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お正月とすごろく企画。ルール設定。有馬温泉の出目がでるwww

年が明けて、最初の仕込みが終わった頃やった。

店の前に人が集まりきらんほど、所帯が大きくなっているのを見て、博之は内心で苦笑した。

「正月の挨拶するだけで、ひと仕事やな」

五軒分。料理人、給仕、弁当売り、下働き。

顔を見て、声をかけて、年始の言葉を交わすだけで、思った以上に時間がかかる。

全員が揃ったところで、博之は軽く手を上げた。

「まあ、堅い話は抜きや。今年もよろしく頼む」

そう言ってから、懐に手を入れる。

「気持ちばかりやけどな」

一人ずつに、百文。初めての“お年玉”やった。

ざわっと空気が動く。金額そのものより、「もらう」という行為が初めてや。

「今年からな、これも一つの決まりにしよう思う」

そこで、博之は十二月に話していた双六の話を改めて切り出した。

「ただし、ルールはきつめや」

皆の視線が集まる。

「まずな、店は五軒。各店舗から一人ずつ、五人だけ振る」

「全員一気に行くことはせえへん」

「振った五人は、自分らで日程調整せえ。喧嘩なし、言い訳なし。

 穴が被ったら、それはお前らの段取りが悪い」

誰かが喉を鳴らす。「それからや」博之は続けた。

「行った先でな、土産を買ってこんでもええ」

「けど、土産話は必須や」

「見たもん、食うたもん、感じたこと。

 帰ってきたら、俺と、ここにおる全員に話せ」

「俺が金出すんや。話も聞かせんのやったら、遊びにならん」

場が静まる。「もう一つ」声を落として言う。

「この企画で店に穴が開くようやったら、この話はそれで終わりや」

「抜けた穴は、残った者で埋める」

「それができんのやったら、まだ早い」

少し間を置いて、最後に付け加える。

「もし、これがちゃんと回るならや」「毎月やる」

「一回振った者は、次は休み。残りの者から、また五人」

「そうやって、順繰り回す」

「そのつもりでおれ」

そこまで言ってから、博之は双六を差し出した。

「ほな、振れ」

順番に振る。静かやった場が、少しずつざわつく。

社寺参り。見せ物。高い飯。五百文。

そして――「有馬や!」

誰かが叫んだ瞬間、場が一気に弾けた。

当たった本人は一瞬固まり、それから顔を赤くする。

「え、俺ですか」「ええなあ!」「湯やぞ、湯!」

「話、たんまり聞かせてもらうで!」

笑い声が重なり、肩を叩かれる。

その男は、照れながらも背筋を伸ばした。

「……ちゃんと見てきます」

「土産話、期待しといてください」

その言葉に、博之は小さく頷いた。

――これでええ。遊びやけど、店を試す遊び。

人を休ませるけど、残る者も育てる仕掛け。

年始の空気は、少しだけ熱を帯びていた。

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