。

二人が無事だと視認して安堵する。ラトアさんはいないみたい。


「おかえりなさい」

「ただいま。藍さん、動画の削除済みましたか?」

「もう夜通しかかってやっと終わったよー、もう肩こったぁ、お嬢揉んで?」 「お疲れ様です」


 幸樹さんが手を差し出すので、コートを脱いで渡す。

それから例の宣戦布告動画を片っ端から削除してお疲れの藍さんの後ろに周り、肩を揉んであげようと手を置いた。

 藍さんの後ろに立ったことで、PCの画面が視界に入る。

そこに映し出されたのは、あの動画のワンシーン。

反射的に藍さんの肩から手を引っ込めた。


「どうして黙ってたの? お嬢」


 振り返らず問う藍さんから、後退りして離れる。

咄嗟にナイフを取ろうとしたけど、ナイフはコートの中だ。コートは、幸樹さんの手元。

 幸樹さんは状況を飲み込めていないよぞらを引き寄せると、ただ静かにあたしを見据えた。


「びっくりしちゃったよ。あの指鼠が、生き返って悪魔側にいるんだもん。椿お嬢も驚いたよね?」

「…………」

「それで早坂狐月を見付け出すことに躍起になっていたのですね」

「…………」


 後退りして二人から離れる。

藍さんはキーボードを叩くと、画面が見えるようにPCを動かした。

見せられた画面に、指鼠の横顔がアップに映し出される。

 見付かってしまった。

 バレてしまった。

指鼠が生き返って悪魔側にいることも、あたしが指鼠をもう一度殺すために躍起になっていることも。


「椿さん。彼に近付くことは、許しません」


 幸樹さんが告げる。

あの雨の冷たさが蘇ってきた。

あの時、どうしようもできなかった衝動まで蘇り、気持ち悪さに襲われる。


「あたしが近付かなくとも、アイツから来るんですっ! アイツがっ! アイツを、アイツを殺さないと!!」

「殺しは断つ約束でしょう」

「アイツが最後だっ!! アイツが何かする前に、殺さないとっ!!」


 あの時と一緒だ。

愛する人を殺されても、不気味なほど静かに喪失感を抱えて雨の中佇んでいた幸樹さんが、あたしを静かに見る。

それがどうしようもなく、苦しい。

一番怒り狂いたいはずの幸樹さんが、激情を圧し殺していることが苦しい。

蓮呀のように憎しみをぶつけることなく、憎しみを表に出さない彼が壊れてしまうんじゃないかと怖くなる。

それでアイツへの憎しみが膨れ上がるんだ。


「椿さん。指鼠に近付くことは禁じます」

「っ禁じてもアイツから来る!」

「そうとは限らないでしょう」

「アイツが自分を殺したあたしに復讐しないわけがないでしょう!? 必ずアイツはっ……!」


 アイツは来る。

ウルフがウルフマンを殺し返したように、自分を殺したあたしに、もう一度地獄を見せに来る。

あたしの大切な人を殺して、あたしを苦しめて殺す。

殺しに来る。

 その前に地獄に送り返す。あたしがもう一度殺してやる。

今朝と同じ、堂々巡りだ。

この場から逃げ出して、アイツを殺しにいこうとコートを持たずに出ていこうとした。


  ぱしゃんっ。


「っ!?」


 振り返った瞬間に、顔に液体がかけられた。

目の前には、白瑠さん。

無表情であたしを見下ろしている。その白瑠さんの後ろにラトアさんがいた。

 液体が、あの日の雨のように冷たい。

それを感じ取った途端、力が抜けてあたしは倒れた。

痺れが走る。

これは、病院でかけられた液体と同じものだ。悪魔憑きの動きを封じるもの。

 やられた。

白瑠さんは気付いて、電話でラトアさんに用意させたんだ。


「ごめんね、椿」


 意識が遠ざかる中、白瑠さんの声が聴こえた。


「失いたくないんだよ────…君を」


 白瑠さんは静かにあたしを見下ろして佇んでいた。








 目を覚ましたら、あたしの部屋。ベッドに横たわっていた。

直ぐ様起き上がってベッドの下を見ると、武器を詰めたアタッシュケースがない。

また武器を取り上げて、部屋に軟禁された。

舌打ちをしてからベッドを降りて、窓から逃げ出そうとした。


  パンッ。


しかし窓に触れる前に、手は弾かれてしまう。

目を見開いて窓を見てみれば、濡れていた。

また対悪魔の武器か。

 前回はヴァッサーゴが手助けしたから、悪魔の力を徹底的に封じたようだ。

舌打ちする。

窓に触れないなら壊すまでだ。

タンスを投げて怖そうと手にかけた瞬間、黒い靴に黒いズボンがそれを阻止するようにタンスの上に置かれた。

横を見るとヴァッサーゴ。


「大人しくしてろ」

「……なんなよ、アンタ」


 人間の姿で切れ目のイケメンを睨み付ける。

彼はニヒルな笑みを浮かべた。


