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第27話「調子にのるとろくなことがない」

読みに来てくださってありがとうございます。


今日は木曜日なので第27話です。



今私はあのゴブリンが私の袖を引かれている。

いつもならこいつが現れるのは帰る頃なんだけど、今日は入って少し進んだら現れた。

護衛の皆と信長ノッブは武器を構えて包囲。

いつでも切りかかれるような体制だ。

ただ私がいるんですぐに飛び掛かれない。

でもゴブリンはそんなのお構いなしに言う。


「ギャッ」


「いやそんなん急に言われても。なんであんたについてかなきゃならないのよ」


「ギャッギャッ」


「ご主人が呼んでる?誰よそいつ。どうせろくでもない目に合わせる気でしょ!そう、薄い本みたいに!」


「ギャァ~」


「いいから来いって、あんたね、さんざん私をバカにしといてそんなホイホイ言う事聞くわけないじゃないの」


「待て待て待て待て!!帰蝶!何を言っているんだ!?」


信長ノッブが私とゴブリンとの間に割って入る。

さすが信長ノッブ!言ってやって言ってやって!!


「ねえ?私が簡単についていくと思われるのは心外だよね。私はノッブの奥さんなのに。うへへ」


「そうじゃない!帰蝶、そいつが何言ってるのかわかるのか!?」


「え?大体わかるよね。ねぇ?」


「ギャッ」


ゴブリンに同意を求めるとこくりと頷く。

ほら、と言わんばかりに信長ノッブを見ると唖然とした顔でこっちを見ている。

あれぇ?


「あー、濃姫さま。俺にはそいつがギャーギャー言ってるようにしか聞こえん」


「姫様小鬼の言ってることわかんの?ちょーかっけえ」


「・・・姫様は誠に不思議な方ですなぁ・・・」


「ちょ、ちょっと待って!ゴブリンの言葉がわかるの私だけなの!?

さんざん私をバカにした事言ってるじゃない!」


「姫様・・・さきは少し厳しくしすぎたのでしょうか・・・美濃の殿とお方様に合わす顔がございません・・・」


マジかよ!?

私はてっきりみんなわかってるもんだと・・・

それでコイツを師匠ポジに据え置こうとしてたんかと思ってたのに。

コイツ、「鈍い」だの「目が見えてねえの?」だの「強く頭を打ったんだな・・・かわいそうに・・・」とかすげえ煽ってきてたじゃん!


「あー、帰蝶。何が何やらわからんが、そいつと話せるのはお前だけのようだ。んで、そいつは何て言ってるんだ?」


「え、あーなんかご主人が呼んでるからついて来いって。」


「帰蝶さ、お前それ聞いてなんかおかしいと思わねえの?」


「んー?」


「今まで話せる魔物なんて見たことも聞いたこともないだろ。」


「あっ」


「ギャッ」


うっせえわ!何が「これが・・・ポンコツ・・・」だ・・・!?

あ、ホントだ!おかしい!

「ギャ」としか聞こえないのに意味が分かる!!

怖い何これ!?

なんで今まで気づかなかったの!?

全然違和感感じなかった!


・・・いや待てよ。

ワタシ転生者。物語の主人公だったらなんかのチートがあるハズ!

まさか、私のチート能力は「魔物の言葉がわかる程度の能力」なの!?

これは、始まってしまったのだろうか。

善良な魔物を従えてこの戦国を良い世界に変えていく聖女帰蝶ちゃんの物語が!!

そうか、そういう事だったのか!


「ノッブ・・・どうやらついに物語は始まってしまったようですわ。」


「は?」


「聖女たる私の重厚なストーリーが!喜んでノッブ!私がいれば良い魔物はみんな味方にできるってことよ!」


「いきなり何言ってんのお前!?」


「ギャッギャッ」


いいから早く行こうぜ、じゃないのよ。

大事なところなんだから少し黙ってて!


「ふっふっふ。ノッブ、まだ話していなかったことがあるんです。前世で読んだ物語の中では、私のような転生者は特別な能力を持っているものなのです!!」


「バッ・・・」


「ひ、姫様!それはまだ皆には内緒の・・・!」


「前世?」


「転生者?」


「姫様特別なのーりょくあんの?すげえ!見せてみせて!あっ見せてください!」


やっべぇ。

テンション上がって護衛の皆に転生者とかぶっちゃけてしまった。

信長ノッブはもう知らんと言わんばかりに投げやりに言った。


「まあ、そういう事なんだが。お前らこれも口外法度な。しゃべったら殺す。家ごと焼き討ちするから。あとな帰蝶?」


ヒエッ!そんな怖い目で見ないで!

