桜音6
第3楽章Bパート
延々と続いた説教の後、やっと解放された加藤は、
「先輩~だいじょーぶですか?」
と聞かれも反応しない状態だった。
「ほっといて大丈夫やにー。魂抜けてるだけやで」
他の2年はそういっているが1年はそうもいかない。
というか魂抜けてるってのも結構問題やろ、普通。
「どする?ほっとくのは……」
瞳が言う。
「でもどうしよう。読んでも返事しないよ?」
「いっそ足でも思いっきり踏んでやれば起きるかな」
「へ……え?え?」
瞳の提案に、絢は目を白黒させる。
「ほらぁ、ショック療法ってやつ?何か聞きそうだし」
「でもほら、先輩の足踏むのは…って瞳ちゃん?」
絢の助言なんぞに耳をかさず、瞳はずかずかと加藤のもとに歩み寄り、思いっきり踵を振り上げた。
「だっ……ったー……」
微妙なリアクションで我に返った加藤は足を抱えた。
「おはよーございます先輩。いい夢でした?」
まるで何もなかったかのように瞳は言う。
そしてそのままスタスタと絢のもとに戻ってきた。
「な。」
「な、て。……ってか先輩だよ!?足踏んでいいのっ?」
「そりゃーよくないだろうけどさー、別に悪意を持ってやったわけじゃないし。そもそも私がやったってことにきづいてないよ。」
よく見ると確かに周りをキョロキョロと見渡している。
「ほら、大丈夫そうやん。練習しよに」
瞳はそういって練習を再開する。
絢は暫く瞳と加藤を交互に見比べていた。