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一章 雛鳥、外界へ舞い降りて その1

 連載している「終末のシミュラークル・パペット」の一章の一部を続けてアップしたいと思います。

 一章は何分割してこれからもアップしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 一章 雛鳥、外界に舞い降りて


 

 生涯初めて見上げた擬似的な空はどこまでも澄み切っていた。人工天体システムが投影する陽光が辺り一面に拡散して、明るさに慣れないタカミヤマヒルはつぶらな瞳を細める。

 辺りの空間に交差する動く歩道の一つへマヒルは慎重に足をのせる。冷気を孕んだ突風が、肩で切りそろえた黒髪を弄んだ。初冬の空気感を人工天体システムは忠実に再現していた。

 マヒルが自慢の髪を手で押さえつけるように頬に触れると、手袋越しからも痺れるような鋭い感覚が伝わる。全身をグレーの保温スーツで固めてはいるが、首から上はどうしても外気に肌が露出してしまうからだ。マヒルは寒さに立ち向かうように身体を反らした。

 胸部のふくらみはいくらか乏しいが、体のラインを強調する保温スーツ姿は艶めかしくはある。

 マヒルは短い人生の大部分を過ごしてきたコントロールタワーから、独立行政機関である研究所――統合参謀ラボへ通じているらしい電動式の「動く歩道」を渡っていた。

 ただ今はマヒルに対する警備上の都合から動力自体は停止している。おおよそコントロールタワー内部に眠るマザーボードを直接操作したのだろう。

 女一人に大げさなことだ。

 マヒルは声にならない鬱情を呟くと、前後を二名ずつで挟むように監視する屈強な護衛官チーム内の現場責任者が聞きつけた。卑屈さが滲み出た面構え。

 これでも主任護衛官の立場にあるのをマヒルは頭の片隅で思い起こした。

「今、許可なしに何かしゃべったか? ゼロ等試験体?」

「人工天体システムの監視さえあれば、あんたたちは用済みなんじゃないと独り言を溢しただけだから気にしないで」

「どれだけ技術が進歩しようと人間は形式に拘るのさ。こうして両手の自由がきかないお前を眺めるのも気分がいい」

 主任護衛官がマヒルの両手首に課せられた電子式の拘束具を鳴らしてみせた。いい知れない嫌悪感がマヒルを襲う。こういう男を旧時代には何と呼んだか。マヒルはこれまで読み漁った書物から記憶を探る。ペド……いやサド野郎、だったか。

「おら、呆けてないで歩け、ゼロ等試験体!」

 高電圧のスタンガンが仕込まれた警備棒で背中をど突かれ、マヒルは己の肉体を精一杯支えるように足を踏み出す。自分が設計した備品で指図される始末。

 やや鬱気味で「動く歩道」をマヒルは予定通りゆっくりと渡る。筋力をつけようと、最近トレーニングを密かに開始したが長年の温室暮らしが祟ってかやたらと息が上がった。

 己の情けなさを押し殺しながらマヒルはわざと注意を真下へ向けた。護衛官たちの注意もマヒルから逸れる。 

 高層のコントロールタワーから伸びている「動く歩道」からは、マヒルたちが暮らす人口の生活圏――防空シティーの外周まで見通せた。未知なる外界とシティーを隔てるドーム状の分厚い金属防壁。

 そうして視線を足元まで戻せば、防空シティー内の統治機構が密集するセントラル区域が直近に広がっていた。

 景色に見とれている振りをして予め舌にくるむように隠してあった、半導体のマイクロチップをマヒルは素早く手に握りしめる。

「早く前へ進め! 何度言ったら分かるんだ!」

 主任護衛官から再度、警備棒で背中を催促される。鈍い痛み。わざと電圧を入力したのは明白だった。覚悟していたとはいえ、これ以上の負荷が加わるとマヒルはたやすく意識を失うだろう。マヒルは自分がここの市民ではなく囚人なのだと改めて実感した。

 例えばこの両手の自由を奪う鉄製の拘束具。旧時代にも手錠と呼ばれ長らく存在してきたのをマヒルは知っている。変態主任護衛官のご託通り、どれだけテクノロジーが発展しようともこうした代物だけは形を変えない現象にマヒルは皮肉めいた感情を覚えた。

 動きを何重にも制圧された状況下にあって、心が折れそうになるのをマヒルは懸命に堪えようと自らを鼓舞する。これから自分は行動しなければならないのだ。ちょっとした判断の遅れや、気の迷いも許されない。

――カシャン、カシャン、カシャン……

 両手の拘束具に付いている鎖を鳴らしながら、マヒルは動く歩道の中腹まで差し掛かる。

 コントロールタワーを頂点とするなだらかな傾斜を下った先には、マヒルが移送される統合参謀ラボの円筒形をした白い建物が眼前に浮かんでくる。母の情報通りだ。

 渡り切ればもうチャンスはない。

 まずマヒルは拘束具の側面にある電子制御リーダーの基盤を確認した。さらに前方の護衛官が腰にぶら提げている電子キーの束をじっと観察。自慢の動体視力でシリンダーの形状を一つ一つ見極めるとマヒルは不敵に笑った。これまた母の恩恵だ。

