76話「チョコ争奪戦」
チョコレートのお土産をもらって嬉しそうなホーリーナイトのメンバー達。
「あの、早速一つ食べてみてもいいですか?」
ホリーがチョコレートを手にして耐えられずに俺に声をかけてきた。
「もちろん、どうぞ」
「「「「ありがとうございます!!」」」」
流石パーティーメンバー、お礼を言うだけでも綺麗にハモってる。
「……わぁ、口の中で溶けた! 甘くて美味しい!」
斥候のユーミィだったかな? が、最初に感想を口にした。
「濃厚で美味しいです! こんなに美味しいものがこの世にあったんですね!」
魔法使いのサーシャもチョコの味に感動してる。
「チョコレートが気にいったようだな」
「はい、でもチョコレートもとても美味しいけど、この料理もすごく美味しいです、鶏肉だと思うのですが」
ホーリーナイトの武闘家のアニが唐揚げを指差して言う。
「唐揚げだ、油を贅沢に使う揚げもの料理だから、世間ではあまり見ないんだろうな」
料理長には日本から持ってきたサラダ油を使ってもらってる。
「なるほど、カラアゲと言う料理なのですね、お肉にしっかり味がついてます! 外側カリッとしてて、中はジューシーで!」
「私もこの料理、とても美味しいと思いました! 味わい深くて!」
騎士の一人が手を上げて唐揚げに言及した。
「騎士の皆にも残ったお土産のチョコレートを二つ、腕相撲……あ、テーブルの上で対戦者と手をあわせて倒した方が勝ちって一対一の力勝負でもしてもらい、勝者にあげようと思う。残念賞はラムネとキャラメルだ、あ、コッチも美味いは美味いぞ」
こちらには相撲の概念が無いのにうっかり発言をしてたが、
「「「おおーーっ!!」」」
「やった! 力試しだ! 腕がなる!」
俄然盛り上がる騎士達。勝者ごと、好きなんだな。
そして小さめのテーブルを一つ用意し、大盛りあがりの腕相撲大会が始まり、ギャラリーがテーブルの周囲を囲む。
ワインやエールを手に騎士達からは盛大にヤジだか応援だかが飛ぶ。
「やっちまえカーライル!」
「負けるなよ、ボブ! お前にかけたぞ!」
対戦者は手を組んで、相手の方に手を倒そうとせめぎあう。
「ぬおおおーーっ!!」
「く……っ!! 流石に手ごわい!」
試合は白熱した。
「俺、この勝負に勝って恋人にチョコレートをあげるんだ……!」
「ひゅー! カーライル、お前やっさしいな!」
死亡フラグみたいなセリフを言うカーライル。
「ぬおお! 負けん! 俺が勝って妹に渡すんだ!」
「え、妹想い! ボブも優しいな!」
「俺は勝ったら自分で食うぞ」
「ははは、イザーク、お前はそうだよな」
「どうりやぁっ!!」
「……くっ」
ドッ!! 手がテーブルに倒されてついた! 勝負あり!
「くっ、負けた!」
「勝者、ボブ!!」
「ボブの妹愛のが強かったか……」
「単に筋肉量の差ではないか」
それ以降も腕相撲は賑わいながら勝負がすすみ、やがて頂上決戦も終わり、俺はそれぞれ上位の勝者達に景品を配った。すると、惜しくも初戦敗退したカーライルにアレンシアが近づく。
「カーライル、あなたの恋人とこれを一緒に食べなさい」
金色の包紙のチョコレートの入った袋から、アレンシアが二つだしてカーライルに渡した。
「奥様!! ありがとうございます!」
アレンシアが敗者に慈悲をみせた!!
ホーリーナイトのメンツも、「おっ!? 実はあの奥様、お優しい!」みたいな表情になってる。いい感じだ。
「アレンシア、優しいじゃないか」
ミルシェラの隣に戻ってきたアレンシアに声をかけると、
「恋人の為に挑んだ意気込みを評価しただけですわ」
「なるほど」
照れ隠しか?
「お父さまの分は?」
ミルシェラがそう言って俺を見上げた。
「私は大丈夫、また今度買ってこれるから」
「ミルのを分けてあげます」
と、ミルシェラは箱の中から可愛いピンク色のいちご味と茶色のチョコの2層になった小さい円錐形のチョコを取り出した。
「お……」
「あーんしてください」
「はい」
素直に口を開ける俺氏の口に小さいミルシェラの手でつままれたチョコが一つ入れられた。
至福!! うちの娘もとても優しい!!
「ヒュー!! 流石ミルシェラお嬢様もお優しい!!」
騎士達も拍手して場がめちゃくちゃ湧いた。
可愛いは正義!!




