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二軒目開店から1週間。のぶが報告にくる

一週間後。

のぶは、帳面を抱えて来た。

紙は少しよれて、角が丸なっとる。

博之は、何も聞かずに座った。

「で」

それだけ言う。

「週の半分は……半分しか、売れませんでした」

のぶは、言い訳せん。

「昼で止まる日が多かったです」

「せやから、夜にかけて値下げしました」

「残すより、回した方がええ思て」

博之は、帳面をめくる。

豚汁、鳥汁。最初の三日は、二十のうち十前後。

「後半は?」

「掛けました」

「値下げと、五人来たら一人無料」

「夕方から一気に来て、全部出ました」

博之は、小さくうなずく。

「正しい」

「半分売れたら、合格や言うたやろ」

「後半で帳尻合うなら、それは“流れ”や」

話は、弁当に移る。

のぶの声が、少し落ちる。

「弁当は……さきちゃんのおかげで」

「もともと買いに来てくれてた人が、

 買ってくれました」

「声かけと、包み方と、顔やと思います」

「せやけど」

一拍。

「外売りが、まだうまくいきません」

「半分、残ります」

博之は、そこで初めて顔を上げた。

「残ったもんは?」

「……自分らで、食べてます」

「捨ててません」

少し、間が空く。

「ええ」

博之は言う。

「それでええ」

「弁当はな、最初から外では売れん」

「“店の味”やなくて、“人の味”が要る」

帳面を閉じて、博之は続ける。

「汁は、腹を掴む」

「弁当は、生活を掴む」

「生活に入るんは、一週間やそこらやない」

のぶは、黙って聞く。

「今はな」

「売れ残りを、自分らで食う段階や」

「それを続けられるなら、次に行ける」

一軒目では、その夜も鍋が回っとった。

三井のコマ使いが、弁当を並べる。

早い。無駄がない。

博之は、ちらりと見る。

「……なるほどな」

声には出さん。

路地裏の二つの灯りは、

その週、派手には光らんかった。

せやけど、消えもせん。

売れた分と、食べた分。

帳面に残らんもんも含めて、商いは、確かに一週間、生き延びた。

博之は、最後にそう思った。

「次は、手を一つ足す番やな」

灯りは、まだ揺れている。

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