 マヒルは三文芝居のごとく必要以上に甲高い呻き声を出しながら、腹部を手で押さえてその場に座り込んだ。主任護衛官が慌てて近づく。監視対象が異常を起こして、責任が回ってくるのを恐れからだろう。

「おい、しっかりしろ。どうした?」

「……目眩が酷くて立ち上がれません」

「これだから箱入り娘は困るんだよ。それにしても腹が痛くなる目眩なんて、聞いたこと……」

 予想通り、悪態をつきながら前方の護衛官が自分を背負う動作をみせる。無防備な背中。マヒルはその間隙を縫い、手に握り込んだ半導体のマイクロチップを拘束具の電子制御リーダーにかざす。拘束具はあっさりと外れる。この間、実にコンマ数秒。

 マヒルは解放された両腕を名一杯伸ばして、ようやく振り向いた主任護衛官の腰にぶらさがっているスタンガン式の警棒をくすねた。

「このガキっ! どうやって!」

 他三名の護衛官は責任者を援護するような陣形で警備棒を抜いてマヒルと退治する。マヒルはその圧力に臆しながらも声を張った。

「それ以上こっちへこないで!」

 自分で設計した警備棒を頼りに及び腰になりつつ、マヒルは護衛官たちから距離を取る。感電する可能性から向こうも迂闊に近づけまいと踏んでいたマヒルの思惑は崩れ去った。主任護衛官が嘲笑うように口元を歪めたのだ。

「何が可笑しいのよ! 感電させるわよ、このサディスト!」

 主任護衛官は落ち着いた動作で懐から小銃を取り出した。

「何も警備棒だけが護衛道具じゃないさ。癇癪を起こした対象にはこうして麻酔銃を使用するように指示を受けている。自分の足じゃなく引きずられてみるか?」

 銃口を向けられマヒルは硬直した。殺意に近いプレッシャー。いや、落ち着け。母は敵が麻酔銃を携帯している可能性も見逃してはいなかった。ただ少し痛い思いをする道へと作戦を切り替えるだけだ。

 マヒルは保温スーツの襟から伸びたヒモを引いた。緊急時用の自動膨張をマヒルが予め手動に切り替えておいた結果だった。

 旧時代の車両に普及していたエアバッグのようにスーツを通して身体に空気の膜が覆う。これも母から伝授された苦肉の策。

 ただあくまで交通事故専用。これから先どうなるのかマヒルには検討もつかない。

 それでもやるしかなかった。

「そんな小細工何の役に立つ。大人しくその場を動くな」

 主任護衛官を筆頭に全員の手がマヒルに伸びる。マヒルは躊躇無く「動く歩道」の安全シールドによじ登った。護衛官たちが焦り出す。

「こいつ、まさか!?」

 目指すは数十メートル真下の屋上。ココ周辺に密集する建造物の図面は、飽きるほど頭にたたき込んである。

 マヒルは全身の力を抜いて偽造された空中へダイブした。不思議と恐れはない。母が側にいてくれている気がするから――

 外界と遮断されているこの防空シティーであってもちゃんと風の音が耳に鳴る。頭上からは護衛官たちの野太い声。全てがスローモーションで流れる中、マヒルは衝撃を最小限に抑えるために膝を両腕で抱え首を埋めた。体育座りの要領だ。

 コンクリートが迫る。死のイメージ。頭に入り込んでくる悪夢を振り払う。

 マヒルは歯を食いしばりながら、ダメージの少ない体の真横から重力を受け止めた。鋭いインパクトに呼吸が止まる。

 背骨が真っ二つに折れた感覚に取り憑かれながら、マヒルは損傷具合を確かめるように体を起こした。視界がやたらと揺れる。

 地面に接した方の腕以外は幸いな事に目立った異常はない。空気がすっかり抜けた保温スーツに感謝しながらマヒルは騒がしい頭上を仰ぐ。護衛官たちが仕切りに怒声を散らしてこちらを指さしていた。

『全警備員に告ぐ。ゼロ等試験体がルートの真下に飛び降りて脱走を図った。繰り返す一等試験体がルートを外れて脱走を――』

 ついにコントロールタワーからサイレンが鳴り響いた。これでセントラル区域は数十分後に封鎖されてしまうだろう。ここで捕縛されたら長年の下準備が無に帰してしまう。

 マヒルは身を奮い立たせ、今いる建物の屋上から地上への脱出ルートを探し回る。

 脳内にインプットしてある図面と照らし合わせて、屋外スペースの周囲を歩けば案の定発見した。避難用の非常階段が螺旋状に建物の側面へ沿って地上へ伸びている。

 さながら天使の梯子を連想させる階段をマヒルは息つく暇もなく駆け下りる。ずっと監禁部屋にいたためか地面が無性に恋しかった。

  呼吸も荒くセントラル区域のど真ん中へ降り立つと、天上での騒動が嘘のように大勢が石畳の街道を行き交っていた。平穏そのもの。人工天体システムが調整する気候の影響を間近で受けていないのかほとんどの人が普段着だ。

