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人が揃う

そうこうしているうちに、話は動いた。

口入の話が通り、人は思ったより早く集まった。

料理人が一人。

下働き上がりで、弁当場は一通り回せる腕。

それから、小間遣いの女の子が一人。

掃除も配膳もそつがなく、なにより声がやわらかい。

弁当の方は、二人。昼の二刻だけ、

外を回るにはちょうどええ人数や。

そこに、サキちゃんも入ることになった。

賃の話をしたときや。

サキちゃんは、少し驚いた顔で言った。

「いやいや」

「年で二両で、ここまでやらせてもろて」

「ほんまに、ありがとうございます」

博之は、思わず笑った。

「安うないで」

「相場よりは、出してる」

サキちゃんは首を振る。

「それでもです」

「ちゃんと話を聞いてくれて、任せてくれる」

「それが、ありがたいです」

博之は、ようやってくれる子やな、と素直に思った。

それに、サキちゃんは言った。

「弁当売り、結構楽しいです」

「隙間があったら、私も少し売ってみたい」

無理に押し付けるでもなく、やってみたい、

という言い方や。

博之は、うなずいた。

「ええで」

「無理せん範囲でな」

人の段取りが見えてきたところで、

博之は三井の小間使いの男に声をかけた。

「まずは」

「弁当一式、覚えてもらおう思てる」

男は即座にうなずいた。

「はい」

博之は続ける。

「それが回るようになったら」

「鍋の方も、見てみるか」

少し間があったが、男は笑った。

「どうせ、いろんな仕事をやってきました」

「これも、ええ経験やと思います」

博之は、さらに話を進めた。

「ここはな」「高いもんを、たくさん出す店やない」

「せやけど」「高単価のもんを、細い路地で、きっちり出す」

「そういう商いを、覚えていってみたらどうや」

「仕入れも、一緒に行ってみるか」

男は、少し考えてから言った。

「はい」「やらせてください」

そうして、話は自然に次へ進んだ。

二軒目を、開ける。同じやり方を、大きくするんやない。

人を分け、手を分け、責任を分ける。

二軒目で、無理なく回す。

博之は、帳面を閉じた。

「これでええ」「派手なことはせん」

「せやけど、止まらん形にはなった」

人が揃い、手が揃い、役目が揃った。

細路地の商いは、いつの間にか、

二つの灯りを持つことになっていた。

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