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82話「長く眠らせていたもの」

 ネットで冬のセール情報を漁ってる最中に姉から連絡があった。


 既に夜であったがまた車で迎えに来るって話と、作家の本田桜子さんとコスプレイヤーのミカリンちゃんも姉に託していた妻のお古の高級ドレスを大変喜んでいたという話を聞いた。


 本物の宝石がついていたのを姉がフェイクに付け替えたりしてやや手間をかけたが、それでも十分見映えがするのは流石である。


 あくまで偽物だろうという思い込みで雑に扱われたら本物の宝石が可哀想なので、姉がネコババしたいわけではなく、言わば救出作業である。


 ◆◆◆


 姉が連絡通りに車で迎えに来てくれて、弁当屋のバックヤードで毎回恒例の食材渡しを行ってまた自宅まで送ってもらった。


 その後はゆったりパソコンでネット小説の短編を読んだりしていたら、自分も学生時代にラノベ系のファンタジー小説をこっそりと書いていた事を思い出し、パソコンの中に眠らせておいた古いデータをあさり、見つけ出した。


 ──これ、賞とかに応募してみようかな?

 思いたって姉とSNSで通話した。



『あのさー、実は学生時代に書いていた小説を見つけたんだけど……』

『何何? 黒歴史?』



 姉は通話越しに笑ってる。



『黒歴史言うな。賞に出してみようかと、小説サイトに登録して、タグつけて応募すればいいだけなんだ』



 少しでも金儲けをしたい俺。

 こっちの世界での資金稼ぎに。



『あんた表向き病院で寝たきりなのよ?』

『そこで相談なんだけど』

『まさか私名義で出せって? ゴーストライターは流石に嫌よ』


『いや姉貴がさ、弟が事故に遭う前に書きためていたものを発見したってていでさ、俺の名前、いや、ペンネームで登録して、作品説明とか前書きのところにそれを書いておくからさ』


『それだと弟の黒歴史小説を勝手に公開する姉になるんだけど?』

『弟は中二病でこの自分に何かあった時はどこかでこの小説を公開してほしいというメッセージが身内宛に添えてあったとかなんとか……』


『よくそんな言い訳を思いつくわね』

『学生時代は作家に憧れていたんだし、ジャンルも異世界ファンタジーだし』

『ふーん。あんたがそれでいいならいいけども 』


『じゃあデータは小説サイトに予約投稿って形でアップしておくな。ペンネームはケイトで登録して、アカウントのパスワードとかメアドを姉貴に教えとく、ワンチャン賞に引っかかればメールとか通知がくるはずだから』


『いいけどあんたの謎の自信はなんなの?』

『なんでもこちらの金になるチャンスがあるならって思ってるだけだよ』

『まぁ、いいわ。ところでケイトはカタカナ? ケーネストからとった?』


『うん、そう。カタカナのケイトでいい、あと、小説サイトに登録してアップしとくから』


 時間かけて2600文字くらいの物語を小説サイトに予約投稿する為に、最初だけ7話分一気に投稿し、目立つようにして、翌日からは1日に3話ずつ公開される設定にした。100話超えなんで作業が地味に大変だった。


 俺は翌日の朝まで予約投稿の作業をして、夕方まで寝てたが、夕刻には起きて、それから中華レストランで姉とコスプレイヤーのミカリンと会うことになった。


 ちなみに漫画家の桜子さんは原稿の修羅場で来れなかった。


 今回なぜ中華にしたかと言えば、異世界では食うタイミングがないからだ。


 俺はエビチリとチャーハンを頼み、姉は麻婆豆腐と八宝菜とゴマ団子を頼んだ。


 ミカリンは酢豚とライスと杏仁豆腐を注文し、取り皿を使ってシェアもした。


 久しぶりの中華料理はひときわ美味しく感じた。



「いやー、普段ケントさんは電波の届かない所にいるって本当だったんですねー」

「はお、すみません……山奥にいて」



 ホントは異世界にいるんだけど、ミカリンにそのことを言う訳にもいかない。



「でもあの高級そうなドレスで写真撮るとめちゃくちゃ盛れたんでー、ありがたかったですー」



 ミカリンはニカっと笑ってスマホでそのドレスを着た時の写真も見せてくれた。



「ほんとに綺麗だね、よく似合ってる」



 話題は冬の祭典の話から、ミカリンの姉が夜職をやっていて、その客の話まで飛び出した。いろんな話題を持ってる子だ。



「お姉さんにケントさんは美人の奥様がいるって聞いたんですけどー」

「ああ、いるよ」

「写真とかないんですか? 超見たいっていうかー」


「あー、ひまわり畑の前でとったかやつとかでいいかな?」

「ひまわり畑エモ! もちろんいいですよー!」


「これだけど、その、海外の知り合いの、コスプレOKなとこで撮ったやつ」

「わー! 超美人! 綺麗! あと、めちゃくちゃかわいい女の子もいる!」

「そっちの小さい子は娘だねー」


「ひゅー! 流石イケメンの妻は爆美女だし、娘ちゃんはまるでプリンセス!」



 妻と娘が誉められて俺も嬉しい。



「じゃあミカリン、帰りはイルミネーションの前で写真を撮ればいいのね?」

「はい! ありがとうございます!」



 本日は食後に街中のイルミネーションの前にいるミカリンを撮影して解散となる。

 これはコスプレでなく、フツーに今着てる服でやる。外なので。


 ついでに俺も撮ってもらおうか、せっかくケーネストがイケメンなので。








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― 新着の感想 ―
まぁ、ご自身の黒?歴史の体験談かなw、昔、こんな事あったなぁ~って振り返るのも、時にして胸キュンな事もあったでしょうな、、そういう爺やも若かりしことを想い出すと、、
ソーラーユニットとバッテリーそしてノーパソを持っていけば書き溜めもある程度出来そう。 (収支問題は賞とったりして売れる事前提だが) 文字は対応してなくても管理用には使えそうだし。 (文字が違うことによ…
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