 保温スーツで体のラインを無駄に強調している自分が急に恥ずかしくなってマヒルは頬を赤らめる。こちらを訝しがる視線も四方から感じる。

 マヒルは好奇の目を避けるように旧時代の遺産として命名されたらしいセントラル区域の大動脈――「トウメイ・ストリート」を南へ下る。この先に防空シティー内を縦断するリニアの発着拠点「エビナ・ステーション」があるはずだ。この奇妙な名も旧時代の名残である事実をマヒルは書物で知っていた。

 マヒルは余計な思考を振り払い小走りにギアを切り替える。目指すは広大な防空シティーの東端。母が指し示してくれた希望の場所。

 何が待ち受けているかは知らないが、目指すにはまずリニアに乗り込む必要がある。

 統治機関が密集するセントラル区域の堅牢な建物沿いの大通り。溢れる人垣を掻き分けながらマヒルはピッチを上げた。息が荒い。小走りがこんなに負担になるとは牢獄暮らしのマヒルには想定外だった。

 敵の追尾を恐れ時折、後方を振り返るのに神経を使うため疲労はさらに蓄積する。

 雑踏の流れに従いながら大通りを下りきると広場に出た。その終着点に全面レンガで築かれたホール状の建築物が姿を現す。母が紙に書いた図とそっくりな形状。

 とりあえず探していたエビナ・ステーションに違いない。マヒルはようやく安堵できた。ここから発進する磁気浮上式リニアは統治機関が集うセントラル区域と、一般市民が生活する外周を結ぶ防空シティー最大の交通機関だ。

 乗り込むだけで目的地である防空シティーの東端まで確実に運んでくれる。

 マヒルが思わず歩幅を緩めたその瞬間――

『今すぐ止まれ! そうすれば危害は加えない』

 後方から拡声器を通した野太い声が耳をつんざくように響く。あの加虐性欲野郎だ。振り返れば部下の護衛官たちがご丁寧に数十名集結していた。手にはゴツイ銃器。設計には携わっていないがおそらくマヒルを無力化するために用意されたものだろう。

 それでもマヒルは止まれなかった。諦めてしまえば母の願いを無駄にしてしまうからだ。

 巻き添えを食らいたくい市民たちが四方に散っていく中、マヒルは後ろからの制止を無視して再び走り出す。「エビナ・ステーション」が目前に迫る。

 だがあと一息でマヒルは足を止めるしかなかった。前方にも見慣れない戦闘服を着た男たちが配備されていたからだ。完全に挟み撃ちにあったマヒルは唇を噛む。拡声器の声が追随する。

『前にいるのは治安部隊だ。逃げられはしない。大人しく投降しろ、ゼロ等試験体。いやモルモットと呼んだ方がいいかな?』

 前後から男たちがにじり寄る。マヒルは一か八かの賭けに出た。後戻りはできない以上、前進しか道は残されていない。体制を低くして包囲網を突破しにかかる。だが一人の治安部隊にマヒルの細い腰を両腕で抱えられた。捕まえられて動けないマヒルは決死で暴れるも、成人男性の力には遠く及ばない。

 それでもマヒルは怯まなかった。動く首を伸ばして男の手首に歯を思い切り突き立てた。

「ぐぁっ! こいつ正気じゃない。噛み付きやがった!」

 喘ぐ治安部隊の男は思わず手を引く。

「モルモットにも前歯ぐらいあるわよ!」

 嫌みを一つ叫び、解放されたマヒルは息つく間もなく「エビナ・ステーション」へ急ぐ。

 先ほどの地点でマヒルを捕える予定だったためか、ステーション内には新たな人員は配置されていなかった。その隙を突くように、マヒルは天蓋がステンドガラスで覆われたホームを進んで行く。

 待合う一般市民を押しのけながら、ステーション内の地理に詳しそうな人物を探す。すると旧時代では駅員と呼ばれていたやたら目立つ制服を着込んだ中年男性がいた。さすがにこの人まで自分を捜索してはいないだろう。

