人を集める。紹介の手間賃の話
四軒目が落ち着き始めた頃、博之は皆を集めた。
料理人、給仕、弁当売り。顔ぶれはいつもの者たちやが、話の内容は少し違う。
「今日はな、店のことや」そう前置きしてから、博之は一人ひとりの顔を見渡した。
「これから先、店は増える」「せやから、人が要る」
誰かが小さく息を呑む。
「口入り屋にも話は通しとる」
「せやけどな、それだけやと足らん」
博之は続ける。「町で見かけた子」
「一緒に働いとって、こいつはええなと思う子」
「頭の隅に置いといてくれ」
場が少しざわつく。
「無理に連れてこい言う話やない」
「ただ、うちに合いそうやと思うたら、声かけてくれ」
そして、少し間を置いてから言った。
「その子が入ってな」「半年、きちんと続いたらや」
博之は懐から帳面を出し、指で軽く叩く。
「紹介してくれたもんに、二千文出す」
一瞬、空気が止まった。「……二千?」
「半年続いたら?」給仕の一人が、思わず聞き返す。
博之は頷いた。「半年や」「続かんかったら、なしや」
弁当売りの女たちが顔を見合わせる。
料理人も、腕を組んだまま黙って聞いている。
「ええ話やけどな」「誰でもええわけやないで」
博之の声は低い。「紹介するいうことは、顔を出すいうことや」
「ええ加減な子を連れてきたら、町で恥かくのは自分や」
その言葉に、皆の背筋が少し伸びる。
「せやから、よく見てからでええ」
「この店で働かせたいと思えるか」
「一緒に鍋の前立たせても、弁当持たせても、大丈夫か」
給仕の一人が、小さく笑った。
「責任、重たいですね」博之も少しだけ笑う。「せやな」
「でもな、今ここにおるお前らも、誰かが見て拾ってくれた」
その言葉に、場が静かになる。
「人は、育つ」「育ったら、また次を育てる」
「その輪を、ここで回したい」誰も反対はせえへん。
給仕の一人が、意を決したように言う。
「……あの子、ええかもしれません」
「今の店、給金安うて悩んどる言うてました」
博之は頷くだけや。「話、聞いてみ」「急がんでええ」
集まりが終わる頃には、空気が少し変わっていた。
ただ働く場所やなく、人を見る目を持つ場所になり始めている。
博之は一人、鍋を見ながら思う。
「店が育ついうんは、人が育ついうことやな」
その火は、まだ小さい。
せやけど、確かに広がり始めていた。




