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一時の休息




 この世界には、表と裏がある。

この世には、表の現実と裏の現実がある。

表現実の世界。裏現実の世界。


「貴女にお会いできて嬉しいです!」


 依頼がきて出会った彼女は、表現実の住人。

笑顔が素敵な女の子。一見普通の女の子だけれど、表現実で非現実を味わい楽しんでいた。目の前で起こる非現実を至極楽しむ彼女は、少し壊れている。

ちょっとだけ、前のあたしに似てると思った。


「殺さずに…切り刻んでやる」


 あたしは裏現実の住人。

殺戮中毒の血塗れの"紅色の黒猫"。吸血鬼に悪魔が存在し死者さえも蘇る現実場馴れした世界で、愛ある温もりを守ろうと奮闘している。

だけどまだ愛には戸惑ってばかり。そして常に危険に陥りトラブルばかり。


「アンタとの違い、見付けたよ。真っ赤なべっぴんさん」


 そして彼女。彼女は秒妙な立ち位置にいる住人。

まるで野良猫。気ままに自由に好きなところに向かう。表でも裏にでも属していないような身軽さでふらつく。

強くも見えるのに、危険なことに首を突っ込み楽しそうに笑う彼女は、とても脆く見えた。

あたしにとても似ているようで────似てない。

あたし達の出逢いが始まりを告げた。

表裏の現実が、灰色の悪夢に染められる──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────パァンッ!

破裂音のように響き渡る銃声。


「床を見て全員伏せろ!!」


あたしは声を張り上げた。


「強盗だ!」


銀行で、告げる。

銃声に仲間以外が伏せた。

あたしの手に握るのは空気銃だけどね。とあたしは密かに笑う。

 数時間前。

とある怪盗が弟を連れてきたかと思えば、笑顔で誘ってきた。


「銀行強盗しようぜ!」


ポカーンとしたが、以前にすると約束したことを思い出した。

まさか実行するとは。


「まじでやんの?」

「まじでやろうぜ」

「蓮真君は?やるの?」

「心配かけたんだぜ?勿論、やるよな?」

「まぁ……やるけど…」


兄に肩に腕を回された弟は、頷いた。強制的だが、満更でもない様子。

大好きな兄のお誘い。嬉しいんだろうな。


「銀行強盗とぉ?つーちゃん、やるのぉ?」


ソファーに座るあたしの後ろから抱き付いてきたのは、白瑠(はくる)さん。


「約束していたので…やろうと思いますが……」


あたしは口を籠らせる。

殺戮中毒であるあたしは只今、殺しを絶つよう努力している最中だ。

一週間と二日目。

家に籠っているからまだ発作は起きていないが、外に出ればきっと殺ってしまう。


「俺がつけば大丈夫だよぉ。俺も参加してい?」


白瑠さんはあたしの肩を叩いてから、怪盗の那拓遊太(なたくゆうだい)に訊いた。


「おうっ!」


ニカッと笑みで頷く。

気さくな彼はもう頭を片手で粉砕する頭蓋破壊屋(スカルクラッチャー)が怖くないようだ。初めて会ったときは青ざめていたがこうして訪ねて来れるほど肝が座っているらしい。

流石は那拓蓮真(なたくれんま)の兄といったところか。冷静沈着であまり動じない子。

きっと経験を積めば大物になるだろうな、そう思う。


「藍くんも誘おうかぁ」

「レンの監禁の件もあるし、手伝ってもらうか」

「プランは立ててあるの?」

「いや、全然」

「…そうだと思った」


お気楽な遊太のことだから、快気祝いとか言って弟を連れ出してきたのだろうな。

あたしはその弟である蓮真君に目を向けた。


「蓮真君がプランを立てて」

「…ぼくが?」

「ええ。あたし達はそれに従うことにしましょう」

「そりゃいい、そうしよう」


無茶ぶりに蓮真君は顔をしかめる。

蓮真君、頭いいから案ぐらいだせるっしょ。

そうゆう軽い考えで裏現実の素人に委ねる。

那拓は、裏現実者一家。

現代では"危険人物"と呼ばれ恐れられている。そう呼ばせたのは遊太と蓮真の兄である狩人の那拓爽乃(なたくそうだい)