「すいません。防空シティーの東端に行きたいのですが、どのリニアに乗ればいいでしょうか? 母親とはぐれてしまったんです」

 半分本当のような嘘の作り話をでっち上げる。中年駅員はしわの目立つ顔をさらに歪めてマヒルの場違いな保温スーツにやはり訝しげな態度を覗かせた。

 好きでこんなイヤラシイ格好しているんじゃないわよ! と胸の内で感情を爆発させながらも、マヒルは漆黒の瞳を潤ませながら駅員の男の顔を見上げる。

 偽りの涙は女の武器だと旧時代の物語で散見した結果、思いついた処世術だ。

「東居住区行きなら三番線からもう間もなく出るよ。途中下車さえしなければ東端まで運んで行ってくれるだろう、お嬢ちゃん」

「分かりました。あと……私、実は手持ちのお金がないんです。それでも乗車できますか?」

 恥ずかしげなマヒルに驚きの表情を浮かべる中年駅員。

「お金がないって、現物通貨だけじゃなくて、電子マネーもかい?」

 今までコントロールタワーに閉じ込められてきたマヒルは当然、防空シティーで流通している通貨についての知識はいっさいなかった。ただ旧時代の書物から何をするにもお金が必要だという世知辛い事実だけは理解していたのだ。マヒルは曖昧に返事する。

「そうなんです……」

「これは困ったな。まあ、座席車両じゃなく貨物車両ならただで乗せてあげることも――」

「本当ですか? ぜひお願いします!」

 嬉しそうに顔を綻ばせるマヒルに、悪い気はしないのか中年駅員は得意げになる。

「しょうがないお嬢ちゃんだな……じゃあ、現場の人間に話をつけておくよ。後列に連結された車両ならどれでもいいから乗り込んでくれ。座席がないから窮屈だけどね。それにしても君みたいな子供が東端なんて辺鄙な場所に行きたがるなんて、何か事情があるのかい?」

「……はい。はぐれた母が待っているんです。どうもありがとう」

 もう十六歳になる若き乙女なのにお嬢ちゃんと呼ばれてしまい、言い知れない屈辱感を味わったマヒルだったが、愛想よく手を振って中年駅員と別れた。自己利益のためだけに築かれた防空シティーにも親切な人間はいるんだと分かると少しばかり気持ちが安らぐ。

『あの中年男性、マヒルを舐め回すように見ていた。ロリコン疑惑アリ』

 マヒルがほっと一息ついた所で保温スーツの懐から小さな機械体が頭部を覗かせた。

「ちょっと、勝手に出てきたら駄目だって忠告したでしょ、イブ?」

 イブと呼ばれた機械体は人間を模した愛らしい小さな体躯でマヒルの襟元に捕まっている。さながら旧時代に存在した着せ替え人形のような外見。顔の作りは非常に精巧で形の良い双眸には意志の光が宿っている。

 旧時代から子供の遊び道具として対話用ミニドールが開発されてきた。役割を終えて廃棄されそうになっていたイブをマヒルの母が話し相手として幽閉部屋に持ってきたのだ。

 以来、マヒルはこの機械体をメンテナンスしながら孤独な日々を共に過ごしてきた。あくまで子供向けのおもちゃなので感情は乏しい。だけど相棒のような存在だ。

『もう、当面の危険は去ったから問題はないはず』

 イブは悪びれることなくマヒルを見上げた。対話用ミニドールは長年愛用していると人格が持ち主に似てくるという言説があるが、マヒルは真っ向から否定したい気分だった。

「まだコントロールタワーの人間が迫ってくる可能性だってあるんだから、ちゃんと大人しくしていて欲しいの。それに私はロリコンの標的対象になるような年齢じゃないんだから! うら若き十六歳よ」

『マヒルは思い切り童顔の部類に入る。体つきもセクシー系じゃない』

「どこでそんな言葉を覚えたのよ……」

 文句を溢しながらもマヒルは自覚があった。幽閉されていた長い期間、旧時代の物語や文献などを読み漁っていたため、この対話用ドールと会話する内に自動学習機能が働いて覚えたのだろう。

 マヒルは嘆息しながら、イブの小さな頭を再び保温スーツの懐に押し込んだ。

「とにかく今は静かにしていて、イブ」

「ちょっと、レディーに何するのよ!?」

 胸の中で暴れるイブを押さえ込んでマヒルは教えられた通り三番線のプラットホームに向かうと、美しい流線型のリニアがすでにスタンバイしていた。

 後列の貨物車両にマヒルが無断で飛び乗る。先ほどの中年駅員がちゃんと話を通してくれたのか車掌と思しき人は咎めもしない。

 貨物車両には中身が判然としないコンテナが物資として窮屈に積み込まれていた。マヒルはその隙間に申し訳ない感じで身を潜める。

 しばらくするとリニアが駆動音もなく静かに滑り出した。

 揺れは極端に制御されているが、駅員の指摘通り座席がまったくないため乗り心地は良くない。それでもマヒルは外の様子を見ようと、はしゃぐように顔をあえて車窓に体を張り付かせる。