「大好きなお兄ちゃんの言うことを聞いとけよ」

「前と違うこと言うのね。前は猫をいたぶる鼠を許さねぇとか言って唆したくせに、コロコロと意見を変えて……鬱陶しいわよ」

「未来はコロコロ変わるんだ」


 唸るように吐き捨ててタンスを持ち上げようとしたが、踏みつけるヴァッサーゴがそれを許さない。


「なに? アンタ、あの時は殺しに行くことがベストな選択だったとでも言いたいわけ?」


 ずいっと顔を近付けて睨み付ける。ヴァッサーゴは笑みを吊り上げて私を見下す。


「そうだ。あのまま閉じこもっていたら、白野郎共との仲は最悪、指鼠は襲撃に来ていた。お前が一度家を出ることが最善だったのさ」


 変動する未来を視て、ベストな選択を今まで選ばせたとでも言うのか。


「で? 今回、殺しにいくとあたしは悪魔どもに殺される未来でも視えた?」


 苛ついて言ったら、ヴァッサーゴの顔が歪んだ。


「っんな未来が視えたら、アイツらを全員ぶっ殺してる!!!」


 近距離で怒鳴られて驚いた。

ヴァッサーゴ本人も自分の発言に驚き、目を見開くとあたしから数歩離れる。


「……なに言わせんだ」

「貴方が勝手に言ったのよ」


 大きな舌打ちをするヴァッサーゴ。あたしは溜め息を吐く。


「じゃあなんなのよ? なんでそこまで悪魔と関わらせないようにするのよ。あたしのデッドエンドを視ていないなら、どうしてそんなに消極的なの」

「悪魔と()りあって、死なない未来がないとは限らない」


 不機嫌になったヴァッサーゴは静かに返す。

赤い瞳であたしを見ると、続けて言った。


「ウルフどもとは関わるな。絶対に」

「だから納得できる理由を」

「理由は知らなくていい、てめえは今まで通り従ってりゃいいんだよ」

「……はぁあ?」

「あん? 文句あんのか?」


 ギロ、と睨みあう。

ヴァッサーゴはなにかを知っていて、そのなにかはあたしにはよくないことで、だからウルフと関わらせないようにしているようだ。

ウルフと初めて会った時からそうだ。

ヴァッサーゴは関わるなと忠告してきた。

 なにかを、隠している。

睨み付けてもヴァッサーゴが吐くことはまずない。

ならウルフに直接聞くまでだ。

窓を壊そうともう一度タンスに手をかける。またタンスに足を置いてヴァッサーゴが阻止する。


「やめろって言ってんだろ!」

「邪魔すんなっ!」

「このクソアマッ!!」

「黙れ寄生虫!!」

「ビッチ!!」

「サノバビッチ!!」


 低レベルの言い合いをしながら取っ組み合いを始めた。

タンスを持たないように手首を掴まれたから、脛を蹴り飛ばそうと足を振ったが、ヴァッサーゴが上に飛んで回避。そのままヴァッサーゴはあたしをベッドに押し倒した。


「いつまでもあたしを閉じ込められると思っているなら、大間違いよ!」

「ハン! オレ様と持久戦で勝てると思ってんのか? 小娘が」


 悪役さながらに、あたしをベッドの上で押さえ付けるヴァッサーゴが高らかに笑う。


「ふぅん? あたしと二人っきりがいいわけ? 独占欲?」


 無理矢理笑って言ってみる。あたしに好意がある話は避けたがるから今回も煙になって逃げると思い言ったけれど。

今回だけは逆効果。


「そうだな。二人っきりだ。ご無沙汰だし、楽しむか?」


 にんやり、と不適な笑みを浮かべてヴァッサーゴは目的を変えた。


「V……本気じゃないわよね?」

「あ? 本気だぜ」


 あたしが暴れないように押さえ込んだヴァッサーゴが顔を近付けてくる。

 唇があと少しで触れる、その瞬間。

ヴァッサーゴがドアを振り返った。


「……チッ! くそ女めっ」


 豪快な舌打ちの後、ドアが蹴り破られて開かれる。

ドアを蹴り破ったのは────…蓮呀だ。

猫っ毛の髪を下ろして、肩を露出したニットソーに中にタンクトップ。裾にシワがあるスキニーという女性らしい服装だ。


「べっぴんさぁん、お腹減ったぁ」


 猫みたいな笑みを浮かべた蓮呀が、ドアに寄り掛かって言う。


「ん? ソイツがヴァッサーゴ? イっケメーン」


 ベッドに男に押し倒されているにも関わらず、蓮呀は動揺一つ見せずに笑ってヴァッサーゴを見た。


「べっぴんさん、飯作ってよ」

「……貴女、作れるでしょ」

「作れるけど、今美少女の手料理が食べたい気分なの」

「……よぞらがいるじゃない」

「よぞらは作れないってさ」

「…………幸樹さんは?」

「白いにーちゃんと出掛けた」


 蓮呀が幸樹さんの手料理を食べないなら、他に料理が作れるのはあたしだけ。

白瑠さんと幸樹さんは出掛けている。

 一体何処に?


