98話「ミルシェラとアカデミー生活」
〜 ミルシェラ視点 〜
私の名前はミルシェラ。エルシード家の公爵令嬢です。
10歳になってアカデミーに入学しました。
寮生活になって、実家では土日に借りられてたお父様の魔導具……タブレットが使えません。
色んな作品の続きが見れなくてそれも辛いし、何より夏と冬の長期休暇以外はなかなかお父様とも会えなくて寂しいです。
そう……タブレットではお父様の検閲済みのものが閲覧可と書かれたフォルダ内に入れられ、私はそれだけ見れる感じでした。
他のフォルダやアイコンには触るなと厳命されています。
約束を破るともう永遠に見せてもらえなくなるらしいので私は言いつけ通りにしています。
そして土曜日には、作り立てのお弁当がお昼の時間に魔法陣に転送されてきます。
何故か学食より美味しい実家のお食事です。
そのお弁当の他にランダムでお父様からのお手紙がついてくる事があります。
その手紙によると、ダンジョン産の本も転送される事があるそうです! それを楽しみに生きています。
アカデミーではお友達もできましたが、体が弱い設定なので、乗馬クラブに誘われても入れませんでした。
お外をお馬さんに乗って元気に駆け回る代わりに、私は空き時間に刺繍などをしています。
(本当はお父様から教わった日本語で作られている漫画などを読みたいです。)
刺繍のやり方はお父様が見せてくれた動画にもあって、日本語解説つきで立体的な刺繍とかが出てきまして、それは芸術的で可愛くて綺麗で見事なものです。
糸で編んだ花や葉っぱを連ね、お父様がダンジョンで仕入れてきたゴムを使い、お父様のお好きな白詰草のシュシュも動画をお手本にして作りましたが、上手に出来たので、天才だとお父様に褒められました。素直に嬉しかったです。
月曜日から金曜まで堪え忍び、待ちに待った土曜日のお昼になりました!
実家からの作りたてのお弁当が届きます!
私は魔法陣が描かれた布を広げる為に人気のない裏庭の芝生の上に移動しました。
ガゼボには先客がいたので、ピクニックシートを敷いて、その上に座ります。
懐中時計を出して確認。12時22分になるとお弁当が転送されてきます。
指定時間に魔法陣が光りだし、お弁当が転送されて来ました!
弁当箱の上には紙の袋に入れられたものと巾着袋がありました。
巾着を持ち上げたら、じゃらりという音がしたので、お母様からの仕送りのお小遣いです。
紙袋の中を見るとタブレットの中で見ていた漫画とお父様からの手紙でした! これで漫画の続きが読めます!
その物語は私とお父様しか読めない言語で描かれているので、タブレット内で見れるものばかりでしたが、紙の本がついにこの手に!
お弁当の後のお楽しみとして、一旦アイテムボックス的な収納としても使える魔法の布に漫画とお小遣いをしまいました。
私が望む時に出せるので、これで大丈夫。
──さて、お父様からの手紙を読んでみます。
「お弁当と漫画を一冊送ったよ。空き時間に楽しんでくれたらと思う。それとアカデミーの神学クラスに聖女と言われる少女が現れたら、絶対に虐めてはいけないよ。なるべく関わらなければいいと思う。とにかく敵対しないように立ち回りなさい」
と、書かれていました。
聖女……お父様のタブレットの漫画の中にも度々出てきていました。
確かに公爵令嬢の……悪役令嬢と呼ばれる存在が、自分の婚約者の王子様と親しくし過ぎていたので聖女を虐めてたら王子様に婚約破棄され、さらにいじめた罪や、聖女暗殺を試みた罪で断罪され、国外追放やギロチンにかけられる物語も読んだことがあります。
恐ろしいです。
自分の婚約者の王子にやたらと馴れ馴れしくした聖女や男爵令嬢に注意しただけでも虐めたレッテルを貼られた気の毒な公爵令嬢も作品内にいました。
かなり理不尽です……。
聖女は尊い存在なのでしょうが、王子様含めてなるべく関わらないようにしなければ……。