『ほら、まるで子供みたい』

「……うるさいわね」

 いつの間にかまた懐から顔を出したイブがからかってくる。マヒルはそれ以上、相手にせず眼前を流れゆく風景を凝視する。

 ところが期待していたような光景はお目にかかれない。人工物がひしめくセントラル区域を高速で抜けても、管理され手入れの行き届きた庭園がどこまでも連なっていくだけだ。

 旧時代の書物で読んだ列車から眺める田園風景とは程遠くどこか寂しげだった。

『マヒル、何か近づいてくる。すごい振動』

 イブが警告を発する。人間と有意義なコミュニケーションを図るために設計されたイブの本体には発音を聞き間違えないよう、僅かな振動にも反応するセンサーが組み込まれている。

 車窓から身を乗り出すように外を窺えば、リニアと並行して猛追してくる飛行体の影を発見した。

ここ数年、エンジニアとして防空シティーに配備されている兵器の一部設計を担わされてきたマヒルには見覚えがある形状だった。

 確か追尾専用戦術輸送機のβタイプに似ている。恐らく自分が設計案を出したタイプの新型に違いない。自分が作った物が障害になるとは皮肉な状況だった。

 こうなればいくら運転速度に定評がなるリニアとはいえ、振り切るのは難しい。向こうは追跡に特化した構造になっており、変幻自在の加速度を備えている。

 だがマヒルには納得できない不可解なことがあった。セントラル区域のステーションから何本も出ているリニアからどうやって自分を探り当てたのか? マヒルが真剣になって状況把握に頭を働かせているとイブが繊細な指を空中に上げて叫ぶ。

『何か飛んでいる。嫌な音』

 マヒルはイブが導く方向を見やる。昆虫型監視カメラだ。してやられた。最初に嗅がせた体臭を放つ人物を追跡して位置情報をリアルタイムで送信する極小偵察機だった。

 恐らくステーション前で包囲網を強引に抜けた際、誰かが放ったのだろう。

 マヒルは自分の迂闊さを呪いつつ、空中に留まっている昆虫型監視カメラを素手で掴み上げ靴底で破壊する。こいつの弱点は鈍い動きと構造の脆さにある。だがもうマヒルの現在地は筒抜けに違いなかった。

『野蛮な行為。女の子のやることじゃない』

「仕方ないでしょう? 手段を選んでいる暇はないわ!」 

 マヒルはリニアから途中下車しようか迷ったが、最終目的地まで直行することを胸に決める。どうせ降りて敵陣に囲まれるならば、行けるところまで突き進んだ方がいい。

 リニアが路線上の駅に停車して乗客を降ろすことが何度もあったが、追尾型戦術輸送機は不気味にも一定の距離を保ちながら跡をつけてくる。

 どうやら一般市民に危害を加える気は毛頭なく、マヒルだけを確実に捕えようとしているらしい。

 膠着状態が続く内にリニアは最終目的地へ着いたようだ。終着を告げるアナウンスが荷台車両にも漏れ伝わる。

 マヒルが勇気を出して最終地点である東端に下車すると、母から与えられた情報はここでもまさに正確だった。

 最終駅が建っている人工芝の小高い丘から見下ろせば、広大な湖面が静寂さを湛えながら広がっている。対岸は霞んで見通せない。だがさらに先には防空シティーの終着点―外界からの空気を遮断する金属の壁が高くそびえ立つのが分かる。

 壁面は内側に歪曲するように遙か天まで届くかのように連なっていた。詰まるところ防空シティーは一つの巨大なドーム型シェルターなのだ。

 それでも上空は明るく晴れ渡っている。シティー内の領域全体の環境をコントロールタワーが所蔵する人工天体システムが一手に制御しているからだった。太陽に見える光源も人工天体システムがドーム状の擬似的な空へ投影しているに過ぎない。

 そうやってこの堅く閉ざされた空間でかつて特権階級だった人間たちが何とか生活している。

 マヒルは背中を押されるように母との約束の地―防空シティーの東端にある湖へと足を伸ばす。

 ここに何があるのかまでは教えてくれなかった。ただ母は震える指先でマヒルとの筆談の最後にこう記し残したのだ。

――そこに行けばあなたの大好きな外界へ出られるから、必ず生き延びるのよ

 母の言霊を胸に抱えながらマヒルが湖へ近づく。途端にイブが警告を鳴らした。

『マヒル、何か飛んでくる』

 直後、肉眼では判別できないほど鋭い軌跡が肩越しから人工芝を深く抉った。マヒルは反射的に上空を仰ぐ。追尾型戦術輸送機の影。

 辺りに立ち込める煙を吸い込んだマヒルは悟る。催涙弾だ。とめどなくなく流れる涙と鼻水、そして激しい嘔吐に襲われその場から動けない。

 さらに降りしきる催涙弾の雨。ついにマヒルは人工芝へ突っ伏した。

 地面に落ちないようにイブをかばいながら、どうにか気力を振り絞り首だけで後ろを視認する。

 着陸を果たした追尾型戦術輸送機から護衛官たちが、訓練された無駄のない動作でマヒルへと迫ってくる。視界がぼやけ始めるマヒルの耳元で、主任護衛官の地位にある加虐性欲野郎の汚らわしい声が妙にクリアに響く。