斬りかかるのが癖の危険な侍だ。

そんな兄と違い、自由気ままに泥棒をしている遊太。それと最近まで存在を隠されていた末っ子の蓮真君。

蓮真君は今は表現実で学生をやっていて、裏現実ではまだ活躍していない。

そんな彼に経験を積ませてやろう。

単なる遊びである銀行強盗で。

ということで、天才ハッカーのI・CHIPこと穀田藍乃介(こくたあいのすけ)さんの援護のもと、あたしと白瑠さんと那拓兄弟と銀行強盗を決行。


「超ノリノリじゃんか」

「もうノリノリでやんなきゃだめっしょ」


猫の仮面を被っていて互いの顔はわからないが、誰かはわかっている。

仮装をした強盗なんて、日本じゃあ珍しいだろうな。


「調子はどう?中毒の方」


蓮真君は床に伏せる客達を見張りながら問う。


「今は平気よ。でも気を付けて。いつ撃ち殺すかはわからないわ」


口元だけは見えているので、ニッと笑みを向ける。見せるのは殺傷力のない空気銃。

冗談だ。

蓮真君も口元を緩めた。


「それで?就職先は決めた?治るまで失業?」


客達に聞かれていても気にせず、蓮真君は話す。


「貴方こそ、決めたの?強盗に就職する?」


あたしはからかう。

殺しを断つのならば、殺し屋はやめることになった。只今、失業者。

大量殺戮を犯した殺戮者は現在失業者なり。


「兄貴は楽しそうだけど…どうかな。ぼくには向いていないと思うけど」


笑いながら蓮真君は真面目に答える。


〔なんなら椿お嬢と蓮くんの就職をサポートしようか。僕にはいろんなコネがあるし、蓮くんには迷惑かけちゃったしねぇ。サービスして仕事紹介するよ〕


耳につけたイヤホンから藍さんの声。ずっと聴いていたようだ。


「はは、それは有り難いけど…先ずはやりたいことを見付けなきゃな」


やりたいこと。

やりたいことを仕事にする。

表と同じ。裏現実で生きるには仕事が必要だ。

殺しをやらない裏現実の仕事。

殺し屋があたしの天職と思っていた。

さーて。どんな仕事しようかしら。

頬杖をついて考えれば、金庫の方から騒音が聴こえた。

金庫を破ったようだ。


「あの人、まじで素手で金庫空けたのかしら…」

「空けたんだろうな…流石だよ」


蓮真君が出したプランで、頭蓋破壊屋である白瑠さんは金庫を破壊する役。

片手で頭を粉砕する怪力の持ち主。笑う殺戮者。裏現実では"頭蓋破壊屋"という名と"白の殺戮者"という名で通っている。


「ところで、鬼はどうなんだ?黒との交際聞いて詰めよってきた?それとも諦めた?」


まさかここで彼の話が出ると思っていなかった。


「…いや、会ってないよ」

「ふぅん。やっと諦めたのか」


興味なさげに蓮真君は洩らす。

白の殺戮者と対になる存在の黒の殺戮者。

白と黒の殺戮者は裏現実で最も恐れられている殺し屋。

このどちらかに狙われても最期。二人に狙われても最期。いい死に方はしない。

白瑠さんと対立する存在であるにも関わらず、あたしは彼と交際していた。

交際してからあたしは、狩人の鬼と恐れられているポセイドンという名の狩人・秋川秀介(あきかわしゅうすけ)には会っていない。

連絡も取っていない。

"篠塚さんは預かります"