「もうコイツ押し込めた方がいいんじゃないかな」って目はやめて!

ビビり散らかしているとノッブの手が顔に伸びて両ほほをつまむ。


「お ま え は!!どうしてそう迂闊なんだ!どれだけ苦心してお前の情報が漏れないようにしていると思っている!!このうつけめ!」


「いひゃいいひゃい!ひゅみまひぇん!ひゃのひふにゃっへひまっへえ!!」


DV!DVですよ!!

帰蝶ちゃんお家にかえりゅう!!


「三郎さま、さすがにその辺にしてくださいませ!わたくしが厳しく姫むうぶ特訓、いえ調教を行いますから!」


調教って何さ!?鞭で叩かれるの?!痛いのは勘弁してつかあさい!

ゴブリンは爆笑している。ギャーギャーとしか聞こえないのに笑ってるのがわかる。

ホントになんだようコレ!

私のチート能力としても理不尽だよー!!


わんわん泣いておさきに抱き着いた私は落ち着くまで5分ほど泣きまくったのだった。

早く泣き止んで行くぞー、じゃないんだよゴブリン!!

泣いてる女の子がいるんですよ!!

もっと優しくして!

優しい世界がすきなのぉ!!



「うう・・・ごめんノッブ。調子に乗りました」


「はぁ・・・もういい。俺もカッとなって悪かったな。もう痛くないか?」


「うん。なんかレベルアップのおかげか思ったより早く痛くなくなった。すごいねレベルアップ。こんなことで実感したくなかったけど」


「自業自得というものです姫様」


「ギャッ」


「うんうんじゃないよ!あんたのせいなのよ!!」


「ギャッ」


「あー待て待て。帰蝶、結局どういうことだ。改めて聞くぞ。こいつは何て言ってる?」


また突っかかりそうになる私を止めて信長ノッブが聞いてくる。

よく考えたらなんでこんなにムカつくんだろう。

私は内弁慶でコミュ障気味の限界オタクだったはず。

いくらゴブリンでも初手で殴りかかるような好戦的な人間じゃない・・・ないよね?

どうしよういまいち自信がない。

私も結構野蛮な戦国マインドに染まってる?

マムシの娘だからなあ・・・

血は争えないものなんだろうかとうんうんうなってる私に信長ノッブが怪訝そうに続ける。


「帰蝶、考え事は後にしてくれ。こ い つ は 何 て 言 っ て る ん だ ?」


「ひゃい!ええと、こいつのご主人が呼んでるから来てほしいんだって」


「ギャッ」


「みんな来たかったら来ていいよって」


「そうか・・・うーむ」


腕組みして考える信長ノッブもかっこいいなあ。

のほほんとしているとおさきが手を挙げて発言する。


「その、危険はないのですか?この小鬼の主人というからには大鬼なのでは?」


当然の疑問だ。迷宮で意思がある魔物を見るのは初めて。

しかもレベルアップした(暫定)スーパー帰蝶ちゃんを軽々あしらうこのゴブリンのご主人?

とっても危ない気がする。

でもなんか大丈夫な気もする。

何の根拠もないけど警戒心が沸かないのだ。

これは、やっぱり友好的な魔物がチート能力をもった帰蝶ちゃんと仲良くしたくてお呼び出ししようとしているのではないだろうか?