「……まったく手を焼かせやがって。こちらチームデルタ。ゼロ等実験体を捕獲」

 マヒルは主任護衛官になされるがまま、腕を引かれ肩に担がれそうになる。連れ戻されるよりも母の願いを最後まで叶えてあげられないのが悔しく、マヒルはさらにお嗚咽を漏らす。

 催涙弾からくる涙だとは思いたくなかった。マヒルは最後の抵抗のように力を込めて叫ぶ。

「誰かお願いだから助けて!」

 懐のイブを掌で護るようにマヒルが祈ったその瞬間――

 心からの声に反応するように湖から何かが飛び出す。そうしてマヒルを回収しようとする主任護衛官に激突してその身柄を吹っ飛ばした。

 途端に自由になるマヒル。かなりの衝撃に投げ出されたマヒルは意識を何とか保つ。そして状況を確かめれば、球状の機械体がマヒルを守るように立ちはだかっていた。

 数人搭乗できるほどの大きさ。滑らかで光沢のあるボディー。一体、この機械体は?

 マヒルが混乱すると同じく現場責任者が戦闘不能になるという急激な戦況の悪化に、部下の護衛官たちは慌てて追尾型戦術輸送機の陰に隠れるしかない。

「……一体、どうなっているの?」

 茫然と独り言にようにマヒルが呟くと、驚くことに球状の機械体から返答があった。ざらついた合成音が耳元に響く。

『手荒でしたが妨害者を排除させていただきました、タカミヤマヒルさん。あなたの声紋を感知すると私が起動するように予めプログラミングされていましたから』

「あなた私を知っているの?」

『はい。私はあなたの母親にあたるタカミヤヒイロ主任研究員によって設計された緊急脱出用飛行装置――通称、小型シュートボックスです。形状は特殊ですが、機能は他の飛行体と何ら変わりません』

『あなたしゃべれるの? でもイブとは違う……まるで感情があるみたい』

 思わず溢したマヒルの独り言にも小型シュートボックスは応答する。

『こうして会話が成立するのはあらゆる既知言語を処理、推論、適用を担うエキスパートシステムを基盤とした人工知能をヒイロ主任研究員が私に組み込んだからです』

 人工知能。略してAIと呼ばれたテクノロジーは旧時代から研究が盛んになされたという記述をマヒルは何かの文献で目にしたことがある。

 イブの存在も感情を有する人工知能を開発する過程の一つで派生したものだ。だが現在、この防空シティーでは廃れてしまっている。機械に人工知能を持たせて感情を植え付けても逆に能率が落ちるだけで意味がないからだ。

 けれど母があえてこれを用意していたということは――

「もしかして本当にお母さんは私を外界へ?」

 小型シュートボックスは赤く光る二つの感知センサーをマヒルに定める。何だが本物の瞳に思えてマヒルは親しみを覚えた。

『ご推察通りです、マヒルさん。私はあなたを外界までお送り届けるために設計されました。敵が持ち直す前に早く中へ。ゲートを開けます』

 その一言でようやくマヒルは護衛官たちが、怯えながらもこちらに対し発砲の構えをみせているのに気がつく。マヒルは指示に従い急いで小型シュートボックスが解放した搭乗口を潜る。

 再び自動でゲートが閉じると完全にマヒルは外と分断された。同時に照明も灯り、薄暗かった内部の構造がはっきりと浮び上る。コクピットと瓜二つで、狭いが装備はしっかりしている。   

 マヒルが持つ工学系統の知識から判別できるのは、中央に固定された操縦席、そこから手動で操れるようパネルとして埋め込まれている各種センサー、無線、位置情報を示すビーコンぐらいか。

 そして壁面にはモニターがあり、視覚センサーから外部の映像が直にはっきりと見ることができる。今まさに護衛官たちがついに実弾を使いこの機体に向かって一斉に乱れ撃ちした。

