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椿 3

家で食事を作るときは必ずする事にしている、小さな器に作った焼うどんとお茶を、リビングにある小さな仏壇に置き手を合わせた。

祖母が亡くなった時、一人にさせるのがかわいそうだと、家族が集まるリビングの端に蓋を閉めたら小さな収納家具にしか見えないシンプルな仏壇を置いている。

そして今、そこに亜弓を除いた家族みんながいる。


彼が低い引き戸に身を屈めて入ってきた、父が日常着ていたスウェットは似合わない、こちらの方が着ていた服やマントより当たり前のはずなのに、まるでコスプレのようだ。

(食べて、箸よりフォークがいいよね。ああ、忘れてた、私は亜弓、笹野亜弓、あなたの名前は?)

(エドァルドだ、亜弓、すまないが世話になる)

父がこだわった堀炬燵に座るように促して、自分が風呂に入る間に手持無沙汰にならないようテレビをつけた、いつも見るニュース番組が始まっている。

チャンネルを自由に変えられるように、リモコンを近くに置いて部屋を出た。


脱衣所に入ると、着替えを置いてあった洗濯機の上に、彼の着ていた服はきちんと畳まれて置いてあった。

人の入った後の浴室は温かい少しほっとする、家族を喪ってから、こんな感じは長くなかった。

今まで彼はいたことはあるが、恋人になるまで付き合ったことはなかった、初めて家に入れた男の人が、初めて会った、それも素面であったら絶対声をかけないだろう相手だったのが自分でも不思議だ。


メイクを落として鏡を見る、醜いとは思わないが、誰が見ても平凡な顔だ、整いすぎのエドァルドの顔を見た後は余計に平凡に見える。

それも染めていないボブの真っ黒な髪と真っ黒な瞳は、彼の色合いに比べたら地味すぎる。

体つきも平均で、ただ胸だけが母に似たのか大きく、初めて会った相手が男だと、顔を見るより胸を見られるのが厭だし、子供を産んだら垂れるだろうなあ、とちょっと憂鬱。

体と髪を洗い、頭にタオルを巻き湯に首まで浸かる、冷え切った手先がジンジンする、目を閉じてじっとしていたら眠気で頭がこくりと動いた。

危ない、寝てしまう、もっとゆっくりしようと思っていたが、さっさと上がることにする、真っ裸で風呂場で溺死なんて厭すぎる。

パジャマの上にガウンを着て髪を拭きながら脱衣所を出る、あくびが止まらない。


リビングに戻ると、エドァルドがくいいるようにテレビを見ていた、食事の済んだ食器は一処に重ねてある。

食器を片づけようと近寄ると、亜弓に気付いて手が触ってきた。

(髪が濡れている)

その後手は離れて小さく横に振られる、すうっと自分の体に涼しい風が触れた感触があり、目の前に10センチほどの水の玉が浮かんだ。

「何これ」

ふわふわと浮かぶそれが綺麗で触ろうと指を伸ばす、届く前に細かい霧状になって消えた。

「えっ、加湿器?」

言いながらも自分で馬鹿な事を言っていると思う、あわてて彼の手をつかむ。

(何これ)

(人は弱い、濡れていると病気になる。)

(ちがーう、私の言いたいのはさっきの水玉は何?って私、髪、乾いてる。)

ドライヤーで乾かすのが面倒で、今日はタオルにくるんで寝ようと思っていたのに、もうすっかり乾いている。

(ただの簡単な魔法だが、それよりこの国には明日の天気だけを占う預言者がいるのか?)

(はあ?魔法??ああ、天気予報ね、あれは、えっと高気圧と低気圧があって、それを天気図にって、私は理科は苦手なのよ!!)

科学も物理も工学も私にとっては全部、理科なの!


いろいろ説明を求められても、うまく説明できる自信はない、車庫の上にある二階の自分の部屋にノートパソコンを取りに行く、日本語は無理でもネットの中には分かる言葉があるかもしれない。

炬燵の上の食器を運んで台を拭き、パソコンを起動させる。

(これで自分で調べて、あと、いろんなことが分かるけど、すべてが真実とは限らないし、故意に人を傷つけるため悪意を書く人もいる。私は寝る、おやすみなさい。)

見て言葉がわかるだろうか、と疑問に思ったが、考えることを拒否する。

もう今は、温かい布団にもぐりこんで眠りたい。

(おやすみなさい)

一言伝えて手を振ると、さっさと自分の部屋へ戻ってぐっすりと眠った。



読んでくださってありがとうございます。

主人公の容姿をかくの忘れていました。

誤字脱字がありましたら、教えてくださったらうれしいです。

感想も大歓迎です。


雪で滑って後頭部を打って、もしかしたら何か能力が、と思ったけど出来たのはでかいたんこぶだけだったメレンゲでした。

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