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親子丼は昼夜40杯ずつ80杯。これの理由・考えを下のものに説明する。


「親子丼はな、五十文で決めてるんや。」

 ひろゆきは、そう言ってから一拍置いた。値段の話は、いつも空気が変わる。

 せやけど、ここは曖昧にせえへん。「ただし、最初だけや。暖簾上げた初日は、

 先着十人は四十文で出す」ざわっとする。安い、という声より先に、

「理由は?」という顔が並んだ。「数を読ませたい。親子丼屋は、まだこの町じゃ

 馴染みが薄い。せやから、まずは食わせる。うまいかどうか、早いかどうか、

 腹に残るかどうか。それを知ってもらう」

 値引きは、宣伝やない。判断材料を配るための手段や。

「出す量は、昼四十杯、夜四十杯。計八十杯」ここで、誰かが眉を上げた。

 他の店より、多い。「他の店より量は出す。回転も早い。親子丼は、迷わん飯や。

 座って、出てきて、食うて、立つ。その流れを切らさん」

 先着十杯を四十文、残りは五十文。値段は単純。考えさせへん。

「杯数も決め打ちや。四十ずつ。増やさん。足らん日は足らんでええ。

余らす方が、店を壊す」そこまで言い切ってから、博之は続けた。

「味はな、鶏汁の出汁を使う。けど、そのまま流すわけやない。割下で整える。

 親子丼用に、ちゃんと締める」豚汁屋で炊いた鶏汁。それを、親子丼屋が受け取る。

「鶏汁を作った分ぐらいは、親子丼で消化できる計算や。せやから、無駄は出えへん」

 その代わり、豚汁屋の仕込みは増える。「1軒だけ、鶏汁の量は、倍になる」

 一瞬、間が空く。でも、ひろゆきは軽く言った。「まあ、なんとかなるっしょ」

 笑いが起きる。「親子丼一軒につき豚汁屋の鳥汁鍋を一つ増やす。それだけや。

 二つの店で、一つの流れを作る。最初から完成させる必要はない。徐々にや」

 豚汁屋が、出汁を生み。親子丼屋が、それを形にする。

「二つで一つ。そういう回し方を、この町で作れたらええ」

 話は、原価に移る。「鳥をよう使う。せやから、鶏の単価は下げたい」

 正直な話や。「今より、もうちょいええ鶏を、もうちょい安う仕入れられへんか。

 その辺は、おいおい交渉や。今すぐ無理せんでええ」量が出れば、話はできる。

 話ができれば、選択肢が増える。「最初は、今あるもんで回す。数字が出たら、

 交渉する。順番を間違えんことや」

 誰かが、うなずいた。

「九軒目は、試しでもある。けど、遊びやない。値段も、杯数も、鍋も、

人も、全部勘定に乗せる」博之は、最後にそう言った。

「ここが回ったら、居酒屋も見えてくる。その時は、味を決め切って、

店長を一人立てる。そのつもりで、今から動いといてくれ」

場の温度が、また一段上がった。鍋の数が増える話やのに、重さはなかった。

増やすのは、店やない。流れや。博之は、そう考えていた。

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