「早く移動しないと、危険よ!」

 マヒルが思わず悲鳴に近い声を発しても、小型シュートボックスのAIは冷静だった。

『あの程度の貫通力ならば心配いりません。私の装甲は万全です』

 確かに次々とこちらへ着弾しても微かな振動が起きるだけで、内部にはまったく影響がない。

『それよりも早く操縦席に乗って身体を固定してください。すぐに発進します』

 マヒルは慌てて操縦席に腰かけると、拘束パッチをしっかりと留め具に取りつける。

「でも、私はっきりいってこういう飛行体の操縦経験ないんだけど……」

『マヒルは設計するのは得意でも、操縦オンチ』

 いつの間にかまた保温スーツの懐から這い出てきたイブがチクリと痛いところを突く。

「いつも一言多いのよ、あなたは! まったく……私が手動でどうにか動かさなきゃいけないんだから、少し黙っていて」

『安心してください。ヒイロ主任研究員によってすでにオートパイロットモードに設定されています。外界への着陸座標も全て決定積みです。それでは浮上開始まで残り数秒―』

「さすが母さんね。私が操縦できないのを見越していたんだ……」

 すると重力から解放され、ゆっくりと機体が持ち上がる。そして前傾体制で発射。モニター越しに護衛官たちが退避しているのが映る。

 ほっと一息つく間もなく今度は全身に急激なGがかかり、マヒルは息を吐き出すのも困難になった。

 モニターでは防空シティーの上空を突き進んでいるようだが、自分たちが一体どこに向かっているのか分からない。マヒルは苦しい体勢のままどうにか声を絞り出しAIに尋ねる。

「……どこに行こうとしているの? 防空シティーは外界と遮断するために築かれた言わば要塞のような空間よ。どこへ飛んだって出入り口なんか……」

『確かに防空シティーは外界から進入する感染型光化学粒子阻む目的で、当時の人間たちが英知を注ぎ込んで建造された閉鎖都市です。ですが外界とのルートを完全に断ってしまうと今度は都市機能がマヒするのです』

「どういうこと?」

『例えば都市から出た不要なゴミ、つまりは廃棄物をどう処理するかなどの問題です。都市内の領域に埋め立てるのには限界があると判断され――』

「もしかして外界へ捨てているの?」

 小型シュートボックスの説明を遮ってマヒルが声を荒げた。今までは狭い世界に押し込められて防空シティーの現状さえ知らなかった。いや知ろうとしなかったのだ。

 外界という未知の世界にただ憧れて、両者の関係など考えもしなかった。もし小型シュートボックスのAIが説明通り防空シティーの人間たちが廃棄物だけを外界へ放り出しているのだとしたら――

「……身勝手ね、私たち優性因子ゲノムは」

『あなたの母親であるヒイロ主任研究員も同じ感情を共有していました。彼女は人間が二つに分裂してしまった現状を憂いて、この放射台建設の見直しを求めたのです』

 機体内のモニターに防空シティーの分厚い壁面が迫ってくる。小型シュートボックスの機体は高度を極力下げて壁面に接近していた。この広大な金属製のシールドで外界からの感染型光化学粒子をシャットアウトしているのだ。

 このままでは激突してしまうとマヒルが身をすくめた時、よく観察すると壁面の一部が空洞化しているのを発見した。まるで巨大生物の口蓋のようだ。

「あれは、何?」

 マヒルの呟きに小型シュートボックスのAIが応じる。

『防空シティーのさらに東――湖の対岸に位置する放射台への入り口です。ヒイロ研究主任との会話ログによると、あの人工湖はこの存在をカモフラージュするために作られました。このまま中へ進入して外界へ脱出します』

