大阪の端で町一つを商圏掌握した今徐々に隣接の町に攻め込む計画
細路地九軒と、その真ん中に居酒屋一軒。
ひとまずの形が、ここで整った。
数だけ見れば、小さい。けれど、どう回しているかを
見れば、もう立派な陣形やった。
博之は、その全体図を頭の中に広げながら、幹部を集めた。
「まずな」机に手を置いて、ゆっくり言う。
「この町に関しては、親子丼屋を、ちょっとずつ増やす」
皆、頷く。「やり方は、今までと同じや。
豚汁屋と親子丼屋で、二軒一組」
単体ではなく、必ず組。出汁も、人も、回しやすい。
「この形で、この町は回し切る」次に、居酒屋の話になる。
「真ん中の居酒屋は、今まで通り、
周りの店から材料を受け入れて回す」
余ったもんを、活かす。仕込みを重ねない。
「居酒屋の給金が高いのは、腕の代金やない」
博之は、はっきり言った。「しんどさの代金や」
回転の速さ。拘束時間の長さ。酒飲み相手の接客。
「そこを、ちゃんと分かってもらう」
不満を出させないためや。話は、次の段階に進む。「でや」
ここからが、本題やった。「次の町を、どう攻めるか」
空気が、少し変わる。「今は、大阪の端っこや」
「せやから、いきなり北浜や淀屋橋、難波を攻める気はない」
無茶はせん。「今みたいな町を、じゅんぐり抑える」
外側から、内へ。「前と違うのはな」博之は、少し間を置く。
「最初から、豚汁屋と親子丼屋をセットで出す」
ここが、肝やった。「単店勝負やない。最初から、
回す前提で入る」のぶが、口を開く。「その分、人が要りますね」
「せや」博之は頷く。「採用と、教育が要る」
だから、「この幹部で、定期的に話す」
人の状況。金の状況。無理が出てないか。
「金勘定も、この場で全部出す」売り上げ。利益。
どこが苦しいか。「隠さん。分かった上で、次を決める」
そして、のぶとさきちゃんの話。「代表代行の二人にはな」
二人を見る。「仕入れ先に行く時、必ず一緒についてきてもらう」
顔を売る。融通を知る。
「俺がおらんでも、話が進むようにする」
それは、 権限を渡すということでもあった。
「別の町を攻めるってことは」博之は、少し笑った。
「幹部の席も、また空く」ざわっとする。
「広げたいわけやない」正直に言う。
「でもな、機会があるのに、広げへん手もない」
慎重に。でも、止まらん。さきちゃんが、楽しそうに言った。
「人取りゲームですね」のぶも笑う。「戦国時代みたいです」
場が、一気に明るくなる。「せやな」
博之も、笑った。「ただし、焦って攻めたら、城は崩れる」
だから、順番。「一つ抑えて、固めて、次へ行く」派手さはない。
でも、確実。博之は、皆を見渡した。「このメンツで、まず一歩や」
ワクワクと、緊張が混じる。勝ちたい、というより、
面白くなってきた。その感覚が、全員に伝わっていた。
細路地から始まった商いは、いよいよ、
町を渡り始めようとしていた。




