表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロイヴェリクの本懐  作者: ゆーとぴあ
第一章 外街編
PR
1/22

第1話 転生したら魔法あったわ

 気が付いたときには、とてつもない眠気に襲われていた。

 必死に眠気を振り切って無理矢理眼を開く。視界がぼやけていたが、必死に焦点を合わせると、目に光が入ってきた。


 どこからか明かりが差し込んでいるようで眩しい。涼しい風を感じて心地よく、視界も明瞭になってきた。


 屋内にいたようで、目の前には天井があった。

 木造の天井で年期を感じる。雰囲気からして全く身に覚えのない光景だった。どうみても俺の部屋の天井じゃない。


 辺りを見回すと、棚や皿、手籠があった。どれもあまり出来が良いとは言えない。何というか、何世紀も前の代物のようだ。


 辺りを見ている間も何かが視界を邪魔していたが、よく見ると編まれた籠の持ち手だった。視界を塞ぐサイズって。とんでもないサイズだな、おい。

 そんなサイズの籠を作るやつがいるのか? しかも、なんでその中に俺がいるんだ。


 籠の持ち手に手を伸ばそうとしたら、手が動かない。手足に重りが付いたかのようだ。

 何というか、筋力が足りていない感覚がある。なんで? こちとら男子高校生だぞ。あり得ないだろ。


 ……転生でもしたのだろうか。

 いやいや、そんなことあってたまるか。ここは現実世界だぞ。そんなことが起きるわけが……。


 俺はしばらく悩んでいたが、状況は一向に変わらない。


 今俺が寝ているのはどうやらベッドのようだった。

 ついウトウトしてしまっていたが、すぐにはっと思った。


 このまま意識を失ったらどうなるのだろうか。このまま二度と起きないのだろうか。

 それはぶっちゃけ怖い。


 俺は何かしようと思って、試しに声を出してみた。


「ああうぁ?」

 とても呂律が回っているとはお世辞にも言えない声が出た。例えるなら、幼児特有の謎言語だ。どうやら俺は身体が小さくなったのではなく、本当に赤ちゃんになってしまったらしい。


 なんで?


 俺が混乱するなか、ふと横で音がした。


 顔を向けると、側でとても金髪の美人が下を向いて何かを洗っていた。


 え……誰? さっきはいなかった気がするんだけど……?


「クルト、顔を拭きましょうね」


 その女性はこちらを見ると、ニコニコしながら俺の顔をタオルで拭いてくれる。ああ……冷たくて気持ちがいい……あ、鼻水ついちゃった、すいません。


「あらあら、洗ってこなくちゃ」


 目の前の女性はそう言うと、タオルを持って部屋から出て行った。


「……」


 ……クルトというのは、俺の名前か?


 名前らしき何かを呼んでいるということは俺が誰だか知っているということだろう。

 でも俺の名前は理人であって、クルトではない。

 誰の母親だろうか。俺の関係者なのは間違いない……俺の母親なのか?


 俺は全くの別人として生まれ変わってしまったのだろうか。

 女性が帰ってこないので、その間に俺は考える。

 一番意味がわからないのは転生していることだ。夜は普通に自室で寝たはずなのに、何でこんなところにいる?


 寝た後のことが思い出せない。いや、寝ていたのだから当たり前なのだが、それにしても何故転生しているんだ。


「ふえ」

 ちょ、なんか急に怖くなってきた。これもうホラーでしょ。なんでこんなところで、赤子になってんの?


 俺の人生は今度一体どうなるんだ……。


 なんか不安で泣きたくなってきた。とはいえ、これくらいで泣くわけがないだろうと思ったのだが――。


「うんぎゃあああぁぁ!!!!」


 ダメだ。全然我慢が効かない。赤子だからか?


