シュリから見た魔女の娘
42話 後 くらいです。
ずるいなって思った。
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『エイメ』の事を知れば知るほど、そんな思いは募った。
わたしの好きなあのひとも、魔女の娘をからかっていた。
からかうってことは、気を引きたいって事ダモノ。
浮世離れした雰囲気は、村の誰にもないから男の子たちは注目していた。
それは女の子たちも一緒だった。
彼女は『大魔女の娘』。
行く行くは森の英知を受け継いで、この森の大魔女になる女の子。
黒い髪と瞳は神秘的で、肌は信じられないくらい透き通った白。
ほのかに血の色を通わせた唇は小さく可愛らしい。
それなのに口元にあるほくろが、彼女に妙な色気を覚えさせる。
同じ女の私ですらそう感じてしまうのだ。
異性の目から見たらさぞや、と思う。
でも、優しいなとも思った。
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彼女はゆっくりと、しっかりと話を聞いてくれた。
すごく、真剣な眼差しにのまれてしまいそう。
それから打ち解けて色んな話をした。
綺麗なお肌を保つためには、とか。
髪をツヤツヤにするには、とか。
いい香りをさせる事が、異性の心を惹き付けるとおばあちゃんが言っていたと締めくくった。
「香油を用意するね」
その言葉が力強かった。
わくわくして、不思議な感覚だった。
眠っている女性らしさを目覚めさせる何て!
考えた事もなかったから。
「エイメはいつもそうして、その。男の人を惹き付けているの?」
そう尋ねたら、きょとんとした顔をされてしまった。
「どうして?」
「どうしてって……。」
エイメはいつだって男の人の注目の的だから。
「?」
「うん。何というか、エイメ。自覚は無いのね?」
「自覚? 何の?」
小首を傾げるを通り越し、捻り始めたエイメを見やった。
そこには何の含みも感じられない。
皆で顔を見合わせた。
ミルアは一人、力強く頷いている。
「そうなのよねぇ。タチが悪いったらないわ!」
「ミルアの言う事はいつも意味がわからない」
ミルアには打ち解けているらしいエイメが、むっとして言い返すから、何だかおかしくなって笑ってしまった。
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夕刻――。
当たり前のように、騎士さまに抱え上げられて行ってしまった。
エイメときたら物凄く「嫌そう」だったから呆れた。
あんなに素敵な方に、あれだけ大事に扱われているのに、あの態度は何なのだろう。
頬を染めたりといった照れは感じられず、むしろ心の底から迷惑そうにする何て!
あの騎士さまが大地主様だと言うから、ますます驚いた。
エイメ……。
遠ざかる二人を見送った。
間違いなく地主様も、エイメの無意識の魔法の虜に違いあるまい。
何となく、そう思った。




