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お高との関係を笑う三井の大旦那

店の奥に腰を落ち着けるなり、三井本家の大旦那は、

 にやにやと笑いを隠そうともせえへんかった。

「いやあ」湯呑みを手に取りながら、

 博之をじっと見て言う。「うちの出戻り娘と、

 最近よう遊んでるみたいやな」

 博之は、一瞬言葉に詰まってから、苦笑いした。

「遊んでる、いうほどでも……」

「ははは」大旦那は楽しそうや。

「正直な」「最初は、適当に顔見せして終わりやと思とった」

「まさか、娘がここまで気に入るとはな」

 ちらっとお高を見る。「惚れるとは、思わんかったわ」

 その瞬間や。「……ちょっと」お高が、ぱっと顔を赤らめた。

「惚れてる、とは言ってません」場の空気が、一瞬ぴしっと張る。

 博之は、さらに居心地が悪そうに肩をすくめる。

「仕事ぶりが、ええって言うただけです」

「周りの人の空気が、ちゃんとしてるって」

 大旦那は、一拍置いてから、大きく笑った。

「ははは、そう来るか」「変わらんなあ、お前」

 ユキが横で、肩を揺らして笑う。「まあまあ」

 博之は、二人のやり取りを見ながら、内心で思った。

(……完全に、からかわれてる)

 でも、悪い気はせえへん。

 お高は、恥ずかしそうに視線を逸らしながらも、

 ぽつりと付け足した。「……ただ」「居心地は、ええです」

 その一言に、場が静かになる。大旦那は、満足そうに頷いた。

「それで十分や」「惚れた腫れたは、後から付いてくるもんや」

 博之は、また苦笑いするしかなかった。

 どうやら、この縁談は、思っている以上に

 周りから包囲されつつあるらしい。

 そして何より、本人同士が一番、逃げ腰になりながらも、

 居心地の良さを否定できなくなっていた。

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