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第30話「ほっとくとあぶない」

3月最初の月曜日なので第30話です。



「クハハハハハ……愚かだな人間どもよ。

よくぞ忌々しき熱田神に封印されし我、大妖イナリを解き放ってくれたものよ!

敬意をもってあの世に送ってくれるわ!ワッハッハッハ!」


謎の神社を出た途端イナリちゃんがこんな事言い出してボス戦が始まるようなこともなく、謎の神社(めんどくさいから神域とか呼ぶことにする)をイナリちゃんとお手々つないであっさり出た。

鬼太郎おにたろう


「ギャッ」


と一声鳴いてお見送り。

ワイがおらんとここ汚くなるから、掃除しとくわ。たまにかえって来いよイナリさま、だと。

なんかあいつの言ってることがエセ関西弁に聞こえるんだけど、イナリちゃんなんかした?


「わらわなにもしらないもん。幼女だからわからんのじゃ」


絶対なんかやっただろ、コイツ。

一応神様だからあまり言わんでおいてやるとする。

私はお姉さんだからね。寛容さもオカン級と言ってくれていいよ。

そんな事を考えているとおさきと信長ノッブがため息をつく。

なんだよう。言いたいことがあるならはっきり言いたまえよ。


にしても、来たときは鬼太郎(糞ゴブリン)と信長ノッブに手を引かれて入って、出るときは狐耳もふもふおしっぽ幼女と出ることになってるんだからつくづくこの世は不思議な事ばかりだ。

こういうのばっかりなら全然いいんだけどなあ。

現実はわけわからん魔物と血みどろの争いをするある意味、正しく戦国時代だ。

やってるのは生存競争なんだが、よく考えると史実の戦国時代もある種の生存競争か。

いや、戦に負けても頭からバリバリおいしくいただかれたりはしないので全然種類違うや。

何でもいいんだけども、ファンタジー要素はふわっとにおわせる程度にしていただきたい。


来る時と同じく霧を抜けると、果たしてそこは地下へ向かう階段前広間。

昨日倒した大鬼がたむろしてる。

やっぱり無限湧きだね、ダンジョンって。

かがり火で一休みしたらまた再配置されるような感じと考えた方が良いのかもしれない。

最近、迷宮に入ると視界の中央でクソでか明朝体で


「熱田迷宮第一層」


とか出る幻を見るような気がしないでもない。

人間性とか啓蒙とかそういう何かが上がっているんだろうか。


大鬼がこちらを見て向かってくるので信長ノッブが例の大太刀を構える。

大太刀って言うか大ナタに見えなくもないそれを信長ノッブが一閃すると、大鬼は上半身と下半身が泣き別れてギュルギュル回転しながら吹っ飛んでいき、壁にぶつかる寸前でふっと消えた。

何度か見たけどホントすごい。

私も強くなった気がしているけども、あんなことできる気がしない。

信長ノッブの持ってる大太刀、私は持ち上げることもできないしね。

慶次が持ち上げて素振りできるみたいだけども、槍の方が好きなんだそうな。


「ほほぉー、さっすがノッブは強いのじゃ!大鬼も一撃なのじゃ!」


キャッキャと喜ぶイナリちゃん。

幼女にあんな凄惨な現場を見せてよいものかと思ったけども、さすが長いこと生きている幼女(何を言っているのかわかんねーと思うが(略) )。

これくらい平気の平左のようだ。


「そういえばわらわの術をちゃんと見せておらんかったの。鬼が出たら披露してやろうぞ!」


「えっマジで!みたいみたい!どういうの?エネルギー弾とかギャリック砲とかみたいなのだとうれしい!」


「きちょーはたまにわけわからんこと言うのー。

ここの小鬼程度ならば狐火の術で十分じゃよ」


「ほほー!狐火!〇ラとかファ〇アみたいなものですな!フヒヒ、魔法を見られる!」


「姫様、イナリ様がお許しになったとはいえ少しは取り繕ってくださいませ。姫がしてよい顔ではございませんよ?」


小言を食らいながらイナリちゃんの術(魔法)を見学することになった。

角を曲がってくる際に角に足の小指をぶつけて悶絶している小鬼がいたのでそれがターゲットである。


「とくとみよ!これがわらわの狐火なのじゃ!」


イナリちゃんがぴょこんとたてたかわいい人差し指の先っぽに小さな火が灯る。

ろうそくみたい。


「えっショボッ」


つい口を突いて出る感想。こういうのがいけないのだと、私は思う。

だがイナリちゃんはふふーん、とドヤ顔をして指を振った。

ひょろひょろと小鬼に向かって飛んでいく小さな火。

アレがぶつかったらそりゃあやけどくらいするだろうけども。

足の小指の痛みの方が強いんじゃないだろうか。

なんだか親近感が湧く有様の小鬼を哀れに思っていると、ついに狐火が到達。


ものすごい火柱が上がった。


声も上げることができずに火に包まれる小鬼。

数秒立ち上がった火柱が消えたとき、小鬼は影も形もなかった。

跡には小袋。あの大きさだとお米か麦かな。

そんな感想を浮かべながら唖然と眺める。


「どうじゃ?これがわらわの狐火じゃ。すごいじゃろ?」


言葉が出ない。

あれだ。

大魔王がやったやつ!


「今のはメラ〇ーマではない……メ〇だ……」


で有名なあれ!!