「昨日はアンタの愛を込めた料理が食べられなくてショックだった。早く作ってよ、べっぴんさん」

「……」


 ヴァッサーゴが上から退いたため、起き上がってベッドから降りる。

ドアに寄り掛かる蓮呀の前を通った。廊下に出て玄関を見るが、遮るように蓮呀が出る。

あたしを家から出さないように、頼まれたみたいだ。

 渋々リビングへ足を向ける。

ダイニングテーブルに藍さんがいた。それと四人掛けソファーにハウン君もいる。


「お嬢、おはよう!」

「……よぞらは?」

「無視!?」


 笑い掛けた藍さんから視線を逸らして保護対象のよぞらを探した。

蓮呀が真下に指差す。視線を下げれば、一人掛けソファーに毛布にくるまって眠るよぞらがいた。


「やっと眠りにいたんだ」

「…………そう。現状は?」

「現状って?」

「貴女の別行動の結果よ、なにか成果はあった?」

「ああ、俺の方はなし。仲間に聞き込みさせたけど、未だに収穫ゼロ」


 昼間だからぐったりしているハウン君が寄り掛かる背凭れに蓮呀は腰を下ろす。それを見てから、横目で藍さんを見下ろした。


「そんな怖い顔しないでよ、お嬢。僕の気持ち、わかってくれるでしょ?」

「…………」


 苦笑を浮かべた藍さんは、悲しそうにあたしを見上げた。

 それを言うのは反則だ。

指鼠の件で藍さんは暴走した。ボロボロに傷付けてしまった。

同じことの繰り返しは嫌だ。

わかっている。

でも、同じことの繰り返しなんかじゃない。

アイツを殺して終わりだ。


「僕も幸樹も白瑠も────…あの男と関わってほしくないんだ」


 わかっている。

藍さん達がそう思っていることはわかっている。


「でも、殺さないと……貴方達が……」

「僕達は大丈夫だよ」

「……貴方が真っ先にやられそうじゃないですか」


 爽やかに笑い退ける藍さんだが、戦闘能力が皆無な彼が一番心配だ。

アイツに悪魔が憑いている以上、白瑠さんもただじゃすまない。


「えー? 僕より真っ先に狙われるのは……まぁ、いいや。それよりお嬢! 僕もお嬢の愛を込めたご飯が食べたい!」

「睡眠薬を込めます」

「え、毒って返すと思ったら睡眠薬!? 新しい…………お嬢? 冗談だよね? 冗談だよね!?」


 藍さんは気を取り直して蓮呀と同じ要求をした。

肩を竦めながらキッチンに入る。

沈黙を返して肯定を示す。

手早くガーリックライスを作ればいいか。白瑠さんがいないから、少量で済む。


「お嬢! 僕を眠らせても出口全部に悪魔が通れない魔除けをしたから出れないよ! 早まらないで! 愛だけ込めて!」

「窓を壊せばいけますよ」

「それはハウンと蓮くんが阻止してくれるからっ!!」


 徹底的にあたしをこの家に軟禁したいようだ。

魔除け水と、見張りはハウンくんと蓮呀。

しかし、蓮呀は見上げるように振り返って、答えた。


「阻止しないけど」


 その発言を理解するまで時間がかかり、数十秒後に席を立っていた藍さんが「へ?」とすっとんきょうな声を出す。

あたしも目を丸めた。


「だぁから、俺、べっぴんさんが家出るの、止めねぇよ」

「えっ? でも、幸樹君にお嬢を出さないでって頼まれた時、"わかった"って言ったよね」

