81話「襲撃の犯人」
冬の初めの頃。朝晩がだいぶ冷えてきた。
俺は最近、日課のようにイケメン騎士達の訓練風景やら、休憩時間やらの写真を撮っている。
日本での買い物用の資金稼ぎの為だ。
そして、朝から訓練場でまた騎士達の写真を撮っていると、家令が話しかけてきた。
「公爵様、奥様襲撃事件の調査報告が上がってまいりました」
「ああ、ついに調べがついたか」
エルシード公爵家の親戚、ベデケン家の者達、ゲジョーダン・エル・ベデケンとイタラ・エル・ベデケンが男の子を産めないのを妻のせいにし、愛人を持てとか離婚しろとか言い出した後で、妻がオペラ鑑賞中に襲撃を受けた。
不審に思った俺は秘密裏にベデケン家の調査を家門の者に依頼していたのである。
「調査の結果、あのお二人はサキュバスとインキュバスに操られていたようです」
「まさかのサキュバスとインキュバスか……しかしやつらが何故、いやらしいこと以外のことを親戚をそそのかしてさせるんだ」
「魔族の陰謀でしょう。サキュバス達にベデケンの者を誘惑させて、公爵家の権勢を削ごうという……大抵奴らが人間界に手を出そうとする時に邪魔になる筆頭がエルシード家門です」
なるほど……な……。
「サキュバスとインキュバスはどうなった?」
「エルシードの騎士が始末しました」
「……ふぅ。それではサキュバスとインキュバスにまんまと誘惑された奴らへの処罰は……」
「ベデケン側は悪い悪魔に操られていただけだから許して欲しいと言っております」
「洗脳は解けても、罪は罪だ。三年は神殿と修道院に放り込んで厳しい監視下の元、奉仕活動をさせろ、禊ぎをしなければな」
「かしこまりました、ベデケンの家族の方はどうしますか?」
「イタラの方は金遣いの荒さと性格の悪さで離婚され、子供の養育権利もすべて夫側になって実家に帰っていたので、まぁ、本人を修道院送りにするだけでいいとして、ジョーダン側は妻子がいたな、妻子はしばらく謹慎程度で様子見だ」
「はい、そのように通達致します」
「これにてひとまずは犯人が割り出せた。これから冬が来るからその準備に色々買い込みに行きたいので、私はまたダンジョンへ向かう、妻の警備は引き続き厳重に、どのみち冬は社交シーズンではないので、邸宅にいるだろう」
「かしこまりました」
家令は恭しく頭を下げた。
◆◆◆
俺は昼食の席でアレンシアに話しかけた。
「アレンシア、冬の星祭りの準備を進めておいてくれ、私はまたダンジョンへ向かう。冬ごもりに必要なものを仕入れて来るから」
「では、またしばらく外泊されるのですね……」
何故かアレンシアはガッカリした顔をした。
「そうだ、化粧品とかの補充をしたいだろう?冬場は余計乾燥するし、化粧水とか」
「む……それはそうですね、では私は星祭りの準備をすすめ……自分の寝室に戻ります」
「ああ、じゃあな、寒くなって来たから暖かくして寝るんだぞ。……ミルシェラもいい子にして待っていてくれ、お土産を買ってくるからな」
「はい、お父さま」
俺は昼食を終えてからこちらで買える食材をかき集めたりして爆速で準備をして、公爵家から別邸の方へ向かった。
◆ ◆ ◆
そして俺はまた別邸近くのダンジョン経由で日本へ向かった。
蔵の鏡経由でにゅっと出てきた俺は埃っぽい蔵の中から母屋へと向かう。
家に戻ってテレビのニュース番組をつけると既にクリスマス商戦の話題が出たりしていた。
ひとまず風呂のお湯を貯め、姉に日本に戻って来た知らせをと思ったら、あるおしゃれ系キラキラSNSのリンクが貼られていた。
姪っ子が写真館で華やかなドレスを着た姿がアップされていた。
「おお、ついに撮影したんだな、これは見事なプリンセス!」
ミルシェラとアレンシアにも星祭りにはクリスマスプレゼントみたいなのを用意しないとな。
プレゼントを買うにも金がいる。
さっそくパソコンを立ち上げ、コスプレ写真の売り上げを見た。
流石にケーネストがイケメンのせいか、なかなかの売り上げだった。
もちろん騎士達の美貌と筋肉美の力もあるが。
俺は姪っ子の写真にイイネ!の星をつけて、今度はタブレットで他のSNSのアプリを立ち上げる。
こちらはおしゃれ系というより、カオスな話題が詰まってるSNSだ。
誰かが冬の祭典用の原稿に追われて作業通話を募集してたり、アニメ、漫画、ゲーム、話題の映画のことやらの情報が沢山あって如何にも楽しげだ。
「こっちはほんとに娯楽の多い世界だよなぁ」
そしてお湯が溜まったと知らせる音を聞きつけ、風呂場に向った。まずは風呂に入って着替えてから、冬のセール情報でも漁ろうっと!




