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67話「タコの唐揚げ」

 暗殺騒ぎで家族の側から、俺も当分は心配で離れられない為、しばらくは家でできることをする。


 そして書類仕事の後、実は食べたいものがあって、俺は厨房に行った。


 元々この世界の料理は塩とハーブでごまかすばかりで、舌が肥えた俺の胃袋を満足させるには少し足りない。


 だからこそ俺は自ら厨房に赴く。今日はタコの唐揚げが食いたいから!

 そう、日本の居酒屋で愛したあの至高の肴を、この異世界で再現するのだ!


「公爵様、食材は本当にこちらでよろしいでしょうか?」


 厨房の料理長が心配そうに声をかけてくる。


 彼は無骨な顔に似合わず繊細な手つきで包丁を操る頼れる男だ。


 俺は問題ないと答えた。

 俺が前回自ら日本のタコを仕入れてきたのだ。こいつを唐揚げにしたら、絶対にうまい。



「料理長まずはこのタコの足の下処理だ。既に洗ってはあるけどな。油はねをしにくくする為、吸盤の下あたりから皮を剥いでおく。そう、まずは吸盤の下に包丁で浅く切れ込みを入れるんだ」

「はい」


 そして魔法の袋からキッチンペーパーを取り出して料理長に手渡す。


「そして皮を剥いでいく訳だが、この紙でつかんでぴーっと剥ぐ。後はまた水で洗いして紙でまた水分を取るために拭く。そして一口大の大きさにぶつ切りをする」

「はい」


「そして包丁の角でタコを叩く、フォークで刺してもいい。歯切れと味のなじみがよくなる、が、手を怪我しないようにな」

「はい」


 これでまたキッチンペーパーで拭き取り、タコの下準備終わり。



「後は下味のつけダレを作る……醤油、酒、砂糖、胡麻油、黒胡椒、すりおろし生姜、すりおろしニンニクを混ぜてから、さらにタコを入れて混ぜる」


 ここでしっかりタコにタレをからませる。


「はい」

「あとはしばらく、1時間ほど魔道具の冷蔵庫にタコを入れて冷やす。1時間経ったら私がまたここへ来る、その間にミルシェラ用にはかぼちゃのスープとクロワッサン等を頼む、あ、かぼちゃのスープは裏ごしをするやつだ」


 裏ごしのやり方は前に料理人達に教えた。


「かしこまりました」


 ──そしてまた1時間後に俺は厨房にきた。


「片栗粉と米粉をムラのないよう混ぜ衣を作る。そしてタコに衣が付きやすくするため、薄力粉をつけた後で、さっき作った衣をまぶす」

「はい」


(衣に米粉を混ぜることで唐揚げのサクサク感を引き出す…これぞ日本の技術)


「そしていよいよタコを揚げる」

「かしこまりました。揚げ加減はどの程度に?」

「およそ2分、この砂時計が落ちるまで。長く揚げすぎて硬くならないように注意する」



 俺は今度キッチンタイマーを買ってこようと思いつつも、今回はその辺にあった砂時計を使うことにした。そして料理長が手際よくタコを揚げる姿を側にいて眺める。

 うーん、厨房に広がる香ばしい匂いとジュージューという音に期待値が上がるな。



「……しかし、公爵様の料理への情熱、毎度驚くばかりです」

「美味しいものは活力の元だからな」


(そして俺の舌が日本の味を求めてるから)



「よし、揚がりました!」


 唐揚げが完成!!


「うむ!」

「味見をされますか?」


 当然とばかりに俺は頷いた。


 皿に盛り付けられたタコは、外はカリッサクッとして、中はプリッと弾けるような食感になってるはずだ。試しに一つ口に放り込む。


「……うまい!」


 想像通りにカリッサクッとした食感! これは…日本の居酒屋の味だ!


 そして俺はウキウキと食堂へ移動した。全部厨房で立ち食いする訳にはいかん。一応公爵だから。


 大きな窓がある夕暮れが迫る食堂で、俺とミルシェラは食卓を囲む。


 俺はタコの唐揚げがメイン。ミルシェラには秋の恵みが織りなす小さな幸せといったところで、カボチャのスープとクロワッサンだ。


 ミルシェラはテーブルにちょこんと座り、目をキラキラさせている。


 俺の方はまずタコの唐揚げ! いざ実食!


 醤油やニンニク風味がタコの旨味を引き立て、片栗粉と米粉の軽い衣が絶妙な歯ごたえを生む。思わずビールで追いかける。


 日本で冷やしたものを魔法の袋に入れてきたので、キンキンに冷えてやがる!


 ミルシェラ用に作ってもらったメインのカボチャのスープをメイドが銀の器に注ぐ。

 パンは焼きたてのクロワッサンで、チーズとりんごのデザートもついている。


 オレンジ色のスープは秋の陽光を思わせ、ほのかな甘みとハーブの香りが漂う。ミルシェラがスプーンですくって口に運ぶと、頬がふわっと膨らむ。


「お父様、甘くておいしいです」

「そうか、気に入ったか、俺もせっかくだし、かぼちゃスープとパンも食べよう。……うん、美味い!」


 この世界の料理には俺が教えるまで裏ごしの概念がなかったみたいだから、口当たりまろやかなスープはさぞ美味しいだろう。


 今日もまだアレンシアはヨーグルトとパンでいいと言ってたから、もう少し回復したら彼女にもたこの唐揚げを食べさせてみようかな。

 日本の居酒屋メニューが生まれながらの貴族のアレンシアに口に合うかは……謎だけどな。


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― 新着の感想 ―
どこの居酒屋料理ですかね。爺やも知りませんでした。タコのから揚げ、、あるんですね。作ると面倒そうというか、爆発しそうです(笑)You〇ubeにもありましたw、具合の悪い奥様には、まだだめそうですけど、…
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