「頼まれてねぇよ? ただべっぴんさんを出したくない意思を理解したって意味の"わかった"であって、軟禁に協力するとは言ってない」


 蓮呀が幸樹さんの頼み事を二つ返事で引き受けるわけがない。

藍さんの爽やかな笑みが、予想外の展開に引きつる。


「ウルフって、去年の秋のホテル爆破事件の真犯人なんだろ? あのホテルにダチがいて、危うく死ぬところだったんだよなぁ」


 真っ逆さのまま、蓮呀はにやりといわくありげの笑みを浮かべた。

突っ立っているヴァッサーゴが眉間にシワを寄せて、その蓮呀を睨んだ。


「べっぴんさんの復讐、手伝うぜ」


 思わぬ味方が登場。

最悪な展開に藍さんの顔に冷や汗が出る。

余裕綽々の策士の本物の動揺だ。

チラリ、と縁眼鏡の奥にある瞳があたしを伺った。

追い込むために、あたしはニコリと笑ってみせる。

ビクリと藍さんは肩を震わせた。

その反応で、もうあたしにかける魔除けの水がないことを確信する。

憶測だが、白瑠さん達は魔除けの水を調達しに出掛けたのだろう。水は蒸発すればなくなるから、もっと必要になる。

藍さんはあたしを力で止めることは出来ない。


「は、ハウン!」

「ハウンは俺らの味方」


 蓮呀はハウンくんの手を持ち上げてぷらぷらと振った。

ハウンくんは反対ではないようだ。


「ぶーちゃん!!」

「チッ! 役立たずめ!」


 もう藍さんがすがれるのはヴァッサーゴしかいない。

悪態をつくヴァッサーゴだが、彼を黙らせるのは簡単だ。

指輪を嵌めるだけで、手品のようにヴァッサーゴは消えてなくなった。

「おっもしれー」と蓮呀がケタケタ笑う。彼女の順応性は、笑えない。


「お、お嬢ぉ……」


 笑えない展開になってしまい、本気で泣きそうな顔になる藍さんがすがるような声を出す。


「すぐ作るので食べてください。車はありますか?」

「バンならラトアを乗せて白いにーちゃん達が使っていったぜ。こっちならある」


 藍さんより先に蓮呀は答えると幸樹さんの車の鍵を出してあたしに見せた。

どうやら、最初からこうするつもりであたしを部屋から出したようだ。


「い、一体何処にいくのさ!? ぱ、パスポートは取り上げたからね!」

「海外に行き、宛もなく探しにいくつもりはありません」

「じゃあ何処に行くん?」

「ウルフと会った近辺を調べるわ。形跡があるかもしれない」

「あたしも行きます」


 ニンニクをサクサク切りながら答えれば、よぞらの声が聴こえた。

ソファーに寝ていたよぞらは起き上がり、背伸びをするとあたしに向かって微笑む。


「吸血鬼モドキの被害者とウルフが接触した場所も、何かの役に立てるかもしれません」

「助かるわ」

「いいえ。ウルフを見付ければ、狐月さんに辿り着けますから」


 笑みを作る元気は戻ったらしい。

見せ掛けの笑みだということはわかる。

でも泣いている場合でも、落ち込んでいる場合でもない。

よぞらもあたしの味方だ。


「ちょっと! だめだよお嬢達!! 僕が白瑠と幸樹に殺されちゃうよ! 僕のために行かないでよ!」

「藍さんも一緒に行きましょう」

「えっ」


 みじん切りにしたニンニクをオリーブオイルで焼けば、香ばしい匂いが広がった。

あたふたする藍さんに、言うと理解に遅れて彼は固まったので笑顔で言い直す。


