69話「ディエリー・スレイ」
収穫祭では暗殺者も出ず、ただのぶつかりそうな酔っぱらいしか出なくてほっとした。
そして、 俺は連日アレンシアと寝室を共にしてはいるが、手を繋いで寝ているだけである。それ以外に何かすべきなのか、よく分からないでいる。
そして祭りから数日後の今日も仕事の為、俺は執務室にいた。
すると昼過ぎに騎士の一人がわざわざ休暇申請を直談判しに執務室に来た。
その騎士は中性的で、綺麗な顔立ちで、騎士にしては線がやや細い。名前はディエリー・スレイ。
「5日間の休暇申請? 最近しんどかったのか? もちろん休んでくれて構わないが、体がしんどいなら医者か神官でも呼ぶか? 必要な薬があれば買うけど 」
ケアが必要ならしなければ。
あるいは滋養強壮に効くドリンクとか栄養剤とかも欲しければストックしておく所存。
「体調不良ではありません。最近気になる事件が冒険者界隈であったようでして、その調査に」
「公爵家の騎士が何故冒険者界隈の件の調査を?」
俺は不思議に思ったことはつい、訊いてしまう性質。
「私は騎士になる前は冒険者だったのですが……」
あ、そうなんだ。でも、ただごとではなさそうだ。
「話せば長くなりそうだな。気になるから椅子に座って聞かせてくれないか?」
「はい」
騎士は執務室に備え付けてあるテーブルセットのソファに座り、俺も自分用のデスクから移動し、対面側のソファに座り直した。
メイドが速やかにお茶の用意をしてくれた。
「簡単に説明しますと、雇ったばかりの未熟な女冒険者を一人では帰れない森の深部や洞窟まで連れてって性的な暴行をする不埒な冒険者パーティーがいるようでして……」
「なんて下衆でクズな真似をする輩がいるんだ……」
「うちは両親が早く亡くなったせいで姉も俺より先に女だてらに冒険者になって、俺達兄弟を食わせる為に金を稼ごうとしてくれて……」
なんか嫌な予感がしてしたぞ!?
「まさか、お姉さんも不埒な冒険者に暴行を……」
「はい、しかし暴行をされそうになったところを、同じように犠牲になったらしき女の子の霊に救われまして」
「え?」
超展開きた。
「最近また似た事件があったとの噂を非番の日に酒場で聞いてしまいまして……」
「人は愚かにも似たことを繰り返すんだな……よし、その不埒者達を見つけて冒険者資格を剥奪、もしくはぶち殺せばいいんだな? 俺もその調査に同行したい」
そのろくでなし、俺的にも許せないから処罰したい。うちの領地で悪さするやつ、許さん。
「霊に救われたなんて……公爵様は信じてくださるのですね」
「俺はレイスやアンデッドと遭遇してるんだ、親切な女性幽霊が似た悲劇に遭いそうな娘を見つけて救ってもおかしくはないと思う。ついでにその親切な女幽霊さんの出る所に花をたむけに行こうじゃないか」
「……公爵様に会うと、霊の彼女も天に還れるかもしれませんね」
……ん?
「でも……もし天に還ったらもうかわいそうな罠にかかった女性冒険者がまた出た時に、助けられないような……どちらがいいのか……」
「しゃべれる幽霊みたいなので、天に還りたいか本人に聞くといいかもしれませんね」
それは確かにそうだな。
◆ ◆ ◆
「すまない、我が領地内でとんでもなく下衆な事件が勃発していたので、直接調査に行く事にした。こちらの警備も引き続き厳重にしておくから、人員を増やし、高位神官も雇って結界もはってもらう」
「まぁ、高位神官まで!?」
「公爵夫人の警護の為だから、不思議ではないだろう」
「分かりました……お気をつけて。私は信頼できる同派閥の夫人や令嬢と屋敷の中での詩の朗読会や刺繍の会しかしばらくは予定しておりませんのでご心配なく」
「そうか、では留守をよろしく、アレンシア」
アレンシアは上品な微笑を浮かべて分かりましたと言ってくれた。
◆ ◆ ◆
中性的なイケメン騎士ディエリーと二人になって、調査の事を話す事にした。
場所は秘密裏に公爵邸の庭園のガゼボだ。
俺は既にやる気満々で冒険者風のコスプレをしてるが、彼は休日の騎士の服装をしている。
「ところで君の調査はどのようにするつもりなんだ? 酒場で聞き込み? まさかやみくもに洞窟や森の深部へパトロールに行くつもりだったのか?」
「酒場で聞いて、良い情報が得られ無ければ女剣士に……その、自分で女装してでも囮になるつもりです」
「なんと! ディエリー、君、そこまでの覚悟を!」
「女剣士風であれば、多少ゴツくても、何とかなるかなぁ……と、実は前に酒の席でお前女装似合いそうとか言われて調子にのってやってみたら……予想外に似合うと言われたことがあります……」
なんと! 既に女装経験済み!!
「確かに君は綺麗な顔立ちだし、身体つきも細い方だから、女装もいけそうだなぁ。でも君が女装で不埒な冒険者を釣るなら俺のような男の冒険者が側にいたら、邪魔か」
「しかし考え方によったら、酒場で仲たがいするパーティーのフリをして、おびき出す事もできるかもしれず」
「ああ、酒場で派手に喧嘩別れする演技な、有りかもな、ディエリーが急に一人になる信憑性がでる」
「そこで必要なのはパーティー分裂の理由付けですが……」
「実は君とは恋人同士でパーティーを組んでいたけど、俺が金使い荒いとか、他の女と浮気したことにしてパーティー分裂ってことにしてもいいぞ」
「なぜに公爵様の方がろくでなしを演じるんですか」
ディエリー、君は俺が泥を被るのを懸念してるのか? どうせ、演技なのに。
「女の方がかわいそうな側になった方が、いい顔しつつ詐欺師は声かけてくると思うからさ」
「なる、ほど……」
そしてイケメン騎士ディエリーは女剣士になる為、公爵邸を出てからとある宿屋内で女装をし、女剣士エリー(偽名)となった。
よし、コレより調査任務開始だ!