 宣言通り機体が壁面の横穴に吸い込まれると、モニターが一瞬だけ暗転した。だが空洞内には照明がついているらしく、外の様子が次第に明るみになる。

 内部には線路のようなレールがどこまでも敷かれていた。さらに奥へ機体が低空飛行で突き進むとガラクタを積んだ荷台列車とすれ違う。

 恐らく防空シティーで発生した廃棄物をここまで運んできたのだろう。運転している人間の姿は一切

見えない。自動操作で制御しているのだ。

 誰もいない不気味な闇に紛れ込んだ気がしてマヒルは不安になって聞いた。

「ねぇ、どこまでこの空洞は続くの?」

『この空間は防空シティーの分厚い外壁をくり抜いて作られた場所ですから、全長はさほどありません。もうすぐ最後の関門です』

 案内からモニターに視線を戻したマヒルが見た物は大規模な発射装置だった。

 旧時代、宇宙空間へ人間がシャトルを飛ばしたと聞くが、まさにその仕組みと酷似していた。

『ここまで運んできた廃棄物を大量生産した専用の無人シャトルに詰め込んで外界へ定期的に発射しているのです。今は運良く作業用の機械体はいないようです』

 発射装置の周辺に点在している無人シャトルは細長い筒のような形状だ。旧時代のミサイルという兵器に似ている気がする。ただ無差別に撃ち込むだけに存在するみたいな。

 小型シュートボックスは発射装置の打ち上げ滑走路に沿うようぐんぐん高度を上げる。だがその先は――

「ちょっと、行き止まりじゃない! 発射口が完全に閉じているわ!」

『外気がなるべく流れ込んでこないよう、廃棄物を詰めたシャトルを発射する時だけ開く仕組みになっています』

「暢気に説明しないでよ、ぶつかるわ!」

「心配いりません。開閉コードは事前にあなたの母親が私に与えてくれています。私が通過すれば赤外線でこちらが開閉口へと送った情報を読み取って自動的に――」

 激突を恐れてマヒルが身をすくめた刹那、自動ドアが開くように視界が一気に開けた。

 今度は辺り一面が闇に染まる。完全なる静寂。防空シティー内の領域なら人工天体システムの管理によって晴れているはずだ。それならばここはまさか――

『外界へ出ました。こちらはどうやら日が沈んだ時間帯のようです。何も見えませんので動力源を節約するためにモニターの映像を切ります』

「残念だけど、分かったわ」

 暗くても念願の外界を直で見たかったマヒルだったが、いきなり動力切れを起こしても非常に困るので我慢した。それよりもついに外の世界へ旅立てた開放感がマヒルの心に満ちていた。長年の夢が今実現したのだ。

 内心で喜びに浸っているマヒルに小型シュートボックスのAIがこれからの注意を促す。

『無事に着陸して外に出る際には危険ですので、必ず操縦席の収納ボックスにあるマスク型の防塵フィルターを必ず着用してください。それからパネル上にある搭乗ゲートの手動開閉キーを押して外へ。理由はご存じですね?』

「ええ、大体は。外界は感染型光化学粒子が蔓延していて、私たち優性因子ゲノムは直接呼吸できないのでしょ?」

『その理解で概ね正しいです。優性因子ゲノムが直接、感染型光化学粒子を体内に取り込むとあらゆる変調をきたす恐れがあります』

 マヒルはずっと気になっていることをこのAIに聞きたくなった。

「ねえ、一体、何が原因で外界は感染型光化学粒子に晒されるようになったの? 普通の光化学粒子なら旧時代にもある程度、空気中に混じっていたと文献で見たわ。それにどうして私たち人間が優性因子ゲノムと劣性因子ゲノムに派生してしまったのよ?」

『私にはその問いにお答えする権限はありません。ただそうあなたが質問した場合に、ヒイロ主任研究員からのメッセージを預かっています。―自分の目で確かめなさい、だそうです』

 意外な返答にマヒルが驚きつつも、融通のきかないAIに不満を抱く。

「お母さんがそんなことを? でもちょっとは教えてくれたっていいじゃない? 私たちこれから一緒に下界を探索するんだから」

『残念ながらそれは不可能です。着陸したら私はすぐに機能停止に陥るでしょう。あらかじめそうプログラムされていますから』

 予想もしなかった事実を告げられマヒルは困惑する。体一つで見知らぬ土地へ出て行くのは正直な話、怖くて嫌だった。

「どうして? 私だけじゃ、何もできないのに……」

『当初からヒイロ研究主任は誰にも知られないよう、極秘裏にあなたを救うべく私を一人きりで作り上げました。湖に私を沈めて隠したのはそのためです。従って私には最低限の燃料しか積んでいません。今はまだ無駄にはできないとヒイロ研究員が判断した結果です』

 今はまだ無駄にはできない? どういう意味なのかマヒルが呑み込めずにいるとAIは言葉を続ける。

『それにあなたには長年の相棒がちゃんといるはずです、マヒルさん』

 指摘されて自分の懐ですでに睡眠モードに入りつつある対話用ドールをマヒルは見つめた。はっきり言って頼りない。

マヒルの視線が体内のセンサーに反応したのか、イブは微睡みながらマヒルに話しかける。

『大丈夫よ、マヒルが変な場所で寝落ちしてヘンタイにゴウカンされないように私が見張っているから』

「今のあなたにだけは言われたくないわよ!」

 仮にも対話用ドールなのに持ち主と感情を共有せず、気ままにしゃべるイブを呆れ顔で睨むマヒルに小型シュートボックスのAIが告げた。

『着陸まであと数分です。衝撃に備えて下さい』

 モニター画像は消えて分からないがきっと大地どこまでも広がっているはずだ。全身に溢れる希望を胸にマヒルが肝心なことを案内人のAIに問う。

「どこに着陸する予定なの?」

『かつてトウキョウ23クと呼ばれていた地域です。ヒイロ研究主任が選定しました。それ以上の情報は残念ながら、私には与えられていません』

「いいわ。自分で確かめるから」

マヒルは着地に伴う振動で舌を噛まないよう口を紡ぎ、ゆっくりと瞼を閉じる。

するとAIが残した最後の言葉が脳裏に焼付いた。

『着地点を確保。これにて交信を終了し待機モードに入ります。最後にヒイロ主任研究員からマヒルさんにメッセージを預かっていますので再生します。―マヒル、あなたには無限の可能性がある。以上です』

 直後、揺り返しの重力がマヒルを襲った――


 

 さらに読みやすく段落を分けました。会話の部分を一行開けた方が読みやすくてこの小説を最後まで見れると思った方はレビュー抜きに知らせて欲しいです。

 Web小説の行間の取り方がいまいち分からないので、少しでも読みやすいように改善したいです。

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