78話「秋の女神のような」
そして食材も売ってる大きなホームセンターでキッチンタイマーやら必要な物を買い込み、また姉の車で家まで送ってもらった。
日本に帰る前に家の側の竹林から竹を伐採することにした。
たまに間引いてくれとご近所さんに頼まれていたのを思い出したのだ。
倉庫にあるノコギリを出す時に祖父母が誰かからもらったのか、ひき肉製造機とパスタマシーンがあったのを発見した。
おそらく貰ったはいいが、多分面倒くさくて使ってなかったと思われる。
思わぬ掘り出し物だ。これも異世界に持ち帰ろう。
そして汗を流しつつ、夕方まで竹を頑張って伐採。
竹は細工もできるし、異世界へ持って帰る。
ついでに竹の灯籠の写真も家のパソコンとプリンターでプリントアウト。これを見本にして灯籠を作ることができるだろう。
そしてもう一回シャワーを浴びてからカップラーメンを食べ、洗濯機に洗濯ものを放り込み、歯を磨き、洗濯物も洗い終えたら乾燥機に入れて朝まで寝た。
そして日本の自分のベッドで朝の七時くらいに起床。
顔を洗って歯を磨き、乾燥機から洗濯物を取り出し、テレビをつける。
そして朝のニュースを流しながらたたむ作業。
それが終わると昨日買ったエビグラタンをレンチンして朝食として食う。
うん、美味い。
まろやかなホワイトソースの味とエビのぷりっと感がいい。
気がつくとタブレットに姉からメールが届いていて、俺の贈ったドレスに姪っ子が大喜びしていたと書いてあってホッコリした。
写真館には後日行くらしいから、次の帰省時にはドレス姿の写真が見れるかも。
そして公爵の服に着替えてから、朝の9時頃にはダンジョンに戻った。
夜に帰るより朝の方が安全だと思ったからだ。
騎士達が壁画の側で今回も待っててくれたので、何事もなくダンジョンを出る。
一泊だけして帰ったのだし、早い方だろう。
ダンジョンからでて馬にて農地へ行くと、立派なかぼちゃが実っている。
そして今まさに収穫中だった。
「そこの者、そのかぼちゃを10個ほど買わせてくれないか?」
「は、はい!」
馬上から急に貴族から声をかけられ、農夫は驚いたようだが、問題なく買えた。
公爵家の妻の元へ魔法の伝書鳥を飛ばし、
「別邸まで戻って来たので帰る途中、これから転移ゲートのある神殿へ向かう」
と、伝えた。
「お帰りなさいませ」
神殿経由で昼過ぎに公爵邸に到着すると、アレンシアがまた玄関にて出迎えてくれた。
上品なクリーム色のドレスに金糸の刺繍入りで、髪飾りはイエロートパーズが黄金の小枝に実る果実のような形でついてる。
まるで秋の女神のごとくあり……うん、今日も美しいな。
どうやら安全の為に屋敷の中にいてくれたらしい。良かった。
「ただいま。変わりはなかったか?」
「はい、邸宅内におりましたし、問題はありませんでしたわ」
「ところで新しく増えた護衛はどうだ?」と、アレンシアに耳打ちした。
「私の朝の支度などを侍女がやっておりましたら、興味深そうにしておりまして、髪飾りなどを選ばせてあげたらたいそう喜んでおりました」
わかった!!
等身大きせかえ人形的楽しさがあるんだ!
アレンシアは美人だから、飾りがいがある!
「なるほど、このイエロートパーズの髪飾り、綺麗でかわいいな、おそらくは秋色にしたんだろう」
「そのようですわ、ドレスにも金糸が使われてますし」
秋になると、黄金色の麦が畑で風に揺れるのもあり、金色のモチーフのものが流行るらしいので納得である。
執務室に戻った俺はまず掲示板に貼るポスターを書いて作った。竹灯籠を作るアルバイトを募集するのだ。
竹の灯籠の灯りも風情があるので、ミルシェラに見せたい……これも情操教育だ。
使用人の誰かが小遣い稼ぎにやってくれたらと思って公爵邸にある庭園にある掲示板に貼った。
3時のティータイムで妻子とモンブランケーキを美味しくいただいた。
「お土産の栗のケーキだ」
「まぁ、私、栗のケーキは初めて食べますわ」
「お父さま、これ、美味しいです!」
「あら、本当……」
「そうだろう、栗のケーキは美味しいんだ」
昔から俺はモンブランが好きだ。
「あなた、いつお食べになったんです?」
「さ、先に少し味見を、あちらで……」
やっべ、こっちには多分栗のケーキは存在しないからいつ食べたんだってなったんだな。
「お父さま、ずるいですー」
「ちゃんとお土産にしたから許してくれ」
「……たしかに。許しますー」
許された! セーフ!
◆ ◆ ◆
それから厨房ヘ向い、倉庫で見つけたパスタマシーンとひき肉製造機を魔法の布から取り出して
料理長に使い方を教えた。
「また凄い物を持って来られましたな、ドワーフが作ったんですか?」
「さあ? ダンジョン産だからよく分からん」
パスタマシーンとひき肉製造機に感心する料理長。俺は生産者のことを適当にごまかし、かぼちゃのパイとボロネーゼを作って貰うことにした。




