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第28話「もっと刻んでこい」

金曜日なので第28話です。


覗いてくれてありがとうございます。

「ちょ、まってまって。ノッブはあの子のいう事わかるの?みんなも?」


後ろで武器を構えて臨戦態勢の皆を振り返り聞くと、皆緊張した面持ちで頷く。

んー?

ああそっか。あのイナリちゃんは人の言葉が喋れるんだね。

そーかそーか。

上位の魔物?ならそういうのもあるのか。

あれだ、ドラゴンが人語を話すとかそういう感じの。

なるほどなるほど。

そういう事なら私の出番は今はないね。信長ノッブに言われたとおり後ろに引っ込んでおこう。



「人の子らよ。お主らを招いたのは他でもない。わらわなのじゃ!驚いたであろう!」


ばばーんという効果音を出しそうな勢いで胸を張る狐耳幼女。よく見たらもふもふのしっぽも生えている。かわいい。

私がはえー、と眺めていると信長ノッブが質問する。


「イナリと言ったか?お主は何者で、ここは何処だ?何のために俺たちを招いた?」


当然の質問だろう。

しかしイナリちゃんはきょとんとしてゴブリンを見て言う。


「んむ?鬼太郎おにたろう、お主説明しておらんのか?」


「ギャッギャッ」


「なんと!そうであったか?うっかりしていたのじゃあ!」


聞いてねえよ連れて来いって言ったから連れてきただけだよご主人、みたいなことを言うゴブリン。というか鬼太郎おにたろうって名前があんのかアイツ。いろいろと各方面に謝罪が必要になりそうな気がする。

というかイナリちゃん、なんだか残念な気がしてむくむくと親近感が湧いてきたぞ。

是非ともあのもふもふのおしっぽをもふもふさせていただきたい。


「それで、何が目的だ?返答によっては斬る」


「ひうっ・・・お、怒っておるのか?」


剣呑な様子で信長ノッブが言う。

あわわ、得体が知れないとはいえ幼女にそんなおっかない態度はどうかと思うの。

ほら、ビクッとして涙目になっちゃったじゃない。


「の、ノッブ。怖がってるからそれくらいにしてあげて。一応お話はできるみたいだから、ゆっくり聞いてあげよ?ね?」


本心から出た言葉だけどこれはまさに聖女ムーブではないだろうか。

怖くない怖くないとか言って噛みつかれたりもした方がいいんだろうなたぶん。

蒼き衣で金の野原をうんぬんかんぬんとかいう伝説までできるかもしれない。

いやーまいっちゃいますねえ!

打算まみれの私を見て信長ノッブもまあ確かにな、とつぶやいて武器を納めた。

それを見て皆も警戒を解く。


「あー、怖がらせる気はねえんだ。お前が人に悪さをしないって言うなら斬ったりしない」


「そんなつもりはないのじゃ。その、お願いがあって呼んだのじゃ」


びくびくしながら言うイナリちゃん。ゴブリンはあきれたように眺めてる。


「お願い?」


「うむ。わらわをここから連れ出してたも!」


「どういう事?出られないの?」


信長ノッブになんか怯えているので私が話す。

いかついワイルド系イケメンよりも癒し系美少女(諸説あり)の私の方が幼女の相手は良いからね。


「わらわ、伏見の宇迦さまのおつかいで熱田さまに会いに来たのじゃが、急にこの迷宮が口を開けての。

鬼らが出てきたのでここで待っていなさいと言われて待ってたんじゃが。

誰も来ぬので飽きたのじゃ」


「んー・・・どうしようノッブ、情報量多すぎてなんて言っていいのかわかんない」


「奇遇だな帰蝶。俺もそうだ」


「それでな、熱田さまの術でわらわはここから出られんのじゃ。きちょーが連れ出してくれればうれしいのじゃが・・・」


しょんもりと言うイナリちゃん。理解が追い付かないが不憫かわいいことはわかった。

世界は幼女にやさしくあるべきだと思う。

あと、私に連れ出してほしいってのはどういう事だろう。

私のチート能力と関係があるんだろうか?


「この術はわらわをここにとどめるためのものでな?

わらわが認めた者に連れ出してもらえれば出られるのじゃ。

わらわは女子の身でありながら迷宮に入って鍛錬を重ねるきちょーを見て、この者ならば大丈夫であろうと思ったのじゃ!

きちょー、わらわはもう飽きたのじゃ。外に連れてってたも?」


うるうるとした目で懇願するイナリちゃん。

これはいう事を聞きたくなってしまう。

だがこれは私がロリコンだからではない。

断じてそうではない。


「もちろんただでなどとはいわんのじゃ!伏見に帰ったら宇迦さまに頼んで素晴らしい加護を授けてもらえるように頼んであげるのじゃ!

豊穣の女神であらせられる宇迦之御魂神うかのみたまのかみさまのご加護じゃ!

もう飢餓に苦しむことは無くなること請け合いじゃ!」


「ちょちょちょちょ、ちょっとまって!イナリちゃん、ちょっと待ってね!!

・・・みんな、集まって!作戦タイム!!」


「でかした帰蝶!イナリ殿、しばし時間をくれ」


「むう、仕方ないのう。ああ、どうせならば社殿で話そうぞ。境内で立ち話もあるまいに」


「先に行っててもらえるか?俺たちは少し話してから向かおうと思う」


「そうか、ではまっておるぞ・・・鬼太郎おにたろうよ、案内あないはまかせたぞよ」


「ギャッ」


「ちょっと、めんどくせえって何よあんたが連れてきたんでしょうが」


「ギャー」


「ぐぬぬ、また偉そうに・・・」


「きちょーは鬼太郎おにたろうの言葉がわかるのかや?

