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オークの実がみせた夢

※ 40話のその夜

 カルヴィナが俺の手のひらに、オークの実をのせた。


 白く小さな指先が掠める。


 この実は特に大きいからどうぞ。


 ――等と、カルヴィナが得意げに言う。


 いつにない笑顔と共に。


 再び実を拾おうと引かれた手を、そのまま掴み引き寄せた。


 せっかくの木の実は地面に転がる。


 男と二人きりで、無防備にそんな笑顔を見せ付ける方が悪いのだ。


 ・。・★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・。・


 華奢な身体を腕に閉じ込めるのは、容易い。


 ふいにこみ上げた愛しさが、欲望を帯び始める。


 愛おしさは苦しいほどで、出口を求めてさ迷った。


 オークの木の実の恵みの雨に打たれたいと、無邪気に願った唇を塞いだ。


 次いで、口元のほくろに、首筋に、鎖骨の下に、胸元に―――。


 口付けの雨を降らす。


 すまない、許せ。

 俺は男だから……。

 どうしたって、こうやって慰めてもらいたいと願う時がある。


 震える耳元に吐息ごと囁く。

 我ながら何ていういいわけかと思う。

 でも彼女を求める気持ちは止まらない。

 止めよう、止めなければ彼女を傷つける。

 それは嫌というほどわかっている。

 だが、止まらないのだ!


 彼女のすすり泣きが耳朶を打ち始めている。


 それですら心地よくて、彼女の身体を味わう事にのみにしか思考が向かない。

 我ながら末期症状だと思う。


 このまま彼女を自分のモノにした瞬間に、彼女を失うとはわかってはいても、獣は留まってはくれないのだ。


 乾いて乾いてたまらないのだ。


 空腹で飢えた獣。


 淡雪を口に含むかのごとく、その感触は頼りなく、現実味が無かった。


 余計に飢えは募るばかりだ。


 だからといって飽きる事も無く、ただひたすらにその淡雪を求め続けた。


 耳元で聞こえるすすり泣きに、獣は凶暴さをむき出しにして行く―――。



 ・。・★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・。・


 眩しさに、無理やり瞳をこじ開けるようにして目覚めた。


 朝だ。


 気だるさを引き摺りながら、身体を起こした。


 寝起きは悪い方ではないはずだが、今朝は違った。


 夢見が悪かったのだろう。


 眠りが浅かったようだ。


 昨日カルヴィナがくれて寄こしたオークの実が、何故か枕元に置かれているのに気がつく。


 いつのまに?


 夢と同様、記憶に無かった。


 オークの実をつまんでみる。


 何かひどく甘いものを口に含む夢だったと思う。


 そのせいなのか、やたらと咽喉が渇いていた。


 ・。・★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★・。・




 ※ 夢って願望が現れるって言うよね、レオナル?


 夢オチでした~。

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