第44話「名前は後からついてくる」
やっと余裕が出てきた日曜日なので第44話。
読んでくれてありがとうございます。
涼風様の自虐ネタを乾いた笑いで流していると、信長と涼風様の間で織田家につく上でのお給金やそのほかのお公家様への対応について話し合っている。
表向きは尾張女子大学寮の所作指導役として、陰陽術の研究を行うような感じになりそうだ。
うーん、研究所とか作って正式に術の記録を集めたり、人手を集めたりした方がいいんじゃないかな。
だって涼風様の術を見る限り、陰陽術ってかなりシステマチックな感じがする。
符に特定の文言を書いて、気を流すと発動する。
これ、ほぼ電化製品じゃん。
聞いた限りだと起こる現象もエアコンっぽいし。
エアコンってことは、「風を起こす」とか「気温を調整する」みたいな命令が書かれてるんじゃないのあの符って。
電化製品じゃないけど、分解して、別のものに書いても動くのか試したい。
リバースエンジニアリングっていうんだっけこういうの。
エンジニアといえば技術のホ〇ダ!
ホン〇技研工業だっけあの会社。
技研工業……技研……研究所!
「そうだ!必要なのは研究所だ!」
「あいかわずいきなりわけわからん事言うの。きちょーは」
立ち上がって声を上げる私にイナリちゃんが突っ込み、おさきは呆れている。
信長は私を面白そうに眺めて
「なんだ、何か思いついたのか帰蝶?」
と、ニヤリと笑った。
「ノッブ!「熱田魔導研究所」作ろう!涼風様はその所長!」
「まどう……けんきゅうじょ?」
「うん!陰陽術研究所じゃなくて魔導を研究するの!」
「おんみょーじゅつじゃないのかや?」
各人から各々疑問が飛んでくる。
私はふふんと笑って説明を始めた。
「陰陽術研究所じゃ何調べてるかすぐわかっちゃうじゃない。
今の尾張が陰陽術研究してるってわかったら他も真似するよ?」
「それは、そうかもな」
「だから、パッと聞いてなじみのない名前でひそかに研究するの。
まずは涼風様の術ね。
あの符に何が書いてあるのかを調べてほしいです」
「符の、中身であるか?
吾輩は家伝の符をそのまま書き記しているだけであるのだが」
「あの術はですね、おそらく「風を起こす」とか「室温を変更する」とか「どこまでを範囲にする」とかもろもろの事が書かれていて、イナリちゃん曰くの「気」を流すことでそれが書かれたように実行されるようなものなんじゃないかと、私はそう思ったのです。
それらの解読というか、分解というか、とにかくそういう事を涼風様を中心にやってほしいなと思いまして」
「この符にどのような意味が書かれているか調べよ、と。なるほど」
「きちょーはなかなかするどいの!
さすがわらわが見込んだ女子なのじゃ!」
そうでしょそうでしょ!褒めていいんだよ!
「待て待て、勝手に決めるな。
涼風殿はしばらく女子大学寮の講師として遇すると決めただろ」
「しばらくは秘密でいいの!
あっすごい!秘密研究所とかなんかワクワクする!」
「おめえがそこまで興奮すんだからなんかすごい事なのか?
俺にゃただ部屋が涼しくなったらなんなんだ、としか思えねえが」
魔法や陰陽術に興味がある信長にも、涼風様の術の可能性がわからないようだ。
いやー、うまくすればとんでもないもの作れるかもしれないよ!
なので私は思いついた構想をぶっちゃける。
「もちろん!いい、ノッブ?部屋を涼しくするってすごい事だよ?
さっき私が術動かしちゃったとき霜が降りるほど冷えたじゃん?」
「ああ、すごいとは思うが部屋を涼しくしたからって……」
「ノッブ、涼しいと食べ物が腐りにくいって知ってる?」
「あ?そんなもん当たり前……」
きょとんとした顔のノッブは、何かに気付いてハッとする。
分かったようだね!さすがノッブ!しゅき♡
「おいおいおい、帰蝶お前、まさか……」
「そう!食べ物を冷やして長持ちさせる蔵とか箱とか作れるかもしれない!
