博之と弁当売りの女の子二人との会話
店の裏口。
昼の忙しさが一段落した頃、博之は弁当箱を下ろさせ、二人を前に立った。
「今日はな、ちょっと話がある」
女の子二人は顔を見合わせた。
「今のやり方やとや。二百文出して、
弁当一つ売れたら十文足すやろ」
二人、うなずく。
「これが続いて、仮に百五十日売れたとしたらや。
計算上は……年に十両を超えてしまう」
一人が目を丸くする。
「そんなに、ですか」
「なる」
広雪は首を振った。
「けどな、それはあんたらの腕で売れたんか、言われたら……違う」
少し間を置く。
「正直に言う。今は、うちの弁当が値ごろや。
値も味も、ちょうど噛み合ってる。
置いてても、歩かせても、売れる時期や」
もう一人が、少し身を乗り出した。
「……それで、どうなるんです?」
「このままの銭は、出されへん」
博之ははっきり言った。
「下働きの女の子に年二両払ってる中で、
売り子だけがそれ以上稼ぐのは、筋が違う」
空気が重くなる。
「せやから、給金を改めたい」
二人の表情が硬くなる。
「日当は四十文。それに、一個売れたら十文は続ける」
「……え?」
「それでも、調子よければ年に一両半ほどにはなるはずや」
沈黙。
やがて一人が口を開いた。
「そんな……最初に二百文言われたから、来たんです」
もう一人も続く。
「今さら急に言われても、困ります。正直、やめようかなって……」
博之は、すぐに否定せず、頭を下げた。
「それは、もっともや」
二人が驚く。
「最初に二百文出したんはな、売れるかどうか
分からん思うたからや。正直、読みが甘かった」
懐から、小さな銭袋を出し、置いた。
「一人一両。今回の見積もり違いの分や。
これを今回の変更の詫び代金として受け取ってほしい」
二人が目を見開く。
「……そんな金額、すぐもらえるんですか?」
「せや。筋を変えるなら、銭は切らなあかん」
少し間があって、二人が顔を見合わせる。
「……それなら」
一人が言った。
「この条件で、続けさせてもらいます」
もう一人もうなずく。
「これからも、よろしくお願いします」
博之は、ほっと息を吐いた。
「こちらこそや。無理はせんでええ。
よそも売ってええし、腰据えたなったら、下に来る道もある」
二人は、深く頭を下げた。