「藍さんを一人で置いていけないので、一緒に行きましょう。ちゃんと無事に帰ってくれば怒られませんよ。……同じ思いはさせませんから」


 よぞらのようにはいかず微笑みは失敗して、少し弱々しくなった。

同じ繰り返しじゃない。

藍さんにも、幸樹さんにも、白瑠さんにも。

同じ苦しみは与えない。

ちゃんと帰ってくる。


「お嬢…………」


 伝わったのか、藍さんは間を開けてから肩を竦めて頷いた。

藍さんも同行だ。


「そうと決まれば腹ごしらえからだな」

「お嬢の愛を込めたご飯だね!」

「あたしもいいですか?」


 蓮呀もよぞらもテーブルにつく。

先ずは食事から。

よぞらと藍さんはウルフが吸血鬼モドキにした被害者達と何処で会ったかを、ハッキングを駆使して調べ上げた。


「聞いたよ。あの爆弾魔、べっぴんさんのお姉さんを殺したんだって?」


 出来上がったガーリックライスを食べながら、蓮呀がその話題に触れる。

藍さんは微動だしないフリをしてPCのキーボードを叩く。

 藍さんが話したのか、それとも幸樹さんか。

どちらにせよ、事情は大まか把握しているようだ。


「前に話した、守れなかった家族みたいな人?」

「…………そうよ」

「アンタをボコった最低最悪な野郎?」

「そうよ」


 口に入れたお焦げのついたライスの味がわからなくなる。


「ふーん。蓮真が誘拐されるきっかけになった野郎だろ? じゃあ俺の敵だ。徹底的に追い詰めようぜ。なんて言ったっけ? ああ、指鼠か。いたぶろうぜ」


 それ以上深く訊くことをやめると、蓮呀はニヒルの笑みを深めた。

好戦的に目がギラギラと光る。

誘拐の件まで誰かが話したのか。


「行きましょう」


 返答をせずに、食べ終えた後に白瑠さんの部屋に隠されていたコートを羽織り出発を告げた。

幸樹さんの車に乗り込む。

運転席はあたし。助手席には蓮呀、後部座席はハウンくんと藍さんがよぞらを挟むように座った。

 ウルフと出会した海岸へ。

冷たい潮風が吹く閑散とした海岸に車を止めて降りる。


「べっぴんさん、俺のバイクで海岸デートしてたん?」

「デートしてたの? してたのお嬢?」

「黙ってよ」


 蓮呀と藍さんの冗談を一蹴して、あの日ウルフが歩み寄ってきた方角を見つめた。

ヴァッサーゴが過去を見れば、ウルフが何処からここまで来たのかわかるのに。舌打ちする。

 モドキを作るためにウルフは日本に何日か滞在していたはず。滞在していた先を突き止めれば、手掛かりが掴めるだろう。


「とりあえずそっち行ってみようぜ」


 あたしが睨む先へ、蓮呀が先導して歩き出した。


「しらみ潰しじゃあ拉致明かないわよ」

「俺勘良いし、廃墟見付けるの得意ぜ? 廃墟とこの近くにあるモドキの家を確認すれば当たりを引くかもしれないよー」


 楽観的だ。

呆れたが、突っ立って考えるよりはいい。

よぞらと藍さんの調べでは、この付近にモドキの被害者の家がある。

そこを確かめよう。

 車から降りる保護対象を振り返る。

藍さんはよぞらを待っていて、よぞらはぼんやりしているハウンくんにパーカーを貸してフードを被せてあげていた。身長がよぞらの腰くらいしかないハウンくんがフードを被って、よぞらに手を引かれる姿を見ると幼い子どもにしか見えない。

