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72話「精霊」

森の深部にて、水◯黄門みたいな登場の仕方をした俺は騎士たちに制圧され、羽交い締めにされた状態のスメスキー男達全員の股間を蹴った。



「ぎやっ!!」

「ぎゃあああっ!」

「ぐあっ!」

「うっっぐああ!!」

「がああっ!!」



痛みのあまり、地面に転がり、苦悶の表情を浮かべる男達。



「今回は現行犯だが、余罪もしっかり追及するぞ」

「閣下、私は拷問も得意です」



我がエルシード公爵家に仕えるクール系のイケメン騎士のジャスティンがそう言って手を挙げた。スメスキーのメンツもそれを聞いて、さっきまで顔を赤くしてたのに急に青褪めたりして、忙しいものだ。



「それは頼もしいな、 ジャスティン、取り調べ係は君に決めた」

「はい、お任せを」


「ところで閣下、着替えて来てもよろしいですか?」

「ああ」



ディエリーがそう言って仲間の騎士から袋を受け取り、茂みの向こうに一瞬消えた後、女装のエリーから本来の騎士姿になって戻って来た。



「なぁっ!? 男ぉ!?」


 本来のディエリーの姿を見て驚く犯罪者達は縄で縛られ、背中を騎士達に踏まれ、地面を這いつくばって見上げた状態だ。


「女好きのわりに、お前らの目は節穴だったな」

「くそーー! だまされた!」

「騙されたのはお前達のパーティーに入った女性達も同じだ」

「……っ」



痛いとこをつかれて押し黙る男達。



そしてこいつらを引き摺りながら森を出るのは大変なので、転移スクロールを使って森を出た。

転移先は罪人を集める施設で、つまりは刑務所的な所。


犯罪者を牢屋にぶち込んで、それから余罪の取り調べだ。例の代替わりギルドにも人をやって報告もする。


俺は拷問係のジャスティンを置いて、街の食堂で食事をしてから、宿で一休みした。



翌日の朝。


俺は魔法の伝書鳥を妻に飛ばし、悪人を捕らえたことと、犠牲者の冥福を祈る為にもう一度森へ向かうというメッセージを送った。



『引き続き、お気をつけて』



という、アレンシアからの返事が来た。



「今日はまず、どうされますか?」

「花屋で花を買う」

「分かりました」



そしてディエリー含む護衛騎士達と一緒に花屋に向かって花束を三つ買い、また森へ向かった。


そして過去の犠牲者、還らぬ人となった女の子の冒険者証という、ドッグタグみたいなものと、骨が見つかったところへ向かい、花をたむけ、祈った。


 彼女の魂が、安らかに眠れますように……と。

 その時ふわりと風が吹いて、黄色くなっている木々の枝葉を揺らした。


 まるで、ありがとうと言ってるかのように。



 ◆ ◆ ◆


さらに次にはディエリーの姉を助けてくれたという、例の親切な女性の霊の元へも向かう予定で、ディエリーの姉のホリーと合流する。


魔法の伝書鳥を飛ばし、先に現場に着いてるらしいディエリーの姉に、現在地を紫色の狼煙で知らせるように伝えた。


俺達はややして、 紫色の狼煙を見つけ、それを目印に森の中を移動した。


すると森の中にある川の側でディエリーの姉は待っていてくれていて、他に彼女の連れらしき三人の女性冒険者がいた。女性四人のパーティーは珍しい。

そしてディエリーに似て姉のホリーも美形で、その側には大きなガジュマルのような木が側に生えていた。

ガジュマルという木は幹から根っこがタコ足のようにぐにゃぐにゃしてるやつだ。



「はじめまして、エルシード公爵様、ディエリーの姉のホリーです」

「ああ、よろしく」


そして、ガジュマルのような木の根っこの上に神秘的な雰囲気の緑の髪の少女がふわっと現れ、ちょこんと座った。


その姿は人ではなく……どう見ても精霊だった。



「ド、ドライアド?」



俺は思わずファンタジー小説などに出てきた精霊の名を口にしたのだが、緑の少女は肯定するように頷いた。



「ええ、かつて私の窮地を救ってくれた霊の彼女はドライアドの力を借りて、私を救ってくれたのですが、いつのまにか完璧に融合を果たしていて…」


ディエリーの姉が言うには、男達に襲われかけた時、急にこの木の根が伸びてきてやつらの身体にからみつき、動きを止めてその隙に逃げられたという。


「まさか、人間の霊魂がドライアドと融合するとは……」

『触手攻撃ができるから、便利だと思って……』



なんと、意思疎通もできる。便利。



「な、なるほど、じゃあ君は……成仏はしなくてもいい感じなのかな?」

『ええ、ありがとう……私は大丈夫』


少し苦そうな淋しげな笑顔を彼女は作った。


「じゃあ、花だけでも受け取ってくれ……」



俺はそう言って、花束を持つディエリーを振り返る。



「いつぞやは、姉を助けてくれてありがとう」



ドライアドはディエリーから花束を受け取り、嬉しそうに微笑んだ。


「ついでにこれもよければ」


俺は魔法の袋からリンゴ飴を出してプレゼントした。ドライアドには実体があるので、もしかしたら食べられるかも?と思った為だ。


『わあ、綺麗でかわいい!』

「リンゴに飴をまとわせたもので、食べられるんだ」


ドライアドは俺から受け取ったリンゴ飴をペロリと舐めた。


『甘くて美味しい!』

「それは良かった」

『ありがとう、あなた、お日様みたいにオーラがぽかぽかしてるし、気に入ったから、お返しに薬草をあげる』

「そ、そうなのか?」


光魔法持ちだと、オーラがぽかぽかするのか……。


『うん、他にもいい薬草が欲しい時は声をかけて、生えてるとこを知ってるの』


俺は何かの薬草を貰ったので、またこちらからも礼を言って大事に袋に入れた。



「ありがとう流石ドライアド、植物には詳しいんだな。じゃあまたいつか……」

『うん』


うねった木の根っこに座り、赤いリンゴ飴を食べるドライアドに手を振って、俺達はまた転移スクロールを使って公爵邸へ飛ぶことにした。


「あ、ディエリーの姉のホリーだったな、仲間も一緒にスクロールで公爵邸に来るか?」

「え、いいんですか?」

「もちろん、こっちは時短のスクロール使いだし」


 せっかくなのでディエリーの姉とその仲間も一緒にってことになり、俺達はドライアドから薬草をお土産に貰って帰った。






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― 新着の感想 ―
ファンタジー世界の種族、妖精さん登場ですか!ただ、ちょっと悲しい展開でしたけど、来世は素敵な物語になるといいですね。
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