「うーん、特に理由はないんだけど、大丈夫な気がするのよ。多分私のチート能力のおかげだと思う」


「なんですかちーと能力って。姫様はとても残念ですがなにか秀でた能力があるとは知りませんでした」


「こう、隠された能力が覚醒したのよ!」


「ギャッ」


「うっさいわね!そう考えた方が辻褄があうでしょうが!」


「あー、分かった!一つ聞かせろ小鬼!帰蝶が行かねばならぬのか?」


「ギャッ」


「えー・・・」


「何と?」


「私じゃないとダメだって。護衛がついてくるのはいいらしいけど。」


「・・・仕方ない。行くか。虎穴に入らざれば虎子を得ずとも言うしな。だが小鬼!貴様の主とやらが人に害なす者であればこの俺が斬る!覚えておけ!!」


「ギャッギャッ」


「大丈夫だと思うよってさ」


「何だか気が抜けるなあ・・・なんなんだこいつ・・・」


そんなこんなでゴブリンは私の手を引いて迷宮の奥に歩き始めた。

不思議とほかの小鬼の姿を見ない。

ちなみにゴブリンは私の左手を引いている。

反対側には信長ノッブ


「おい小鬼!こいつは俺の嫁だぞ!なれなれしく触れるな!!」


と怒った信長ノッブが右手をつかんで離さないからだ。

うえへへへ。愛されててすまない。

帰蝶ちゃん今日ほど転生して良かったと思ったことないですハイ。

信長ノッブと手つなぎデート気分である。

左手をゴブリンがつかんでなければもっと最高なんだけどね!!

そうしてちょっと舞い上がりそうな気分で歩いていると、なんだかあたりに霧がかかってきた。


「・・・これは、霧か?迷宮の中だぞここは」


信長ノッブが警戒しながらきょろきょろする。


「ギャッ」


ゴブリンが言うには心配いらないらしい。

でもみんな武器を構えて何が出てきても良いように警戒を強める。

私?私は両手をとられてて何にもできないよ。

右手の信長ノッブの手のぬくもりに集中しているのだ。

霧が濃くて画面が見えない気もするが些細な事なのだ。



いよいよ霧が濃くなって、もうどこを歩いてるかもよくわからない。

いや迷宮の中だってことはわかるんだけども。

しかしゴブリンの主人、ねえ。

ゴブリンの言う通りならば迷宮の中に知的な何かがいるって事になる。

順当に考えれば迷宮の主・・・大ボス的な何かかも。

うーん、でもわざわざ迎えを寄こすもんだろうか。

もっと最奥でデデンと構えてそうなもんじゃないのかな。

私に接触して何をしたいんだろう。

いや、それは今はどうでもいい。

・・・もしかしたら、迷宮の仕様を詳しく教えてもらえるかもしれない。

それならナーロッパ化計画が大きく進む。

この事態の原因があるなら解決の糸口になるかも。

そして、ゴブリンの主人の言葉がわかるのはおそらく私だけ。

やっぱり私が聖女な感じのストーリーなのでは?

いや聖女かどうかは知らんけど、交渉ができるのが私だけだったら。

うーん、怖いけど、うまいことできたらきっといろいろはかどる感じになるハズ!

よーし帰蝶ちゃんのコミュ力と姫ムーブが真の力を発揮する展開だね!!

頑張っちゃうぞー!!」


「おい帰蝶。どこについてても俺の傍から離れるなよ。あと、おとなしくしてくれよ頼むから」


「ひょわわ、また心の声が!うー、分かったよノッブ。通訳だけ頑張る」


「お前の知恵はそうそうあけっぴろげにするもんじゃねえ。主人とやらがどういう奴かわからねえからさ、今日のところはおとなしく俺の後ろにいてくれ。な?」


「はひぃ・・・ノッブしゅきぃ・・・♡」


「はぁ・・・大丈夫かよ・・・」


などとイチャイチャしていたらいつの間にか霧が晴れて。


私たちはなんか森に囲まれた神社の境内みたいなところに立っている。

左手を引いていたはずのゴブリンはいつの間にかいなくなっていて。

神社の社殿のような建物の前に、頭から狐耳を生やした幼女がふんぞり返って仁王立ちしていた。

ゴブリンは幼女の傍に控えている。


「よう来たの人の子らよ!!」


「・・・よく来たな、人の子らよーって言ってるよ」


私が通訳しなければ!

私のチート能力が輝く時間だコラァ!


「わらわはイナリ!伏見の宇迦さまの眷属であるぞよ!さあ崇めるがよい!!」


「あの子、イナリって言うんだって。伏見のうかさま?の眷属だって。崇めなさいって」


「帰蝶、あれの言ってることはわかるからいちいち言わないでいいぞ」


「えっ」


あれえ?


次回、帰蝶のチート能力が判明する!!こうご期待!!



ここまで読んでいただき感謝に堪えません。

よろしければポイント、ブクマ等リアクションしてくださると作者の心が補強されます(切実)

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