まぁ、いざとなればちゃんと二人を守ってくれるだろう。


「あっれー?」


 いきなり蓮呀が足を止めて振り返った。


「なんでべっぴんさんの元カレ達はアメリカに飛んだんだっけ?」

「? ……アジトに乗り込まれたからよ」

「あの動画はライブだったのか?」

「ライブだったよ。それからウイルスでばら蒔いたのさ。それを僕達が片っ端からデリートした!」


 何を今更。

蓮呀の疑問に藍さんは自慢気に言った。

あたし達がみたのは感染のようにネット中にばらまかれた動画の一つ。ライブで放送された直後に、ばらまかれたのだ。

撮影場所はアメリカアリゾナ州にある黒のオフィス。

各地の狩人も、アジトを荒らされたコクウ達も向かった。

悪魔達はアメリカにいるから。奴等の巣窟はアメリカに、あるはずだ。


「でもよぉ……ここでべっぴんさんがウルフと会った半日後に、動画が出たんだよな? ここからそのアメリカのアジトまで半日で────…着けるもんなのか?」


 その答えは────ノーだ。

正確に言えば、半日じゃない。四時間だ。

ここからあたしが立つこの場所からオフィスに四時間で着くなんて不可能。

不可能なのに、ウルフはオフィスからネット中継した。


「悪魔って、瞬間移動ができるん?」


 お手上げじゃん、と蓮呀は肩を竦める。

ここからオフィスまで、四時間で移動できる手段があるということ。

 額に手を当てて、冷静を保ちながら考える。

ヴァッサーゴは未来と過去を視る能力を持つ。

ウルフに憑いたサミジーナは死者を甦らせることができる。

不可能を可能にすることが、悪魔にもできるのだ。

 つまり悪魔は世界中を簡単に移動できる。奴等のアジトを常識で推測することは無意味に等しい。

往き来できるのだ。

中継終了後に、一分も経たないうちにアメリカを経ったかもしれない。

もしかしたら、日本に戻っているかもしれない。

 まずい。まずいまずい。

モドキと戦うつもりでいたが、悪魔達とやり合う準備はしていない。

狩人も、悪魔退治屋も、アメリカに誘き出された。

万が一日本にいるなら、あたしにちょっかいを出しかねない。

藍さんやよぞらと外に出たのは、最悪な選択だ。

 それに、白瑠さんと幸樹さん。

彼らと別行動もよくない。

奴が、溝鼠が狙う。一緒にいるべきだ。

不安で狂ってしまいそう。

そこに追い討ちがくる。

ザワリ、と悪寒が走った。


「車に戻って!! ハウンくん!」

「え!?」


 怒号を飛ばして、短剣を出す。吸血鬼モドキだ。

まだ姿を現さない奴らを待ち構えて、藍さん達が車に乗るのを待ったが。


  グイッ。


コートの襟を、蓮呀に引っ張られた。


「殺せないんだから、逃げるぞー」

「うっ」


 前回と違って白瑠さんがいない。あたしの手で殺めると厄介だ。抜け出した上に殺めたとなると、お兄ちゃんが恐ろしい。

 走って車に戻ると先程とあたしと蓮呀の位置が逆だ。

蓮呀はモドキ登場を待つことなくアクセルを踏んで急発進させた。

シートベルトがまだだったため、後部座席のよぞらと藍さんが悲鳴を上げて左側に傾く。あたしは窓から顔を出して、モドキを視認する。

 三体だ。

追い掛けてくる。

篠塚さんといた時と同じだ。舌打ちする。

周りを見てみたが、悪魔憑きの人間は見当たらない。

誰が指示している? 予めあたしを殺すように指示してあるのか?

一直線に吸血鬼モドキ達はあたし達を追ってくる。

このままでは追い付かれるし、被害が大きくなってしまう。


「藍さん! 銃はありますか!?」

「い、一応っ」


 後部座席を振り返り、藍さんが懐から出した銃を受けとる。しかし間もなく銃は掌から消えた。


「だめだっつーの。殺しは」

「言ってらんない! モドキはさっさと始末すべきなのよ!!」

「こっち使えよ。殺しちゃだめだぞ。アンタ、落ち込み半端ねーんだから」


 蓮呀が奪った。

彼女は藍さんの銃を膝の上に奥と、腰の後ろから別の銃を取り出してあたしに差し出す。

 蓮呀が銃?

不可解に思ったが、その銃には見覚えがある。エアガンだ。

エアガンでどうしろと言うんだ。


  ガシャン!!


車が上下に車が揺れた途端、後部座席の窓が割られた。

その窓から青白い男が牙を剥き出しに吠える。

ハウンくんは、よぞらの頭を押し潰して伏せさせると顔面に蹴りを入れて吹き飛ばした。

モドキがいなくなった窓から見えた光景に、悲鳴より先に命令を出す。


「飛ばして!!」


 横から来た車を一匹のモドキが掴み、こちらに放り投げたのだ。

蓮呀は振り返ることなく、アクセルを踏む。

間一髪、避けることが出来て投げられた車はグシャリとコンクリートの上に落ちた。

もう一匹が、その車を飛び越えて追い掛けてくる。

他の二匹もだ。

追い付かれる。


「さぁ、ブッ飛ばすぞ! 掴まってな!」


 隣の蓮呀が笑みを吊り上げていた。

ギアを変えて、アクセルを踏み込みスピードを上げていく。

それでもモドキを撒けそうにない。

ドリフトして右に曲がれば、シートベルトをしていない二人がまた悲鳴を上げる。


「ぶつかるんじゃないわよ」


 きつく言ってから、あたしは窓から身を乗り出す。

被害が出る前に腕や足を撃ち抜く。不死身でないなら大人しくなる。

改造エアガンの威力が奴らに効くかはわからないが。

 車の屋根に腕を置いて、狙いを定める。

狙うは、腕。


  ダンッ!!


