71話「森の深部」
実はディエリーのピアスには追跡魔法がかけてある。
だから彼が移動すればどこに行ったか分かるように、公爵家の魔法使いに細工してもらってるし……なんと、会話も盗聴できる。
食堂兼宿屋から出た俺は路地裏に身を潜めた。
そしてディエリーのピアスを通じて店内の会話が聞こえるので、こっそりと聞き耳を立てる。
「よう、女剣士のおねーさん、パーティー解散しちゃったみたいだねぇー、良かったらいいパーティー紹介しようか?」
「いいパーティー?」
「ああ、新人にも結構優しいとこなんだよ」
「パーティーの名前は何?」
「スメスキー」
かかった!! かなりあっさりと!
「あなた、スメスキーパーティーの人なの?」
「いや、俺はただの仲介」
スメスキーのやつら、わざわざ仲介者まで使ってるのか。無駄に金を持ってるな。
「紹介するとお金貰えるやつ?」
「ああ」
「そう……ね、あの浮気男が使い込んだ分、お金も稼がなきゃだし、じゃあ紹介してもらおうかしら、そのスメスキーに」
そして店から出て移動する仲介者とディエリー。
其後、魔道具のピアスから聞こえる話からすると、スメスキーのメンツには男とは見抜かれずに、奴らはすぐにディエリーをパーティーに入れる事にした。
そしてクエスト内容は、森の深部に魔獣の卵を取りに行くってやつらしい。
俺はエルシード公爵家の騎士達に応援要請を出した。
やることは俺の警護なので、仕事のうちだ、何も問題ない。
翌日早速、ディエリーとスメスキーが森に入る時、俺達も離れた場所からついていく。
違う冒険者パーティーに擬態してから。
ちなみにスメスキーは元は五人パーティーだった。
戦士二人、武闘家一人、魔法使い一人、薬草使い兼、ポーター。今はそれに女剣士のエリーを加えて六人になっている。
そしてやはり一人で抜けるのは大変なくらい、森の深部まできた。
道中では何匹も魔獣が出てきて、女剣士役のディエリーは後衛ではなく、前衛をさせられ、働きずめだった。かなり疲労するポジションだ。
流石に息が上がってきてる。そしてその時、魔法使いの指示で一行は歩みを止めた。
「……はぁ、流石に疲れたけど、休憩? それともこの辺に魔獣の卵があるの?」
「へへへ、卵をもってるのは、お前の方だな、エリーさんよ」
スメスキーの男達は舌なめずりをした。
このパーティーでは今、エリーだけが女性枠だった。
「は? 今、なんて?」
「今からお前に種付けしてやるって行ってんだよ!」
!!
『パラライズ!!』
スメスキーの魔法使いがマヒの魔法をディエリーに使った!!
思わず膝をつくディエリー!!
「お、お前達、何を……」
体が痺れて動けないディエリー。
「くく、ややハスキーな声が色っぽいな、エリー。さーて、もう我慢できねーから早速服を剥いちまえ!!」
スメスキーの男がディエリーの扮するエリーの服を脱がしに手を出した、その時!
ザシュ!!
うちの騎士の放った矢が、スメスキーのクズの腕をぶっ飛ばした。
石弓だと、首も腕も飛ばせるんだよなぁ。
強いね。
「ぐわーーっ!! 腕! 俺の腕があ!!」
『ディスペル!!』
解呪の魔法でディエリーにかけれたパラライズの麻痺を速やかに取る、公爵家の魔法使い。
「てめぇら、一体何者だ!?」
「貴様らを地獄に送る者だ! パーティーに加入させたばかりの婦女を暴行する不埒な輩め! 現行犯逮捕だ!」
俺は声を張り上げた。
「「「なにぃ!?」」」
驚くメススキーのパーティー。
「お前達! このクズどもをしばき倒せ!!」
「はい!!」
俺の命令で騎士達がスメスキーのメンツに殺到し、あっという間に制圧する。
「ディエリー、大丈夫か!?」
「痺れからは回復しました、大丈夫です」
「ディエリーだと? こいつはエリーって名前じゃ」
「俺の腕があ!」
仲間の疑問を他所に、右腕を飛ばされ、傷口から鮮血を飛び散らす男が騒ぐ。
「五月蝿いから、魔法使い、そいつの傷口とりあえず焼いて止血しろ」
「はい」
うちの魔法使いがみずからの手の上に火球を作りだした。
「なっ!? ぎゃあああ! やめろぉ!」
腰を抜かして後退りするスメスキーの片腕となった男武闘家。
「傷口を焼いて止血しないと出血多量で死ぬぞ? いいのか?」
「ぎゃああああっ!!」
腕が火球で焼かれ、悲鳴を上げる武闘家。
「閣下、止血、完了しました」
「そう、お前達のような人間のクズは、そう楽には死なせたくないからな」
「か、閣下だとぉ!?」
驚くスメスキーのメンツに、ネタばらしをする時が来た。
「我が領地内で婦女を騙し、暴行を加えるゲスな冒険者がいると聞いてな、貴様らを、私が直接裁きに来たぞ」
俺は被っていたフードを取った。
「ぎゃあ! その整った顔立ち! よく見ればエルシード公爵!!」
「なんだって!? 公爵がなんで、わざわざこわなとこに」
「お前らが悪さする為に、こんな深部まで来るからだろうが!」




