剣術大会の裏もよう
それぞれの大会に向けての意気込みというか、ボヤキ。
「今回の大会出場希望者……。」
「うん?」
「何か角が生えている方とか、基本もふもふしている方とかもいらっしゃるんですけど」
「うん……。」
どうしようかと、対戦表の作成と参加希望者の名簿を前に、頭を悩ませています。
参加希望者の方からは、直筆で署名をいただくことになっています。
騎士の方の名前に続いて、そこには大きく肉球の朱印がひとつと、何やら……。
用紙に穴を空けるほどの、引っかいたあとが見られます。
「……。」
「……。」
初めて仕事らしい仕事を任せていただきました。
僕は神官の、イオーリ・シュスラン。
同じく同期のケルナーと顔を見合わせる。
★ ★ ★
「きたな」
「きたわねえ」
ほほほほ。
はははは。
「懐かしいわねえ。あの時のわたくしったら、本当に清らかな乙女だったわあ」
「違いない。月日というものはかくも恐ろしい」
「まあ」
ほほほほ。
はははは。
「神官長どのも、ふさふさでしたものねえ」
「ぃやかましい」
ほほほほ。
はははは。
「乙女たちがそれはそれはもう、騎士様のお姿に騒いでおりましたわよねえ。それが、今はねえ?」
「その台詞、そっくりそのままお返しするわい」
★ ★ ★
「イオーリ。俺、思うんだけどさ。この方たち、神殿に属してないから参加資格ないよな」
「うん。じゃあ、それをお前どうしろと? そう伝えなきゃいけないのか?」
「そういうことになるよなあ」
初めて任された大きな仕事は――。
何やら大役のようです。
「あなたがたに参加資格は無いのです。諦めて下さい」
『……!』
『……?』
ヒヒヒィィィィィ―――ンンン!!
アォォォォォォぉ―――ンンン!!
『『何故だ!!』』
ひとしきり、咆哮しおわってから獣の二名は尋ねてきた。参った。
頼むから鏡を見てくれ。
あ。
そんな習慣すら無いのか。
などと虚ろな気持ちで思考を飛ばす。
『ぼやきの小話。』
がんばれ、少年!!