引き金を引いた瞬間に、予想外の反動で右腕が跳ねた。

普通の拳銃並みの反動だ。

外れた。


「蓮呀!?」

「べっぴんさんが寝てる間に殺傷力高めた。対モドキ」


 ケタケタと蓮呀は笑う。初めに言え。

あたしは文句を言う前にもう一度構えた。それから発砲した。

青白のモドキの右肩に当たると、奴は衝撃で倒れる。

おい、BB弾じゃないよな? これ。

疑問に思いつつ、また発砲していく。

腕を負傷しても追い掛けてくるモドキどもは、ゾンビにしか見えない。

 脚を撃ち抜こうとしたが、信号を無視して車を運転する蓮呀は障害物を避けるために左右に動くため、なかなか標準が合わない。

そうこうしているうちに、モドキが片腕でまた車を投げてきた。

今度は真横に落ちてきた上に、爆発した。

爆風で危うく転倒するところだったが、蓮呀は見事なハンドルさばきで器用に持ちこたえる。


「蓮たん、バイクしか持ってないと思ったけどかなり運転上手いね! 惚れちゃう!」

「あっはは。俺、免許持ってないんだけどねぇ」


 車酔いでもしたのか、苦しそうにしかめた藍さんの言葉に、笑顔で蓮呀は爆弾発言を落とす。

ハウンくん以外は、凍り付いたに違いない。


「……なんで運転席に座ったのよ」

「成り行き。ゲームではクラッシュばっかだったけど、上手いだろ?」


 ああ、死ぬ。

身を乗り出して窓に座っていたあたしは中に戻る。

素人の運転する車の窓から顔を出すのは、死亡率が高過ぎる。


「代わって、蓮呀」

「このスピードで? モドキをどうにかする方が先じゃないか?」


 現在進行形でスリルを楽しんでニヤニヤしているスリル狂の少女から、ハンドルを奪うことが先だと思う。絶対に。

ギュインギュインとタイヤが左右に揺れては、傾く車体。ビュンビュンと風を切っているこの車は、時速百キロに達しそうになっていた。

百キロ近くのスピードで、街中を走っている。

 死ぬ。


「ガハハハッ!! ブッ飛ばしていこうぜ!!」

「ギャアアアッ!!」

「ギャアアアッ!!」


 死ぬっ!!!!

アクセルを踏み込むと同時に、蓮呀の中でも何かのアクセルが踏み込まれた。

 更に加速して大きく揺れるものだから後部座席で悲鳴が上がる。

他の車や電信柱に掠りもしていない奇跡が、これからも続くはずない。

モドキから片付けて、この車を止めないと死ぬ。

あたしは死ななくても後部座席で泣き出しそうな二人が死ぬ。確実に死ぬ。

 後部座席に移動してそこから射撃しようと振り返る。

またよくない光景が目に飛び込む。


「蓮呀伏せろ!」


 咄嗟に藍さんとよぞらの頭を掴んで伏せさせて、自分も屈む。


  パリン!


鉄の板をつけた白い棒がど真ん中を通過した。

止まれの看板を、モドキが投げてきたらしい。

ハウンくんは小さかったため、当たることはなかった。


  ガウン!

  キュイイン!


