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さきちゃんと博之の語らい。弁当課題編

その晩。

一軒目の片付けが終わり、鍋も空になったころ。

博之は、さきちゃんを呼んだ。

声は低い。

「2軒目の弁当のことや」

さきちゃんは、すぐ察した顔をする。

「売れ行き、あんまりなんですよね」

「せや」

博之は、隠さん。

「味は悪ない」「作りも、ええ」

「せやけど、外に出た途端、止まる」

博之は、指を三本立てた。

「原因は、三つ考えられる」

「売り方が悪いか」

「新しい店やから、まだ信用がないか」

「値が、少し高いか」

「どれや思う?」

さきちゃんは、

少し考えてから、首を振る。

「……わからへんです」

博之は、笑った。

「それでええ」

「分からんもんは、試して潰す」

懐から、小さな包みを出す。

千文。

「週の後半でも、動かんかったら」

「これ使え」

「試食、出してええ」

「近所の団子でも、菓子でもええ」

「一口食わせて、話して」

「値も、下げてええ」

「売り切る工夫、全部やってみ」

さきちゃんの目が、一段明るなる。

「ええんですか?」

「ええ」

「弁当は、鍋とちゃう」

「売り子の腕が、八割や」

「面倒、見てほしい」

博之は、はっきり言う。

「外に立つ人の、気配」

「声の出し方」「立ち位置」

「それ、さきちゃんが後の子らに教えたって」

一拍。

「失敗してもええ」

「失敗は、帳面に残らん」

さきちゃんは、包みを両手で持って、少し笑う。

「なんか……」

「楽しくなってきました」

博之は、その顔を見て思う。

ああ、これはもう大丈夫やな、と。

「商いはな」

「数字や思われがちやけど、最初に動くんは、

 人の気分や」

さきちゃんは、もう頭の中で動いとる。

団子屋。

菓子屋。

声かけ。

「あ、こんなんどうです?」

矢継ぎ早に出てくる。

博之は、止めん。

止める理由が、一つもない。

路地裏の灯りは、

その夜、少しだけ色を変えた。

弁当はまだ売れへん。

せやけど、

売れる前の匂いが、

確かに立ち始めていた。

さきちゃんの胸は、わくわくで、

もう止まらんかった。

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