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椿 11

「本当は年末に大掃除ができたらいいのだけど、30日まで仕事だったからさっと済ませましょう。」

ハンディモップを使って上から掃除していく、休みの日はいつもそれなりに掃除しているのでそこまで汚れていない。

本当は障子も真っ白な新しいものに張り替えたいのだけど、破れていないのでつい何年も、そのままにしている。

「どうして年末に掃除するのだ?」

「うーん、日本人は正月が、新年が好きなのよ、今年の汚れを綺麗に落として、年神様を迎えるの。と言っても、近頃の人は正月休みは海外で、って人の方が多いかも。」

両親が生きていた時は、鏡餅をついて門松を作り、庭に白砂をまいて新年を迎えた、今の自分にはそんな余裕がない。


全体に掃除機をかけて、縁側を糠で磨く、畳の居間は晴れた日が続いた頃に水拭きをしよう。

エドァルドは亜弓の指示で、重い台を動かしたり、床の間の掛け軸と風鎮を新年用に変えたりしている。

エドァルドが空気を暖めているのが続いているのか、窓を拭くために開けても家の中は温かいままだ。

普通なら冷たい風が吹き込んでくるはずなのに、しんしんと雪の降り続く外に掌を上にして差し出す。

軒下から急に温度が下がり掌に雪が積んでゆく、引くと暖まった空気に雪が解けた。

どんな仕組みになっているのだろう、確かよく聞くエアカーテンは扉を開けると上から風が吹き込む仕組みだった気がする、これは魔法だろうか?

とにかく考える事は後回しにして働く、何だか昨日から後回しにした事が多すぎる気がする。

大掃除にはあまりにも手抜きだが一応掃除が終わった時は、5時をまわっていた。


綺麗になった床の間と玄関に半紙を敷いて鏡餅とミカンを飾る、エドァルドは好奇心いっぱいの顔でこちらを見ている。

「全部済んで炬燵でくつろいでから疑問に答えるわね、」

答えられる物にだけだけど。


エドァルドに進められて先に風呂に入ってから夕食を作る、瀬田さんにもらった煮物と、年越し蕎麦と、それに入れるかき揚げを作るついでにてんぷらも作る事にする。

自分だけなら揚げ物はいいのだが、男性には足らないかもしれない、あ、でもドラゴンって何でも食べるのだろうか?

まあ、昨日は美味しそうに食べてたし、ラーメンも美味しそうだったからいい事にしよう、麺類が続くけど仕方がない。

その間にも、買ってきたおせちを重箱に詰める、手作りで作ろうと思っていた何種類かは下ごしらえをして冷蔵庫にしまう。


夕食は楽しかった、この家で一人だけではない食事は久しぶりだ。

亜弓に教わった通り、御馳走さまと手を合わす、神とかではなく食材に感謝を言う事を気に入ったらしい。

「私は飲まないけど、お酒があった方が良かった?」

「いや、今はコーヒーの方がいいな。」

食器を片づけ、コーヒーと菓子を準備して炬燵に座った、もうやることはない、話をして眠たくなったら寝るだけだ。


「ドラゴンは何でも食べるの?食べたらいけない物とかある?」

先にこちらから質問をする、エドァルドにはネットやテレビで情報を仕入れられるが、亜弓は教えてもらうしか情報源がない。

「竜の形態の時は自然の気をもらうからあまり食べないな、時々気が向いたら狩りをすることもあるけど、食べる時はもっぱら人の形をとっている時が多い、なにせ、竜だと生で食べるか炎で焼くかしかないしな。人の方が調理方法や味付けが変化に富んでいるから楽しめる。何でも食べるぞ、人が食べられるものなら、それに美味しかったら嬉しい。ああ、そうだ雌は竜の形態でも妊娠中によく食べる。母が妹を身ごもった時卵を産むまで、よく父と狩りに出たよ。」

「よかった、じゃあ、何を作ってもかまわないのね。」

「亜弓の作ってくれた物は美味しい、時間があったら教えてほしい。」

「わかった、今度教えるね、ああ、それと、エドってエド、ウァルド・ファルクが本名?」

瀬田さんに名乗った名前は、亜弓も聞いたのは初めてで何だか、自分にはそう言わなかったのが寂しかった。

「いや、仲間は皆エドァルドと呼ぶ、正式名はエドァルド・ヴェルダナン・スルツ・ファルクでいいかな。」

「はあ?」

「神が最初に竜を4種族作った、その一種炎氷の竜ヴェルナダン一族の13代目でファルクの谷で生まれたエドァルドだな。もっとも、子竜の時叱られた時ぐらいにしか呼ばれた事がないが。」

亜弓の頭の中に、大人のドラゴンの前に正座して項垂れる小さなドラゴン姿のエドァルドが浮かぶ、想像しかないけどショッピングセンターの様子とか考えると、やんちゃそうだ。

「エドは何歳なの?」

眉間を指で押さえながら、エドァルドに尋ねる、

「230くらいかな、100年くらい親の元で育ち、成人、成竜は200歳くらいかな、成竜式はないけど。」

「あ、そうだ、ネットで見たのなら、竜よりドラゴンの方が近くない?」

「竜って言葉や文字の方がクールじゃないか、」

「って、あんたは漢字の書いたTシャツを喜ぶ外人か!」

思いっきり突っ込んでしまった亜弓だった。


読んでくださってありがとうございます。

前回更新の時お気に入り登録がもうすぐ100行くかもーー

と喜んでいたら、150超えてました。

びっくり、ありがとうございます。

楽しんでくれたら嬉しいです。

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