穴が空いてフロントガラスに亀裂が入り、視界が最悪になってしまったため、蓮呀は本物の銃で撃ち抜き粉々にする。

「おっとと」と蓮呀は、障害物を避けるためにハンドルを回していく。


「二人は伏せてて! ハウンくん、また投げようとして殺して」

「……」


 蓮呀から藍さんの銃を奪い返して、ハウンくんに押し付ける。藍さんとよぞらは床に伏せるように言う。


「おおっと! ガハハハッ!!」

「っ!?」

「ギャアアアッ!! 蓮たんもう許してやめて!」

「超楽しい!」


 いきなり車体が左に傾いたから転倒するかと思った。

後部座席にいるあたし達は下に位置する左側に落ちる。ハウンくんを押し潰してしまう。

 手をついた窓には────コンクリートが見えた。

ガリガリとなにかを削っている音を立てながら、車は左側のタイヤだけで走行する。

推測するに、どうやら何かを避ける際にハンドルを切りすぎて、車体が傾いてしまったようだ。

同じく窓を見た藍さんとよぞらが「キャアア!」と甲高い悲鳴を上げる。ケタケタと運転席で蓮呀が至極可笑しそうに笑う。

 何故あたしはこのメンバーで来てしまったのだろうか。頭痛がしそうだ。

ガタン! と車内が上下に揺れて、二輪走行に戻った。

ドアを蹴り、ハウンくんから離れて射撃を開始する。


「あ。やべ」


 ぐんぐんと目まぐるしく変わる背景を無視して、モドキを撃つ。一匹の脚に命中。

そこで蓮呀の声がする。

 前方を振り向けば、大きなガスタンクのトラックが前を塞いでいた。ぶつかる。

あたしが行動する暇なんてなかった。

蓮呀はハンドルを切る。

車内はトラックに衝突する寸前で、方向転換。

 最悪なことに、Uターンした。

ブレーキを踏むことなく、車はモドキに突進する。

口を開くより引き金を引いた方が早い。急所だけは避けて、ハウンくんから奪い取った銃と改造エアガンでモドキ二匹にありったけ撃ち込んだ。

 モドキは倒れた。

そのまま蓮呀は直進していく。その先に別の車。こっちが逆走しているのだから当然だ。

 ぶつかる。

と思った瞬間、車体が揺れた。


  ブンッ!!


轢いたモドキがジャンプ台代わりになったのか、車が宙を飛ぶ。

大した高さではないが、シートベルトをしていないあたし達は酷い浮遊感に襲われる。

ガシャン! と前方の白い車の上に乗るって、そこを走る。

乗り越えた後、車はコンクリートの上に戻り、あたし達は天井に頭をぶつけた後、落ちた。

乗り越えた車は無事だ。


「ぶはっはははは!! 今のすごくね!? 軽くジャンプして車の上通ったぜ! あはははっ!! ────…もう一回やんね?」

「やめてくださいっ!!!!」


 曲がって普通走行に戻った後、蓮呀がハンドルを叩きながら笑う。

振り返ってアンコールを求めたため、藍さんとよぞらが涙目で声を上げた。

強引に蓮呀を運転席から引き外して、あたしが運転をする。

 遠くでサイレン音がするのを聞きつつ、風が入り込むフロントを見る。

左のサイドミラーがない。

 幸樹さんに、殺される。

ハンドルに額を打ち付けたい衝動にかられた。

バックミラーで啜り泣きながらシートベルトをするよぞら達を確認する。

よぞらの真後ろに、轢いたはずのモドキがいた。

 銃は蓮呀がしまっている最中。短剣を出した方が早い。

右腕を後ろにフリ、モドキの額に向かって放った。

よぞらを助けることが、最優先で額に向かって放つことが殺すことだと言うことまで頭は回らなかった。

しかし、放った短剣は命中することはなく、受け止められる。

 白い小さな左手で。

右手がモドキの短い黒髪を掴む。左手が握った短剣で、モドキの首をサクッと切断した。

ブシャー! と切断面から血が吹き出し、車内に撒き散らされる。

 血塗れだ。

主に頭からかかったよぞらが。

そんなよぞらを見ることなく、生首を持ち上げるハウンくんはぼんやりと見た後垂れ落ちる血を口に含む。


「……おえ」


 か細い声を漏らして、ハウンくんは生首を後ろに放り投げて捨てた。

お気に示さなかったらしい。

更に車が悲惨なことになってしまった。血塗れで俯いたよぞらが一番悲惨だけど。

藍さんは上着を脱ぐと、それでよぞらを拭いた。


「カオスだねー」


 悠長に笑う蓮呀の声に反応して、よぞらが顔を上げる。


「蓮呀さんっ!!」


 怒って声を上げたため、蓮呀は震え上がった。

「えー、俺じゃないっしょ。ハウンじゃん」と振り返って、血塗れのよぞらに反論する。

ハウンくんは無言であたしを指差して責任転嫁した。

そこであたしの携帯電話が鳴る。

コートのポケットから携帯電話を取り出すと、ディスプレイに幸樹さんの名前。

 あたしは誰にこの車の責任を転嫁すればいいの。




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