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居酒屋初日。勘定できないくらい売れるwww


 初日の売り上げは、正直、爆発的やった。

 朝から人が途切れへん。暖簾を出した瞬間から、客が入り、酒が動き、器が空く。

 祝いの空気に引っ張られるように、場が回り続けた。

 酒は、十分に仕入れていた。、灘、伏見、伊丹。湯も、燗も、問題ない。

 誤算は、飯やった。百人分あれば足りる。そう踏んでいた。

 升酒は百人。百文セットも二十組。そこまでで一段落する――はずやった。

 ところが、終わらへん。

 升酒が消えた後、百文セットが三十分で消え、

 六十文セットに流れ、そこから通常の注文が重なった。

「飯、まだあるか」その声が、何度も飛ぶ。

 半人前の親子丼。鯖の味噌。一品。気づけば、釜の底が見え始めていた。

「……足らん」誰かが言った。

 焦りはあったが、止める理由はない。「持ってこ」

 ひろゆきは、即座に言った。豚汁屋。親子丼屋。

 それぞれの店で仕込んでいた分を、少しずつ持ち寄る。

 鍋を運び、飯を移し、温め直す。

 二軒一組。これまで作ってきた流れが、ここで効いた。

 店を閉めることも、断ることもせえへん。ただ、回す。

 厨房は、声を掛け合い、給仕は、走り、

 燗酒師は、湯から目を離さへん。

 忙しい。けど、崩れてへん。

 ひろゆきは、帳面を開いたが、すぐに閉じた。

 今日は、数えられへん。いや、数えられる。

 けど、数えたら遅れる。

「今日はええ。月締めでまとめる」

 そう言って、帳面を脇に置いた。

 商いは、数字や。でも、数字より先に、場がある。

 場が回っている時に、手を止めて計算するのは、悪手や。

 ひろゆきは、苦笑いしながら思った。

 これは、想定外や。けど、悪い想定外やない。

 夕方になっても、人は引かへん。夜に入っても、酒は出る。

 結局、初日は、売り切れるくらい、品が出た。

 飯も、酒も、肴も。全部が、動いた。

 店を閉めた後、鍋を洗いながら、誰かが言った。

「……えらい一日でしたね」「せやな」

 ひろゆきは、短く答えた。

 疲れはある。でも、不安はない。

 数字は、あとから追いつく。

 月で見れば、全部出る。

 それよりも、今日、この店が生き残れると分かった。

 二軒から三軒へ。点から線へ。

 集大成の居酒屋は、初日から、ちゃんと試され、

 ちゃんと応えた。博之は、暖簾を畳みながら、

 もう一度だけ、苦笑いした。

「……えらい日になったな」

 けど、その顔は、間違いなく、手応えの顔やった。

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