あー・・・あの術が変な方向に効いたのかもしれんの。すまぬ。」


「えっ?」


「きちょーが危なっかしいので鬼太郎おにたろうに鍛えるよう言ったのじゃ。じゃが鬼太郎おにたろうが斬られてはかわいそうなのでの。わらわの術できちょーが鬼太郎おにたろうに興味を持つようしむけたのじゃ!どうじゃすごいじゃろ!」


「・・・それで私はコイツの言ってることがわかるようになったの?

え、チートじゃなく?」


「ちーと?何のことかはわからんが、わらわの術がきちょーの頭に作用した結果であろ。たまにあるのじゃ。まあ鬼太郎おにたろうの言ってることがわかって便利ではあるからお得というものじゃ!」


「・・・そんなぁ」


「では先に行ってまっておるぞよ~」


軽い調子で社殿に入っていくイナリちゃん。

しっぽが楽し気にふりふり揺れていた。

私はぬか喜びで楽しい気持ちになれないんですけどね!


・・・私はどうやらチート持ちではなかったらしい。

いやある意味チート能力ともいえるけど、ゴブリンの言葉がわかったからなんだっていうんだろう。

ざんねん!聖女帰蝶ちゃんの冒険はおわってしまった!

馬鹿ヤロー!始まってもいねえよ!!

無性に夕日に向かって走って叫びたい気分であった。

でも、この事実は一つの大きな発見をもたらした。


この世界、魔法がある。


私と信長ノッブとおさきは境内で車座に集まって話し合う。

護衛たちは少し離れて警戒してもらう。

おさきは信長ノッブと同じくらい私の事情を知っているのでとりあえず相談役にするのはちょうどいいのだ。脳筋だけど。


「帰蝶、どう思う?」


「どうもこうも、私も頭真っ白だよ。ほんと情報量多すぎ」


「うかのみたまのかみ、と言っていたな。伏見の・・・伏見稲荷か?」


「多分そう。そういえば眷属だって言ってたよね」


「では、あの娘も神という事になりませんか?」


「そうなるよねえおさき・・・はぁ、神格存在がこんなすぐ出て来るなんてほんとどうなってんのこの世界・・・」


「帰蝶の知ってる物語にこういうのはあるのか?」


「うーん、たまにあったかな。こう、現世に顕現している神様が出てきたり」


「あまり参考にならんなあ・・・イナリの言い方では普通に子供のつかいにしか聞こえん」


「もっとよく聞く必要あるよね。あとね、あの子が言ってた中にとても興味を惹かれることがあったの」


「何かありましたか?さきはあまりの事であまり理解が追い付きませんでしたが・・・」


「あの子、「熱田さまの術」って言ってたよね。それに、私を見ていたようにも話してたし、鬼太郎おにたろうに興味を持つような術をかけたって言ってた」


「神の端くれならば千里眼とか使えてもおかしくねえだろ?」


「んー、これ、私の感というか、願望なんだけどね。そういう術、私たちにも使えるかもしれない」


「は?・・・陰陽師や、仙人のようにか?」


「そうそれ!詳しいことはよくわかんないけど、レベルアップの効果ってなんか不思議な力が働いてるように思えるんだよね。

そういう力をなんかうまいこと使って術・・・魔法が使えないかなって!!」


「魔法?」


「物語で人は魔物と戦っていたって話したでしょ。

あれ、肉弾戦だけじゃなくて、そういう不思議な術・・・「魔法」も使って戦う話が多いんだよね。大きな火の玉を飛ばしたり、氷のつぶてを飛ばしたり。

傷を治したり、建物を建てたり!」


「それが本当ならとんでもないな。ぜひ欲しいが・・・」


「イナリちゃんのお願い聞いてあげたら、もしかしたら教えてくれるかも!

ノッブ、私イナリちゃんを連れだしてあげたいな!」


「うーむ、そうか、そうだな!術云々、神云々は抜きにしてもこんなところにあんな幼い娘がいるのはよくねえと俺は思う。出してやれるなら出してやろうか。

伏見までは誰かを使いに出せば何とかなるだろ。」


「さっすがノッブ!幼女にも優しくてしゅてき♡」


「姫様、こういう時こそ姫むうぶの出番ですよ。

相手は神様です。三郎さまの奥方として恥ずかしくないようにせねば。」


「うむむ・・・イナリちゃんなんかポンコツの香りがして親近感沸いてんだよね・・・取り繕えるかな。いややってみよう!!」


「その意気ですよ姫様!」


確かに最近の私は信長ノッブとの気安いやり取りに慣れすぎて姫ムーブがおざなりになっている。ここは遥か上位の神?にも通用する姫ムーブを披露してやろうではないか!



「ギャッ」


もういいかい?茶の準備ができたから早く来なよ、と鬼太郎おにたろうが呼びに来た。

こいつも神?の眷属のようなもんだろうから一応敬意をもって接する必要があるだろうね。


「お待たせして申し訳ありません鬼太郎おにたろうどの。それでは案内あないをよしなにお願いいたしまする」


決まったね。帰蝶ちゃんはやればできる子なのだ。


「ギャッ」


どしたのキメエんだけど、じゃないのよこの糞ゴブリン!!

やっぱコイツ嫌い!!


どんなにショボくても独自能力ならチートと言っていいと思うの(震え声)


今回も最後まで読んでくださりありがとうございます。

よろしければ感想、ブクマ、ポイント等リアクションくださると作者の心の力がとても回復します。


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