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第8話「筋肉」

祝日なので予約投稿を試してみて第8話です。よろしくお願いします。

美濃の姫ですが陣内の空気が最悪です。

明らかにドン引きされてる。

しょうがないじゃん怖かったんだからさ。

姫ムーブがはがれるくらい見逃せよ。

正面に座る信長ノッブがこちらを「うわあ俺こいつと結婚すんの?」という目で見るのが本当につらい。

帰蝶ちゃんコワクナイヨー。

光安おじも槍は折れたが無事なようで、私と信長ノッブの間でおろおろしている。

後ろで控えてるおさきの方からはたまにため息が聞こえるしマジ針の筵。


気まずい思いをしながらお座り(正座しようとしたらさすがに止められました)していると権三郎殿と織田家の方(光安おじと同年代のおっちゃんだ)が来ていろいろと報告してくれた。

権三郎殿、生きとったんかワレェ!よかった!


曰く。

討ち取った小鬼は128匹、大鬼はあの一匹のみ。

尾張で言えば小規模の群れだったそうな。近所の集落を滅ぼした群れだと思われるとのこと。

こちらの被害はうちの護衛兵が6名戦死。重軽傷が18名。逃走した兵が3名いて、近所の藪の中で小鬼に殺されているのが見つかったそうだ。

ちなみに逃げたやつ以外は全部大鬼一匹からの被害。

私の目の前に到達するまでのわずかな間でこの被害が出たそうな。

なんだろう。

あいつ一匹で無双ゲーしてんの?

世界観違わない?

あんまり知らんけど、生身の人間であんなのできるのって猛将とか言われるやつじゃねえの?

いや普通の人間があの大鬼と同じ大きさや筋肉あってもあんな人をポンポン投げ飛ばしたりできないと思うけど。


とりあえず戦死者の埋葬や鬼たちの死骸の処理があるので、信長ノッブの部下からいくらかを残して、こっちも足軽組頭といくらかのこして先を急ぐことになった。

お船に乗って長良川を下る予定で、今日は津島に向かう。

すぐ暗くなっちゃうので挨拶とかはまた後で、という事になった。

織田家のみなさまの冷たい視線から逃れられるならそれでもうよいです。はい。




お船にどんぶらこと揺られながら川を下る。もう尾張国内だ。

両岸が河原で、いわゆる河原者とかがいるのかな、集落はどんなかな、と思ったら焼け落ちた廃墟が並ぶだけだった。

ほんとどうかしてるよこの世界。

信長ノッブたちはとりあえず大きな魔物の群れを討伐して回り、小集団がうろつくだけの状態になんとか修めたんだそうな。平定は道半ばが実態とか。

8割平定済みって間違ってんじゃん!

マムシ(父ちゃん)!ガセつかまされてるよ!

・・・戦国時代だから情報が正しく伝わらないなんてあたりまえだけどさ。

ひどい状況のわりに、死体が転がっているわけでもない。

つまりそういうことなんだろう。

そよそよと風は気持ちよいが、うっすらとあの臭いが漂ってくるような気もする。


人の営みがない土地を行くのがこんなに不安で心細さを感じさせるものだなんて、初めて知った。

またこの地に人が戻ることはあるんだろうか。

いや、戻さないとまずいんじゃないか?

日本はただでさえ土地が少ない。

濃尾平野で万全に耕作できないと食料不足まで考えられる。

実際江戸時代で開墾が進んで万全に耕作できても、飢饉が度々発生してる。流通が未発達なせいもあるけどさ。

どうしたもんかな。内政チートでうまいもん作って面白おかしく暮らそうと思ってたけどさ。戦国死にゲーと知ってあきらめてたけどさあ!

思った以上に尾張の状況がヤバい。

これ、うまくやらないと崩壊するんじゃない?