そうメールを送ったと笹野幸樹(ささのこうき)さんに言えば。

「まるで誘拐したみたいですね」と笑われた。

「誘拐みたいなもんだがな」と篠塚健太楼(しのずかけんたろう)さんは鼻で笑い退けたっけ。

秀介から返事はない。音信不通だ。

篠塚さんとコンビを組んでてもよく別で仕事をしていたようだから、今は長期で仕事をやっているのかもしれない。

その仕事が終わるまで待とう、そう言い訳して自分から電話をすることに躊躇している。


「なぁに暢気に話してんだよ。ほら、運べ」


同じく猫の仮面をつけた遊太と白瑠さんが札束を積めた袋を持って戻ってきた。火薬の臭いがしないところをみると、やはり白瑠さんは素手で金庫を破ったようだ。恐ろしい人。

投げ渡された袋を持つ。

さて外に出るか。


「以上、黒猫強盗団でーした!ばぁいっ」

「ばいばぁい」


遊太が適当に名乗る。

楽しげだな。一番楽しんでる。

あたし達は外で待機していた藍さんの紺色のバンに乗り込んでその場を去った。





「やっぱりリスクが低い分つまらないわね」

「海外ならカーチェイスとかやっちゃったり派手にできたけどな」

「低レベルで悪かったね」


 那拓家の蓮真くんの部屋。

本日盗んだ金を数えながら思ったことを呟けば、蓮真くんは不機嫌になった。

素人の蓮真くんに会わせての強盗なのだ。低レベルは否定できない。

あたし達はプロで経験も多いんだ。


「まぁこれから経験を積めばいいさ。椿の最初の仕事はなんだったん?」

「ヤクザの頭。」

「難易度高…」


遊太と白瑠さんは寝そべっている。気が合う仲のようだ。


「で、どう分けるの?」

「あたしは要らないわ。お好きなように」

「ぼくも要らない」

「おれも要らないんだよな。お二人さんは?」

「いらなぁい」

「要らないよ」


さらっと金を受けてることを拒否する強盗団。

…なんで強盗したんだろう。

そんな疑問を思った。


「二人の就職に使えばよくね?」

「こんな大金を何に使うのさ…兄ちゃん」

「武器を調達するとかさ、色々あるじゃん。仕事を貰うときも仲介者に払ったりするんだよ」

「仲介は僕が無料でやってあげるって」

「先ずは役職を決めるべきでしょ」


山積みにした大金を目の前に、就活の話をする。

お金があっても就職しなくちゃいけない。世の中のルールである。

あたしもいつまでも幸樹さん達に頼ってちゃだめよね…。

 さーな。なりたいときになりたいものになる

以前にあたしは蓮真君に聞いたことがあった。自由奔放な遊太の影響で、自分のしたいことをしたい。そう考えているのだろう。

腕を組んで考えている蓮真くんを見つめた。

 ねぇ、ヴァッサーゴ。蓮真くんの未来は見える?

あたしは自分の中の悪魔に問いかけた。


「小僧自身悩んでて、まだ見えねぇよ。前に話しただろーが、未来は決断次第で変わるんだ」


あたしの中に住み着くヴァッサーゴは答える。過去と未来を見る悪魔。

彼があたしの心臓を動かしている。あたしはこの悪魔に生かされている。

ふぅん…。


「まだなりたいものがないのね、蓮真くん」

「したいことも見付からないからな…」

「なら全部経験して、それから選べばぁ?」


お菓子を頬張る白瑠さんが漸く口を開いた。


「殺し屋は勧めたくありませんね…」

「爽乃がぶちギレるぜ」

「とりあえず、狩人でもやってみるかい?私が手取り足取り教えてあげるよ」


かかかっ!と笑う遊太があたしの後ろに目を向ける。気配に気づいていたので別に驚かない。

那拓神奈(なたくかんだい)。狩人だ。


「遠慮するわ。用心棒の経験ならあるし」

「あるのぉ?」


あたしに言ったらしいから断る。すると白瑠さんが目を丸めて見上げてきた。


「はい、ボディーガードとして雇われました。一ヶ月前に」

「……へーぇ」


強制的に雇われたんだけど。

白瑠さんは畳をじっと見つめたまま黙り込んだ。

あれ、どうしたんだ?