感動のあまり大声を上げようとすると


「すっげえええ!!かっけええええ!!何今の!なにいまの!!」


お、おう。小学生男子(犬千代君。後の前田利家である)が大いに食いついた。

イナリちゃんに詰め寄って俺にも使えんの?教えて教えて!とわめいている。

いやあ、周りに大騒ぎしてる人がいると一周回って落ち着くもんだね。


「犬千代くん、落ち着いて、落ち着いて。今度教えてもらう約束なんだから」


「そ、そうじゃよ。そんなに詰め寄られるとわらわ、びっくりするのじゃ……」


お、イナリちゃんが借りてきた猫(この場合きつね?)のようにおとなしい。

ロリババアのわりに男の子慣れはあんまりしていないようだ。

ますます親近感が湧く。


「すげえ術だな……これが使える兵が育てば戦が変わるぜ……」


信長ノッブも茫然としてつぶやく。

いえ、あなたの身体能力も十分戦を変えるレベルです。

うーん、こんなのそこらで使われたらかなわないなあ。

なんかうまいこと制御する方法がないかなあ。

こう、魔法無効結界とか。

師弟制にしないと教えないとか……

いやいや、そもそもまず使えるかどうかがキモだ。

早く帰って魔法講座を開いてもらおうそうしよう!!



迷宮の外に出た。

あの後はあっさりしたものだった。先行する久助と慶次が小鬼をばっさばっさ。

イナリの護衛についた犬千代君(あんまりイナリに構おうとするのでめんどくさくなった信長ノッブがそういう事にした)は落ち着きのない小学生男子丸出しでイナリちゃんに絡む。

イナリちゃんは慣れぬ小学生男子への対応でタジタジだった。

涙目で「きちょー……」と見てくるのは可愛かった。

私はロリコンではないのだけれど。


とにかく迷宮の外に出ると、もう夕方だった。

本当にこの時間帯の熱田は物悲しいし、お化けが出そうで怖い――いや、ほんとうに出るかもしれないのだけれども。

いやほんとに鬼が出るかもなんだけれども。

でも、私の隣に立つイナリちゃんは違うものを見ている。


外に出る直前、私はイナリちゃんに何か声をかけようと思った。

出来なかった。

何を言ったらいいのかわからなかったのだ。

私は美濃からきただけの余所者で、在りし日の熱田の事は何も知らない。

前世で訪れた熱田は結構な都会だったし、熱田神宮は静謐できれいだったけど、戦国時代の熱田の事は、資料の中でしか知らない。

でも確かにここには人の生活があって。

多くの人が泣いたり笑ったりしていたのだ。

それが、奪われた。

意味の分からないファンタジー化という災害によって。

もうここで泣いたり笑ったりしていた人たちはいない。

在りし日は、失われてしまった。


イナリちゃんは黙って廃墟となった熱田神宮を見ている。

彼女は何を思っているのだろう。

聞くのはどうかと思う。

彼女の中で、そっとしまっておく方が今はいい。

そんな気がした。


しばらく黙っていたイナリちゃんはおもむろに柏手を打ち、

深く頭を下げた。

彼女の足元に数滴の水が落ちる。

私も信長ノッブも、みんなそれを見なかったことにしたのだった。


そして顔を上げたイナリちゃんはへにゃりと笑うと、

「またせたの!はようきちょーたちのおうちへ案内するのじゃ!わらわはお腹がすいたぞよ!」


と元気に言った。

神様もお腹減るんだねーと言うと


「当たり前じゃ!わらわはいまだ体を持つ身。お腹も減るし眠くもなるのじゃ!」


えっへんと言うイナリちゃん。

いや未熟者だってドヤ顔で言う事じゃないでしょ、と思ったけれど。

私は大人なので黙っておいた。可愛かったし。

私はロリコンではない。



陣屋についたらなんだか騒がしい。

門番が言うには那古野から急使が来ているそうな。

何かあったのかな?

と思ってたら鎧兜のおっちゃんが信長ノッブの前に膝をついて


「京より山科内蔵頭様が下向され、三郎さまとの面談を求められておられるとのこと!

至急那古野城へ戻られよとの弾正忠さま(信秀パパノッブ)の仰せでございます!」


と告げる。

へえ、京からお公家様が。

って山科内蔵頭?山科言継じゃん!!

うひゃあ戦国の有名公家じゃん!

会ってみたいなあ!無理かなあ。


「あい分かった。では明朝出立することとする!」


「わかりました。わたくしは熱田に残り……」


姫ムーブが出る。陣屋の人前では取り繕えるから大丈夫だよ!

残ってイナリちゃんから魔法を習うんだ!

山科言継にはあってみたいけど、魔法の方が重要だからね!

そう思っていると、きょとんとした信長ノッブ


「何を言っている?俺がいない熱田にお前を置いとけるわけねえだろ危なっかしい」


と言ってのける。

危なっかしいって何よ。

いやまあ自覚がないわけでもないけども。

とか思って少しむくれていると


「お前は俺の隣に立つんだろ?那古野でも一緒にいてもらうぜ」


と耳元でささやかれた。

そんな事、そんなことされたらわたしは、わたしは!!


「いきましゅううう♡」


腰砕けになってうんうん頷いた。我ながらちょろすぎる。




「きちょーはちょろいのう」


うるさいよイナリちゃん!!

自分で言うのはいいけど人に言われるとムカつくことってあると思うの!


なんやかんやで30話まで来ました。


いつもありがとうございます。

よろしければブクマ、感想、ポイントなんでもよいのでリアクションをいただけると作者がもっと頑張ろうとします。

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