第37話「投げ銭機能実装マダー?」
日曜日なので第37話。
大体隔日投稿になりそうです。
結局イナリちゃんの魔法については諦めるしかなさそうで、私はすっかり意気消沈している。
「むう、きちょーはぶきっちょじゃのう。わらわの術を覚えて鬼などぱぱーっとやっつけてしまえば楽なのに」
そんならイナリちゃんがやってよう、とも思ったが神様はあまり戦に関わっていけないという掟があるそうで、できるのは術や技を伝授する程度の事なんだそうだ。
掟を破るとどうなるの?と聞いたら頭の上のかわいい狐耳の上で掌をパッと広げて
「ボンっとなるそうじゃ」
と言う。
なんだよボンって。
とにかくあんまりよくないことではありそうなので、イナリちゃんに鬼退治を頼むのはやめとこうと思った。
自己防衛はいいっぽいけどね。
そもそもイナリちゃんは神様だけど体力は見た目通りの幼女なので、おっかない戦場に出すなんてもってのほかだ。
子供は平和なお庭でちょうちょを追っかけたりおままごとで遊ぶような優しい世界で生きるべきだ。
イナリちゃんはロリババアなので子供枠に入れていいのかはわからんけども。
出来ないものはしょうがない。
せっかくの休日なのでイナリちゃんと二人で「なにもしない」をすることにした。
割と綺麗な庭を眺めながら縁側でお団子を食べる。
イナリちゃんはお団子がお気に入りだ。
熱田の迷宮でドロップした砂糖と小豆を使ったあんころ餅を作ってあげたら大層気に入ったようで、ここ数日は私の顔を見るたびに作ってくりゃれとおねだりされている。
まだそんなに数がないんでそのうちね、と断るのももう慣れてきた。
しっかし我ながらおいしいなこのあんころ餅。特に小豆がおいしい。
なんか前世で食べたあんこと比べても遜色ない。
……これ、植えたら増やせたりしないかな。
信長に頼んで試しに植えてもらおうか。
砂糖は加工後の上白糖の形で出るけど、お米や小麦はなんか種もみ交じりのすげえ雑な感じで出たそうだし、迷宮産作物を外で増やすのは全然ありかもしれない。
そうすれば前世並とは言わないまでもかなり近いところまでおいしいご飯を作れるかも。
おめーに料理なんかできんのかって?
できらぁ!
前世で脱オタが流行った時期にオタ趣味の代わりに料理に嵌った時期があったのだ。
いろいろ作ったよ、香辛料からカレーはもちろん、自作の酵母でパン作ったり醤油作ったり、作り置きしておいたぶどうジュースが何故か謎の発酵したり……友達に呑まそうとしたら税務署とか警察とか来るからすぐ捨てろと言われて慌てて捨てたのも今となっては良い思い出。
いやー凝り性って嫌だね。食べる人がほぼ私だけだったんで太ってしまって大変だった。
という訳で食材があれば大体のもんは作れる自信がある。
おいしいかどうかはわかんないけどね。
自分ではおいしいと思うよ?
当たり前じゃんなんで自分で食べるのにおいしくないもの作るのさ。
人に食べさせたことがあんまりないからなぁ……
あ、でも信長に食べてもらって
「うまい!さすが俺の嫁だぜ(だぜ……だぜ……だぜ……←残響音)」
とかいわれたらぁー!
いやあまいっちゃいますねえ♡
うへへ、あんなイケメンが私の旦那様♡だなんて!
マジかよすげえな戦国時代!うへへ、うへへへ
「きちょーはまたろくでもない事かんがえてそうじゃのう」
「イナリ様、姫様は大体いつもこんな感じなので慣れると楽ですよ」
「だいぶ慣れてきたのじゃ」
おさきとイナリちゃんに辛辣に評価されるのもまあ別に良い。
今日は休日なのだから。
魔物もダンジョンも今日は考えるのはやめたのだ。
ぴーひょろろーと空を舞う鳥を眺めながらぼーっとしていると、どたどたと足音を立てて信長が来た。
久助も一緒だ。熱田から来るのに思ったよりかかったね。
「帰蝶、お前今日は休養と聞いたがだらけすぎじゃねえか?」
「んー、でもお義母さまの特訓が厳しくてねえ。もう体バッキバキなのです。ごめんけど今日は休ませてぇ」
私は崩した姿勢のまま答える。
「そうは言ってもな、久助にニンジャ?だったか?あの話を聞かせてやってくれんか?俺の説明じゃいまいち要領を得なくてな」
あーそうだった。ざっくりした話しかしてなかったね。
ちょっと体がしんどいけど、ひと頑張りしますか!!