 俺が恥も外聞も無く泣きまくっていると、タオルを洗いに行っていた女性が帰ってきた。


「あらあら、どうしたのかしら? お母さんはここですよ」


 女性は俺の側に近寄ると、俺を持ち上げた。身体を揺らしてあやしてくれる。

 母親が側にいるからか、安心感が半端ない。ホッとして力が抜けて、不安も和らぐ。


 女性はしばらくの間俺をあやしてくれていたが、ふと表情を変えた。


「そうだ。面白いもの見せてあげますね」


 急に思いついたように俺をかごの中に降ろす。

 腰の辺りから杖を取り出した女性は、それを俺の頭上に掲げた。


 俺が見ていると、杖の先からキラキラとした光が出て、踊るように動き始めた。

 はあ!? 何これめっちゃ綺麗なんだけど!?


 女性が出した光は動物の形を取ったり、妖精のように羽を生やしたりしていた。


 熊のような丸っこい生物が二足歩行しながら歩き、その後ろを兎が跳ねながらついていく。その列には他の動物も続き、ぐるぐると回っていた。周りでトカゲが火を噴き、中心では数匹の妖精が踊る。


 俺が目を輝かせて見つめていると、「はい、今日はこれくらいにしておきましょうね」と言って、母は光を消した。そ、そんなぁ。もう少し見たいんですが。


「あら、もうこんな時間。ご飯の準備しなきゃ」


 俺が恥を捨てて必殺のうるうるお目々で母さんを見ていると、母さんはさっさと別の部屋に向かってしまった。くそう。

 静かな部屋に一人になってしまった。さっきの光景を片隅が忘れられない。綺麗な光景だった。熊とトカゲ、兎……ねむい……。


 …………。


「んぎゃあぁぁ!!!!」


 はっ、気づいたときには俺は大声で泣いていた。しかも、かなりの空腹感に襲われている。うっ、死にそう。


「はいはい、ミルクですよ」


 いつの間にか側にいた母さんが俺を抱え、胸を出した。俺は空腹を満たすためにそれを吸う。

 勢いよく吸い付き、ぐいぐい飲んでいると、お乳が出てこなくなった。


 母さんはお乳が出なくなったことに気づいたのか、俺をおいて、側にあった自分の食事を取り始めた。しかし、量がちょっと少ない。


 おそらく、成人女性が食べる量としては、足りていなさそう。

 なんか、あんまり良い食事とは言えないな。生活が厳しいのだろうか。


 苦しい状況を考えると、もしかして俺の家って恵まれない家庭ってやつだろうか。

 普通、恵まれた貴族とか王族スタートじゃないの? 転生って。


 自分の状況に戦々恐々としていると、耳元でカサカサと音がした。この音は、と思った途端、ブウゥゥンと音がして大きなGが俺の顔に乗った。


「ぅぎゃああぁぁぁ!!!」


 顔にGが乗ったぁぁぁ! 汚いってレベルじゃねぇぞ! 取ってくれ! そして消毒してくれ消毒!


 俺が再び号泣し始めると、Gが慌てたように飛び去った。

 ブウゥゥンと羽音を立てて部屋の端に飛んでいくGだが母上が即座に手を振ると、手の先から炎の玉が飛んでいき、Gに直撃した。


「……」


 俺は驚いて口をつぐむ。

 炎に焼かれながら落ちていくG。ぼてっと地面に落ちる様は哀れだ……が、それよりもあれって……もしかして魔法では?


 もしかして杖から出してくれた光も同じで、魔法なのかも。炎を出していたから、同じものなら攻撃もできるようだ。マジでよくあるファンタジーの世界じゃんこれ。


 俺がウキウキし始めていると、母さんが食事を終える。


 そして食器を持ってどこかに行ってしまった。洗いに行ったのだろうか。

 魔法が存在しそうなのは素晴らしいが、やはりこのGが普通に出る汚さは驚愕だ。これで一つ確定したな。ここは北海道では無いらしい。


 この点は大きなマイナスポイントだな。普通に環境が劣悪だ。父親も未だに姿を見せないし。

 せっかく転生したんだから、楽できるかと思ったんだが、どうやら違うようだ。


 まあ魔法が使えるならいいか。面白そうだし。

 とりあえず、今は幼児として寝ることに集中することにしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