「じゃあ情報屋?ならチクリ屋のナヤに弟子入りがいいよな」

「あたしはパス。情報収集に向いてないわ」

「ぼくも情報屋にはなりたくない」

「なら仲介者はどーう?」

「器用にクライアントを紹介したりするのはあたしに向いていないのでパス」

「ぼくも興味がわかないな…」


遊太がいう情報屋も藍さんがいう仲介者も、あたしと蓮真君は断る。


「神奈はなんで狩人に?」


あたしは後ろを振り返る。遊太と蓮真君と似た綺麗な顔立ちの彼は微笑んだ。


「なんとなく」

「ああそう」


参考にならない。

白瑠さんは殺戮者だから殺し屋にして、藍さんはハッカーが出来てその特技を活かしてネット上で仲介者をしていて、遊太は怪盗になりたくてなった。

特技を活かす。…特技ないわ。

むぅ、とあたしと蓮真君は唸りながら悩む。

そこであたしの携帯電話が鳴り響いた。見てみれば着信は幸樹さんから。


「はい?」

〔今すぐ篠塚さんを連れて帰って来れますか?〕

「えぇ…できますが」


あたしは一瞬だけ遊太を見た。自然な動作で藍さんと白瑠さんにも目を向ける。


〔秀介くんが来ました〕


それを聴いて、あたしはドキッとした。悪魔に動かされている心臓が跳ねた。


「…わかりました。なるべく早く帰ります」


あたしは電話を切る。


「ところで、遊太。犬は見付けたの?」

「ん?いーや、行き詰まってナヤがまた呻いてるぜ」

「そうなの。進展あったら電話ちょうだいね」

「オッケー。帰んの?」

「ええ。幸樹さんが心配してるから」


遊太に進行状況を聞き出してから立ち上がる。白瑠さんと藍さんも立ち上がって荷物を片付けた。


「じゃあやりたいこと、考えとけよ」


遊太は宿題を出して手を振る。

見送られてからあたしは藍さんに篠塚さんを迎えに行くよう頼んだ。

篠塚さんは藍さんのアジトに匿っている。

遊太、それとあたしが属している黒の殺戮者が率いる黒の集団。名前を馳せた裏現実者の集まり。

その黒の集団の目的は────五年前に名前を馳せていた史上最強の狩人と謳われる番犬を表舞台に引きずり出して倒すこと。

篠塚さんがその番犬であることは、あたし達しか知らない。

なんとか篠塚さんを守るつもりだ。


「クククッ、その前にあの鬼小僧をどうするか考えたらどうだ?」


バンの中。一人で思考していたつもりが、盗み聞きしていた悪魔が黒い煙と共に現れた。

人間の姿になると実体化するため、肩にのし掛かられると重い。

秀介のことを考えると気が重い。

何を話せばいいんだろうか…。

黒の殺戮者・コクウとは別れました?

いや、いう必要ないよね。まるで期待を持たせているみたいじゃないか。諦めたなら無駄な期待をさせちゃだめでしょ。


「はぁー、成長のしねぇ奴だなぁ。白野郎とロリコン野郎にコクられて、黒野郎と付き合って別れて………で?次はどうするんだ?愛と向き合うんじゃないのかぁ?逃げんのかぁ?」