私の私室で話すのもちと問題がある、という事で信長の私室に行くことになった。
お姫様は旦那様以外の男を部屋に入れるのはだめなんだよ。
これくらいの常識は私にだってあるのよ。
そんなわけで信長の私室で私と信長、久助とおさきとイナリちゃんは私の作った(というか一度作ったあと料理人にレシピを教えた)あんころ餅をほおばっている。
まずは一息、という事だ。
信長は幸せそうに食べてくれている。
「ああ、うまいなこれ!帰蝶、これお前が作ったのか?」
「うん!せっかくダンジョンから小豆とお砂糖が出たからね。イナリちゃんお団子食べたいって言ってたし。こう見えて前世ではいっぱいお料理していたのです!」
えっへんと胸を張ると皆がほほうと言う。
なんだね意外かね?もっと褒めてくれてもいいのよ!
そう思っていると信長が言ってくれた。
「さすがだ帰蝶!これからもうまいもの作ってくれよ!」
「ひゃ、ひゃい♡……うへへぇ」
フヒッ、信長にほめられちゃったぁ!
ニヤニヤしていると久助も言う。
「小豆がこれほど美味いものだとは知りませんでしたなぁ。私の里は貧しかったのであまり食べたことがありませんでしたが」
「久助って甲賀の出だよね?
あんまり豊かじゃないって聞いたことあるけど……
あ、ごめん!そういうつもりじゃなくて……」
うむう。余計な事をぽこぽこ口走るこの口がにくい。
どうして思ったことすぐ言っちゃうのかなぁ。
「姫様、甲賀が貧しいのは事実ですのでお気になさらず。
……なにやら良い仕事の案もお持ちのようですし、聞かせていただけますか?」
久助はニヤニヤした笑みを浮かべながら、目の奥は笑ってない。
うかつな事言ったら影分身で私を囲んでぐるぐる回って私の気分を悪くする拷問とかしてきそう。
私は居住まいを正して話し始めた。
「ニンジャ部隊の必要性はノッブに話してるし、そこは久助も知ってると思っていいのかな?」
久助は頷く。
やっぱり信長が話してくれてはいるみたいだ。
「そういう訳で、久助はニンジャ部隊の隊長、お頭っていうのかな?そういうものになってほしい。久助の技は絶対使えると思うんだ」
「それで、魔境へ忍び働きをせよと……姫様は我らに死ねと仰せで?」
剣呑な目で見られる。
うぐぐ、誤解だ。だからそんな目で見ないでほしい。
「違います。ニンジャ部隊の目的は「生きて情報を持ち帰る事」
そのためには魔境で見つからず、ひそかに忍び込む必要がある。戦うなんてもっての他。
戦うにしても、邪魔な魔物を最小限の手間で素早く静かに殺す必要がある」
「……ほう」
「久助は先ほど「死ねと言ってるのか」と言いましたね。
逆です。
あなたとあなたの鍛える部下たちは「絶対に死んではならない」のです。
魔境に潜入して、どんな魔物が、どれだけ、どこにいるのか。
これを見て、なんとしてでも私たちに知らせてもらう。これが主な任務です」
「……」
「同時に、魔境に潜入するあなたたちを援護する戦闘兵、兵糧や情報の取りまとめをする後方要員、そういった者たちもニンジャ部隊には必要です。
戦闘兵はいざとなったら魔物と戦ってでもあなたたちを逃がす時間を稼ぐ者たち、そして後方要員は魔境のあなたたちが飢えないようにし、体を休ませる拠点を構築し、あなたたちが得た情報を直ちに尾張に届けるのが役目」
「……忍びがすでにやっている事ですな」
「それを織田家が全力で構築すると言っているのです」
「……」
久助が考え込んでいる。
非常に危険な任務だ。考える時間は必要だろう。
私たちの話を聞いていた信長が言う。
「久助。織田は帰蝶の案に理を見た。……受けてくれねえか?」
久助ははぁ、とため息をついて話し始めた。
「受けるも何も、すでに甲賀の知己に声をかけております。
中には京に潜って帰ってきた者もおりまする。
給金は弾むと勝手に言ってしまいましたが、それは構わないのですよね?」
ニヤニヤとした笑みだ。
信長もニヤリと笑って答える。
「ああ任せとけ。少なくとも士分と領地を用意してやる」
「ほほう!それは剛毅な!卑しい素っ破でございますぞ?」
「馬鹿言うな。こんな意味わかんねえ世の中で素っ破も大名もあるもんかよ。
使えるもんは使うしそのためなら織田は褒美を惜しまん、というだけだぜ」
「はっはっは、いやあさすが三郎殿!やはりあなたに付いて正解でしたな!」
「だから言っただろ?後悔はさせねえって」
「いやいや鬼の群れに飛び込む事になったときはさすがに後悔しましたぞ!」
「あーいや、それはすまん!だが、案外楽しかったろ?」
「クククク……それはもう!」
あわわ待って。待って待って。
ほえーエモすぎる。男の友情だぁ♡
これいくら払えばいいんですかね?
