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花と公爵

 このガーデンパーティーには夫婦でと誘われたわりに、執事や護衛騎士などを除くと男のゲストは俺だけだった。     


 しかし、大変にこやかな笑顔で迎えられたので、悪印象はない。


 自慢の薔薇庭園を見せてもらってから、庭に設置されたテーブル席についた。

 テーブルの上には茶菓子や花瓶に生けられた花が華やかさを添えていて、いかにも夫人達の茶会といった雰囲気だ。



「いやー、見事なものですね! 特に薔薇のアーチが連なって秘密の小道みたいになっている所、大変美しい。私が妖精ならあそこが気にいって住んでいるかもしれません」 


 侯爵家の花の小道はおべっかなどではなく、本当に綺麗だった。


 俺が某赤毛のソバカス少女なら、恋人達の小道と名付けてしまいそうなレベルでロマンチックな場所なのだ。


 もっともあちらに咲いていたのはスミレといったもっと素朴なものだったろうけど、とにかく恋人と一緒に通りたくなるレベルなのだ。



「まあ〜ありがとうございます! 公爵様はロマンチストでいらっしゃるのね、素敵ですわ」



 とても嬉しそうな反応である。



「全くあなたときたら、こんな大きな体で妖精だなんて」



 妻がなんだか照れている。

 俺の発言がそんなに恥ずかしいだろうか?



「娘が社交界デビューする頃にはぜひここに誘ってやってください、あの子にも見せてやりたいので」

「もちろんですわ」


 動画や写真映えするロマンチックな場所なのでほんとは恋人同士で通ると良さそうな小道だ。

 そして白いテーブルクロスの上に、花と美味しそうなお菓子などが沢山並ぶ席にて歓談は続いた。


「そう言えば公爵様は女性の爵位継承を可能にしようという提案をなさったとか」


 来たな、本題!


「ええ、才能や本人にやる気があるなら女性にも機会があった方がいいと思いますし、良家との縁談のみが女性の未来を決定するのはキツイものがありますからね」


「閣下はお優しい方ですね、世の中の男性が閣下のような方ばかりだったら世の令嬢達ももっと生きやすくなるでしょうに」

「ですわねー」


「私は家督を継ぐより冒険家になりたいとか、音楽の道に進みたいとかいう長男もいると思うんですよ」 


 多分な。


「そういえばうちの兄も本当は音楽をやりたかったらしいですわ、結局家を継ぎましたが」

「よければうちがパーティーをする時は兄君に演奏を頼みたいものですね」


「あら、家督を継いでからはバイオリンの腕を披露する場もなかなか有りませんし、兄も喜ぶと思いますわ」


 こんな感じで、なんか辛い思いでもしてきたのか、俺に好意的な女性ばかり集まってる雰囲気だった。


 そして俺の妻を羨ましそうな目で見ているが、俺が高位貴族らしくない振る舞いをするので、実はあんまり仲良くないですよ。


 その時、ふわりと妻の髪に飾っている造花の花に偶然蝶々がとまった。



「あら、公爵夫人の髪飾りに蝶々が」

「!! あ、あなた、とってください」


 青ざめて固まる妻のアレンシア。そうか、虫は綺麗な蝶々であっても苦手か。


「あの、侯爵夫人、花瓶の花を1輪頂いても?」

「はい、もちろんどうぞ」


「ほら、その花は綺麗だけど造花なんだ。蜜はないよ、こっちにおいで」


 俺は蝶々相手になるべく優しく語りかけて、生花を蝶々に近づけて誘う。


「あらぁ……」

「まぁ…」


 蝶がふわりと俺の手にある花に飛び移ると、御婦人達がうっとりとした声を上げた。


 蝶々が無事に俺の手にある花に移動してくれたので、妻もほっと胸を撫で下ろした。


 俺はそっと椅子から立ち上がり、蝶のとまる花を手にしたまま庭園に咲く花の方に連れて行く。



「ほら、こっちの方が広々してるぞ、翔び立て」

 

 説得が通じたのか、花木の方にふわりと移動した蝶を見て、俺もほっとした。



「素敵ねぇ」

「公爵様はお優しい方ね……」



 などという感じで、このガーデンパーティーでの俺の振る舞いは御婦人達に好評のようだ。


 伊達に前世で少女漫画まで読んでた訳じゃないんだぜ。

 恋人はハイスペ男に寝取られたけどな!


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― 新着の感想 ―
前世で少女漫画ですか。まぁ好きな男の子もいるでしょうな。最近オタクのストピの子はアイマスとかという2次元キャラ大好きとかあったし、、女の子もファンがいるとか、、いやぁ~爺やの時代には無かったな(笑)
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