告白した本人達の前で言うな。

バンの中に気まずい空気が流れる。

藍さんは運転中。白瑠さんは向かいにいる。


「そぉゆぅ悪魔くんも、つーちゃんが好きなんでしょ」


にぱっと笑う白瑠さんが図星をつく。

ヴァッサーゴは忽ち、煙になって消えた。自分のことを言われると逃げるんだな…。


「うっひゃっひゃっひゃ」

「え。悪魔も椿お嬢が好きなの!?」

「…ええ、まぁ…。だからあたしから離れないらしいです」


藍さんが驚く。

初めてヴァッサーゴを目の当たりにした時より驚いてる。


「お嬢、モッテモテだねー。流石は僕らのお嬢だ」


ははは。乾いた笑いしかでない。

このモテ期は鬱陶しい。

殺しを初めてから、何故か愛を告げられている。至極可笑しい。何故だろう。誰か教えてくれ。


「犬っころに相談したらどうだ?」


ヴァッサーゴが言う。

篠塚さんに?




「で?どう思います?」

「…何故俺に問う」


昼間からビールを飲んでいた篠塚さんをバンに押し込んでから訊いてみた。


「このモテ期は一体全体どうゆうことなんでしょうか?」

「知るか」

「可笑しい、そう思いません?」

「知るか」

「何故なんでしょうか?」

「し、る、かっ」


まともに対応すらしてくれない。

相談相手を間違えたようだ。

誰か相談を受けてまともな回答をしてくれないだろうか。


「はぁ…。ところで、篠塚さん。篠塚さんは何故狩人になったんですか?」


あたしが問うと篠塚さんは目を丸めた。


「……俺は……」


足元を目を細めて見つめ、篠塚さんは静止する。まるで遠い記憶を思い出しているように見えた。


「殺し屋どもを狩りたかった。ただそれだけだ」


そう答えて篠塚さんは顔を上げビールを飲み干す。

…ふぅん。

狩人は一応、殺し屋の敵。

殺し屋はその名の通り、殺しをする。狩人はその殺し屋を退治し、殺し屋のターゲットを守る。所謂、ボディーガードや用心棒的な役職。

しかし番犬は、用心棒などはほとんどやらず殺し屋を一掃していたと聞いている。

殺し屋を一掃したい理由があったのか?

家についてしまったため、それは訊けなかった。

 嗚呼。秀介と話さなきゃ。

とてつもなく逃亡したくなってきたが、鉛のように重く感じる足を動かして玄関に入る。先に入っていく藍さんと白瑠さんの背中を見て小さく溜め息をついて、ブーツをいそいそと脱ぐ。

どんな顔をして会えばいいんだろう。

とりあえず平然とした顔がいいかな。

だって申し訳ない顔なんて、だめよね。

うん。だめ。

ふぅ。…気が重い。

時間稼ぎでのんびり脱ごうとしたが、痺れを切らした篠塚さんに押されて仕方なくブーツを早めに脱ぎ捨てる。

ちゃんと話せるといいけど。

ちょっと怖いな。


「何が怖いんだ?」


ヴァッサーゴが問う。

それは────────…。

最初にあたしに愛を告げてくれた彼の、態度の豹変が怖い。

…なんて。

矛盾しているな。

愛されるのを鬱陶しく感じているくせに、相手の心変わりに怯えている。

愛されたがっているくせに、逃げ腰で拒否する。

なんて我が儘な女だろう。

 そう思わないか?V。

あたしは問い掛けだが、ヴァッサーゴから返事はなかった。

リビングに足を踏み入れる。

藍さんと白瑠さんの間から見えた。リビングのテーブルに、秀介は席について座っている。

秀介が白瑠さんからあたしへと目を向けた。

第一声はなんて言おう?

ハーイ、秀介。久しぶり。なんでメール返さなかったの。大事な話があるの。

ああ、どれにしよう。

冷静に、冷静に。

そう言い聞かせて、あたしは歩み寄った。

それで漸く藍さんで見えなかった秀介の向かい側に座る人物に気付く。

藍さんと白瑠さんは彼を見てそこに立ち尽くしていたんだ。


「やぁ──────椿」


真っ黒な元カレで黒の殺戮者の───コクウは微笑みをあたしに向けた。

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