はー尊い。尊みが深すぎてヤバい。
突如眼前で始まった激萌え男の友情シーンに私は圧倒されている。
私があまりの尊みに震えていると口の周りをあんこでべたべたにしたイナリちゃんが言い出した。
「はなしを聞くに、きちょーのいうニンジャの技が必要なのじゃな?ならば鬼太郎に技を教えてもらうと良いのじゃ!」
久助はニヤニヤしながらも驚いたような声を出す。
「ほう!あの小鬼の技を教えてもらえるので?」
「うむ!鬼太郎ならば誰にも見つからぬ技は得意中の得意なのじゃ!わらわが神域におる時も時々外に出ていって何事もなく戻っておったし、きゅーすけもあやつを見つけられなかったようじゃしの!」
「それは願ってもないこと。正直あの小鬼の技を盗もうにもどうにもなりませなんだ。ご教示願えるならば魔境への潜入も叶いましょう」
うへえさすが滝川一益、向上心旺盛だなぁ。
あれ、でも糞ゴブリンの言葉がわかるのって私かイナリちゃんだけだし技を教わるにしてもどうやって……ああ、これって!!
「では!私とイナリちゃんが熱田に戻る必要があるよね!鬼太郎の言葉がわかるの私たちだけだし!!」
そうだ!大手を振って熱田にもどる口実にできる!
もう厳しい姫ムーブ修行は嫌でござる!!
土田御前が嫌いなわけじゃないよ?ほんとだよ!?
「いやーしょうがないよね。尾張と日ノ本の未来がかかった大事な訓練だもの。私の特訓ができなくてもそれは大事の前の小事と言うもの。私が熱田に行くのはしょうがないことなのです!」
「きちょーもいっしょに鬼太郎に修行を付けてもらうのじゃ。そのほうが安心なのじゃ」
土田御前から逃れられるならそれくらいやるよ!
私はブンブン首を縦に振る。
おさきはため息をつくし久助はニヤニヤしてる。
信長は、何かひどく言いにくそうに
「帰蝶、そのだな。今熱田で女子を迷宮で鍛錬するための屋敷を作ろうとしてるんだ」
朗報!私の案がどんどん形になってきている!
「それすごい!熱田もどんどん復興しそうだね、イナリちゃん!」
「そうじゃのう。またにぎやかになってくれるとよいのじゃが」
うふふん!よーしそのうち復興した熱田で内政チートするぞ!
まずはあんこスイーツを広めるんだ!!
あっ迷宮産作物を栽培してみる案も信長に提案しなきゃ!
夢が広がるなあ!!
「それで、その屋敷には母さんが詰めることになってる。
今日ははその視察に行ってるんだよ母さん」
「えっ」
私は動きを止め、言葉を反芻する。
逃げられない?
土田御前も熱田にくる?
あばばばばばばば
「おお、おはるも熱田にくるのかや?おいちも来てくれると良いのう!」
イナリちゃんがのほほんと言う。
幼女たちが楽しそうで何よりだよ!!
畜生!なんて時代だ!!
ああでもこうなるのは既定路線だった!!
だけど、だけどもね!
姫ムーブ特訓は巡り、終わらないものらしい。
且ノ<こっち来いよ!
最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回もよろしくね。