何がって、社会が。



津島についたのはすっかり日も落ちたころだった。

今日はこのまま津島神社でお休みらしい。

出迎えてくれた筋肉が山脈のようなイケおじがそう言っていた。

もうヘトヘトだったんでありがたい。

おさきが言うにはあのイケおじが織田信光だという。

信秀パパノッブの弟で信長ノッブの叔父だとか。

心の中でオジノッブと呼ぶことに決めて、私は畳の上に横になった。

オフトゥンが恋しい。戦国時代キライ。


初めて魔物と戦を目の当たりにしたショックで気が高ぶり、なかなか寝付けない。

という事もなくスコンと眠りに落ちた私が目を覚ましたらまだ真っ暗だった。

帰蝶ちゃんは図太いのだ。だてにマムシの娘やっていない。

とにかく、あんまり早く起きたのでおさきが来るまで昨日の出来事からわかったことを考察してみることにした。

ネタ帳が嫁入り道具のつづらに入っているのが悔やまれる。メモとれねえじゃんかよ。


まず、鬼についてだ。

私は認識が甘かった。

尾張が8割平定されてる、という情報を鵜吞みにしていたのは痛恨のミスだ。

また、「飛騨を抑えているから美濃は安全」というのが正しくない。

考えてみれば魔物に国境なんて関係ないのだ。川も渡れば人も襲う。

関東がそうじゃないか。国境関係なしに魔物が広がってるんだろあそこ。

そしてその能力。


小鬼ゴブリン。弱い。数が多いけど弱い。まさに雑魚。

ゴブスレさんが喜んで退治してくれるタイプのアレだ。私らをみておったててたところを見るに、あの作品のように増えるんだろう。

厄介だ。

放棄されてる関東とか尾張北部がどうなってるのか想像もしたくない。


大鬼。まさに想像した赤鬼とおんなじものだ。いわゆるオーガとかそういうたぐいの魔物だ。

ふつうその間に豚顔のオークとかでワンクッションおかれるもんだと思うんですがねえ!

ほんとクソゲーだなこの世界!

これはとにかく強い。

もう人間なんて紙屑みたいに吹き飛ばされる。自称槍兵庫の光安おじの鋭い槍術がちっとも効いてなかった。

多分頭掴まれたらスイカみたいに破裂させられるんだろうな。

どうなってんだあの腕力。

そして大鬼も私を見ておったててた。

ほんともう、マジでいい加減にしろよ?

帰蝶ちゃんは激怒した。

必ずあの邪知暴虐の化身を除かねばならぬと決心した。

大鬼はとにかく強い。

でも信長ノッブは軽くあしらってほぼワンパン。

つまり、大きくレベルが上がらないと倒せない中ボスみたいなもんなんだろう。

そんなもん序盤で出すなよバカかよ。

昔の洋ゲー並みに難易度設定間違ってますよコレ。

ああこれ戦国死にゲーだったじゃあしゃあないかってなるかいボケ!


・・・そもそもレベルアップってなんだろう?

信長ノッブは高レベルなんだろう。

ものすごい腕力とかジャンプ力とか、そういうものを持ってる。

でも大鬼より明らかに小さかった。

大鬼はあの山脈みたいな筋肉の信光おじ(オジノッブ)よりもすごいでかさで、思い出すと筋肉がエベレスト!と掛け声かけそうになる。

前世で言うターミネーターさんをクソでかくした感じだろうか。

でもああいう体形の大男がいたとして、人をつかんで軽々投げ飛ばしたり、槍をつかんで鎧着込んだ人間を持ち上げたりできるものだろうか。

私は無理だと思う。

重量挙げのチャンピオンは確か300kgくらい持ち上げたらしいけど、あれはそういうものをそのつもりで整えた条件でやるから持ち上がるんだ。

それより軽いとはいえ、あんなに簡単に人ひとりを持ち上げることができるとは思えない。

そんな事ができる大鬼を軽々蹴っ飛ばして片手で持ち上げてワンパンでぶち殺す信長ノッブ。軽く人辞めてるよねアレ。

でも大鬼より小さい。背丈も、筋肉も。

細マッチョだよねあれ。

見た目の筋肉量だけでは説明することができない。


・・・私が知ってる物理法則が仕事してない気がする。

レベルアップは物理法則をぶっちぎる何かをもたらすんだろうか。

単純な筋力の強化じゃ説明できない。

もしかしたら、謎の力を制御してるんじゃないだろうか。

なんだか、このクソ戦国死にゲーの攻略法はこれがカギを握ってる気がする。

エーテルとか、ダークマターとか、前世の科学者が呼んでた奴かもしれない。

もしかして、もしかしたらだけど。

仮説に仮説を重ねた仮説でしかないけれども。


この世界、魔力があるのかもしれない。


実際筋肉は大事ですよね。

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