第5話「マジで臭い」
臭いと臭いって同じ文字で出るのは何かが間違っていると思った。
なんか知らんが信長率いる織田家の皆さんはまだ到着していないらしい。
まあ多少遅れることはよくあることらしいので気長に待てばよいや。
時計もない時代だもんね、しょうがないね。
あ、日時計とか水時計はあんだっけ。落ち着いたら南蛮人に時計持ってきて貰えばいいか。日本の職人の変態コピー技術ならなんとかなるっしょ。
腕時計とか作れたらロレッ〇スならぬキチョックスとかブランドで売ろうかな。
語呂が悪い?こまけえこたぁいいんだよ!
河原で涼みながらのんびりそんなことを考えていると、なんか風上からこう、なんというか・・・まあ、その、なんだ。臭い。
臭いにおいが漂ってくる。
肥溜めでもあんのかな?と首をかしげて臭くないところに移動しようか、とおさき(17歳独身)の方へ顔を向けたら、なにやら権三郎殿が焦ってこちらへ向かってくるのが見えた。
「姫様、この臭い、もしかしたら近くに小鬼がいるかもしれませぬ。念のため陣地にて待機していただけますか。」
マジ?小鬼って美濃にもいるの?いや尾張との国境だからはぐれた個体がうろついてんのかも。でも姿は見えないくせにこんな臭いの?奇襲とか絶対できなさそうでなんか笑える。
まあ、爆笑するわけにもいかんしおとなしく陣地にこもるとしますか。
陣幕が張られた陣地にてのんびり姫様ムーブをしていると、なんだか周囲が騒がしい。なにやら指示を飛ばしている光安おじをじっと見つめると、視線に気づいたのか近寄ってきた。
「姫様、権三郎が飛騨の戦で嗅いだ小鬼のにおいがするというので、念のため斥候を放ち、周辺を改めておりまする。いやはや、お騒がせして申し訳ないですな。飛騨は過酷な戦であったそうなので、権三郎は気が高ぶっておるのでしょう。何事も起こるはずがございませぬ。ここ墨俣は飛騨からは遠く、尾張の鬼も織田様方が討伐されたとのこと。仮におってもわずかな数。この槍兵庫が串刺しにしてご覧に入れましょうぞ!」
はっはっはと笑う光安おじ。大丈夫?あなた結構お年ですよね。
槍兵庫って自称でしょうよ。安心していいのやら悪いのやら。
というかフラグ立ってね?これ襲撃される流れじゃない?
大丈夫?なんか大ピンチになって光安おじ頭からおいしく頂かれちゃわない?
宇宙に出ようと待機してると大体ティ〇ーンズとかあし〇ら男爵が襲撃してくるんだよ?(ウィ〇キースパ〇ボ脳)
なんだかとても不安になってきた。
おさきもなんだか不安そうだ。
(17歳独身)って付けるとなんかやけに鋭く睨まれるので私は考えるのをやめたのだ。帰蝶ちゃんは多様性を尊重する良い姫様です。
それはともかくおさきは不安そうになぎなたを抱きしめている。
どこに隠してたんだそれ。
城出るときもってなかったよね?
などとおさきと遊んでいると、陣の外が騒がしくなってきた。
斥候が戻ったのかな?そうこうしてるうちに権三郎殿が私たちの前に来た。
「申し上げます。斥候によるとこの先半里南の距離に小鬼の群れがいるとのこと。危険があるためこの場を離れ、近くの砦へ引くべきかと」
凍り付いた。南半里?えーと一里がざっくり3kmだっけか。とすると1.5㎞?中学生男子なら5~6分で着く距離?マジで?
そんなに離れてんのにあんなに臭いの?どうなってんのよゴブリン。
ああいやそれは今はどうでもよいか。でも引くっても砦よ?信長が来るのに砦にこもってたら気を悪くしないかしら。
光安おじも悩んでいるようだが、なんか決心したようだ。顔を上げて
「姫様、ここは安全策で砦に入りましょうか。先ぶれを出して湯でも沸かしておいてもらいま」
「うわああああああああ!化け物だああああああ!!!」
陣幕の外から叫び声が聞こえる。
南から風が吹いた。
吐き気がする臭いが陣内に立ち込める。
これは。
まさか。
小鬼?
「襲撃じゃぁ!法螺ふけぃ!」光安おじが叫ぶ。
臭い。
法螺貝が高らかに鳴って、周辺が騒然とする。
臭くて鼻が曲がりそう。
権三郎殿が陣の外へ走り出て「静まれぇ!槍構えぃ!」と叫んでいる。
この世にこんな悪臭があるなんて知らない。
そして「小鬼はわずか2匹!臆するな!囲んで叩け!!」と声が遠く聞こえる。
知らない臭いが、臭い。
これは何?
私はなんでこんなところにいるの?
私は完全に「いくさ」に飲まれていた。
そろそろ始まります。




