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椿 1

普通電車しか止まらない小さな駅は年末の最終に近い今の時間、ほとんど人影はなかった。


暖かい車内から寒い外に出て、笹野亜弓ささの あゆみはぶるりと体を震わせ、コートの襟を詰める。

天気予報は年末から雪の予報を出していた、厚い雲とこの寒さでは本当に雪になるかもしれない。

飲みなれないアルコールに顔はまだ熱っているが、さすがに体の寒さまでカバーしてくれない。


亜弓の働いている会社は今月に入ってから、今日まで日曜もろくに休めないほど忙しかった、やっと明日から5日間の正月休暇にはいる。

この時間唯一開いている駅前のコンビニを通り過ぎ家へと向かう、コートのポケットに手を突っ込んで俯いて足を速めた。


古い住宅街に人気はなく、ところどころ設置された街灯が光を投げかけている。

開発が進んでいない古い家並みが多いこの町が亜弓は好きだった。


今の時間閉まっている酒屋の前を通りかかる、明るい自動販売機の前に立っている人影に気づいた。

長い灰色の髪に黒い長いコート、女性かとも思ったが自分よりはるかに高そうな背と、がっしりとした体格にそうではないことがわかる、自分には関係ない事と後ろを通り過ぎてから気がついた。

このところの忙しさに家の冷蔵庫がすっかり空っぽなことに、買い置きの非常食にしていたレトルト食品や、飲み物、米さえない。

足を止めて考える、今は打ち上げの飲み会のためお腹がいっぱいだ、しかし喉は乾いている、それにこのままだと明日の朝目覚めた時、何も食べるものがない。

今だったら5分ほど戻ってコンビニで買い物したら、明日は午前中思う存分のんびりできる、昼から掃除や買出しに出ればいい。


ため息をついてくるりと振り返った、自動販売機に立っていた男と目が合う、見るからに西洋系の顔立ち、整っている顔は自動販売機の光の陰影で余計に彫が深く見える。

映画でもめったにお目にかからない、美形だ。

亜弓は英語を話せないこともないが、あまり自信はない。

目があったことに気付かないふりをしてコンビニへ足を速めた。

明るいコンビニの店内に入り、あれこれとかごに入れていく、何か困っているのだろうか、先に見た男のことが気にかかる。


買いすぎかと思うほどいっぱいになった袋を持ってまた歩き始める。


同じ場所で男がこちらを見て立っているのに気がついた、途方に暮れているように見える、

コートと思っていたものがマントであること、その下に見えるブーツが、舗装されていない山道でも歩いていたように泥に汚れているのに気がついた、そして光のせいか疲れ果てているようにも見える。

このまま放っていたら、いくら頑丈そうでも明日凍死死体になりそうだ。


「May i help you?」


精いっぱいの笑顔で話しかける、後で考えてみるとだいぶ酔っていたのかもしれない、いつもの自分なら深夜に得体のしれない男性に話しかけることなどありえない。


「******** **」

話しかけられるが何を言っているか全然わからない、困ってお互い見つめ合った。


光を背に薄暗い中、その瞳だけは薄い透明に近い水色で、唐突にどこかで見た色だと思った。

ゆっくりと、まるで恐る恐るというように手が伸びてきてそっとむきだしの手の甲に触れる。

亜弓は振り払うこともせずに、男の瞳に見入っていた。


(ここはどこだ?)

頭の中に声が響く、驚いた手からコンビニの袋が落ちた。

「え、あのN市だけど」

(それはどこだ?)

「日本ね、あ、ユーラシア大陸の端っこ、太陽系の第3惑星地球。」


つい、前日まで請け負って作っていた子供学習館のHPで使っていた言葉で返す。

(ちきゅう・・)

困ったような声で言葉が途切れる、その姿が、自分より30センチは高いがっしりした男なのにかわいく感じた。


「もしかしたら行くところないの?」

言葉は返らないが、困ったように眉が下がる、それが隣家に飼われているゴールデンリトリバーに似ている、酔っているせいか、その金色の頭に伏せた犬の耳さえ見えるようだ。


「いいよ、うちにおいでどうせ一人暮らしには広すぎる、」

祖父母が建てて、父母が暮らしやすいように改築して残してくれた家は、一部2階の一戸建てで一人きりで暮らすには広すぎる。

「こっち、」

触れていた手を離して引き歩き出した、男は亜弓の落した袋を拾い後をついて歩き出す、その様子に少しほっとした。


はじめまして、

完結を目指してぼちぼちと、書いていこうと思ってます。

突っ込みがいのある、ぬるい展開になっていくと思いますので、構成や設定の完璧な話を読みたい方には不向きだと思います。


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