箱に書いても術が動くのかとか調べないと!
それに、飢えを減らせるかもしれない!」
冷蔵庫とか!冷凍庫とかね!遠くまで運べるようになるはず!
おいしいものもたくさん作れるようになるよ!
すごい!あきらめてたけどアイス作れるかも!
あっ牛がいないんだった!シャーベットならいけるかな?
研究が成功したら作りたいお菓子を考えてニヤニヤしてると、口元に指をあててなにやら考えてたイナリちゃんがポンと手を叩いて重要な事を言う。
「思い出したのじゃ!きちんと書けばうごくぞよ。
せーめーが氷を作る箱を作っておったのを覚えておる」
「うおおマジでイナリちゃん!?ほら!これこれ!こういうの作れば!」
何という僥倖!先行事例があるならそれは「できる」ってことだ!
どうやるか?知らないけど。
イナリちゃんも覚えてないという。やっぱりポンコツ神様なのでは?
まあいいや、それを調べるための研究所なんだよ!
「兵站も、商いも変わるな……涼風殿、頼めるか?」
「吾輩にできるかわからぬが……安倍晴明公の術を復古させるとは名誉ある役目であるな!やってみせるのである!」
おお、涼風様も乗り気である!
名誉もお金も得られる良い仕事だから、乗らない手はないんだろうね。
ああ、それとこれも言わなきゃ!
「えーと、研究所は魔導研究所とするように、イナリちゃんが言う「気」も「魔力」と呼びたいんだけど、どうかな?」
「えー?「気」でいいのじゃ」
「文字数少ないのは良いんだけど、何となく想像つくでしょ「気」だと。あえて「魔力」と言う事で……」
「秘匿するのか」
「そうだよノッブ。
これは経済握る事と同じくらい大事。
織田家の優位性を確立するためにね」
「魔力に魔導研究所であるか。
字面を考えると邪悪な感じもせぬではないが、なぜであるか?」
涼風様が当然の疑問を投げてくる。
うぐぐどうしよう考えてなかった。
うーんと、うーんと。
「えーと、その、魔物が現れた時から使えるようになった魔の力を、良い方向に導く、みたいな。そういう感じの、えーとですね」
「今考えたな」
「姫様、適当に発言するのはおやめくださいとあれほど……」
うるさいよ二人とも!アドリブにしてはそれっぽい理由でしょ!
うぎぎとうなっているとイナリちゃんと涼風様は納得したようにうなずいている。
ほら!わかる人にはわかるんだよ!
「あやしげじゃが良い名付けかもしれんの。わらわは「気」でよいと思うがきちょーがそうしたいのならそうすればよい。
実際のところ「気」だろうが「魔力」だろうがどちらでも良いのじゃ。
要は術が動けばの」
おお、神様っぽい。この子たまにこういう感じになるよね。
大きくなったらさぞ神々しい美人さんになるんだろうな。
数百年前から幼女の姿らしいしそれがいつになるかは知らないけど。
「とにかく!涼風様はしばらく迷宮に入って小鬼退治に励んでもらいます!そしてレベルアップして魔力増強なのです!」
「わ、吾輩が小鬼を!?れ、れべるあっぷ?いったいなんのことでおじゃる!?」
「あー涼風殿、それは後で俺が説明するよ。すまんな俺の嫁が」
「うぇへへ、俺の嫁だなんて照れちゃうなぁもう。
あっ、涼風様、私も同行しますよ!言い出しっぺですし護衛くらいは余裕です!」
テンションのまましゃべっていると誰かに肩をつかまれる。
すごい握力。痛い。
「痛い痛い、誰よこんなに強くつかんで!我姫……ぞ」
振り向くと、そこにはにっこり微笑む土田御前がいたのだった。
帰蝶ちゃん終了のお知らせ。
本質的にはどうでもいいけど呼び名は無いと困るよね。
今しばらく不定期連載になりそうですが、お目こぼしください。
よろしければ感想等お待ちしております。




