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その賃なら来ます

昼下がり、

口入屋が一人、店に顔を出した。

年の頃は五十前。

人の顔を見るのが商い、という目をしている。

博之が、先に条件を並べた。

「料理人はな」

「下働き上がりで年四両」

「弁当を一通り回せて、鍋に手が出そうなら

 五両まで見る」

口入屋は、眉を少し上げた。

「ほう」何も言わず、続きを促す。

「下働きの女の子は二両」

「愛想がええことが条件や」

「弁当売りは昼の二刻だけ」

「二百文の定めに、一組売れるごとに十文」

口入屋は、ふっと笑った。

「その賃なら」

「来ますよ」

博之が、念を押す。

「高すぎへんか」

口入屋は首を振る。

「町場の相場よりは、少し上です」

「せやけど」

「無茶な値やない」

「それに」

少し身を乗り出す。

「段が見えとる」

「四両から五両」

「弁当を回せたら、次は鍋」

「こういう筋道がある店は、

 人が集まります」

ユキが、横から言う。

「弁当売りは?」

口入屋は即答する。

「娘でも、来ます」

「昼だけ、歩きやすい」

「定めが二百文あって、出来高もある」

「下手に一日拘束されるより、よほどええ」

のぶが、静かにうなずいた。

「愛想のええ子、来ますか」

口入屋は笑う。

「愛想で売る商いなら、愛想のええ子が寄ってきます」

「賃が悪いと、人柄も悪うなる」

博之は、少し考えてから言った。

「無理して高う出す気はない」

「せやけど」

「安くて逃げられるのは、もっと困る」

口入屋は、深くうなずいた。

「分かってはります」

「この賃は」

「人を釣る銭やのうて、腰を落ち着けさせる銭です」

「そのつもりで探します」

口入屋が立ち上がり、

軽く頭を下げた。

「三日もあれば、一人は顔を出させましょう」

博之は、短く答えた。

「頼む」

口入屋が暖簾をくぐったあと、

ユキが笑った。

「相場より上やけど、筋がええわ」

博之は、湯を飲み干す。

「人に払う銭だけは、後悔したない」

細路地の店は、

まだ小さい。

だが、人が来るだけの値打ちは、もう備えていた。

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