表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/121

61話「親戚が来た」

 ミルシェラは翌日には復活したので、以前騎士に話に聞いていたブラックベリーの実る森に一緒に来た。


 森の深部ではないが、一応森に入るので、今回ミルシェラには高級ドレスではなく、エプロンドレスを着せた。汚しても問題ない服だ。


 そして本日の森の中は涼やかだった。

 鳥の囀りも聞こえて、いいピクニック感がある。


 見つけたブラックベリーの木はトゲのない品種だったので、ミルシェラが触っても大丈夫だろう。

 虫だけ気をつければ。


 同じ株から赤い実と黒い実、熟し方が違うものが沢山実ってる。

 樹高は高くても2メートルくらいで、耐寒性と耐暑性もある植物と言われてる。



「黒いのが完熟してて美味しいはず……うん、美味い」



 一つ摘んで食べてみたら甘酸っぱい。

 酸味もそれほど強くない。

 生食すると酸っぱくて辛いものはジャム等にした方がいいだろうけど、この株は生食可能なくらい甘い。


 ブラックベリーには、抗酸化作用や美肌効果、生活習慣病予防、疲労回復、便秘改善などの効果が期待でき、特にアントシアニンやエラグ酸、ビタミンC、ビタミンEなどの栄養素が豊富で、これらが健康維持に役立つとされている。


 ──そう、皮下脂肪にも効くからダイエットにもいいという。特に女性には嬉しい効能があるのだ。



 ミルシェラも楽しそうに摘んでいた。



「お父様、食べてみてもいいですか?」

「いいよ」


 ミルシェラは黒い実を一つ口の中に入れ、


「甘酸っぱい……」


 と、愛らしく微笑んだ。



「この果物、体にいいんだよ」

「じゃあお母様にも沢山お土産に摘んでいかないと!」

「ああ、そうだな」



 護衛騎士達が見守る中、しばらくブラックベリー摘みを楽しんだ。

 田舎のスローライフ感がある。


 騎士はずっと周囲を警戒してくれていたが、魔物の襲撃も人間の襲撃もなく、その日は本当にのどかだった。


 ちなみに妻のアレンシアも誘ってはみたのだが、虫がいそうだからと、森へは来なかったし、屋敷でエステのようなものを受ける日らしかった。


「これは御屋敷でジャムにするんですか?」

「ああ、ジャムにしたらヨーグルトに入れて食べてみよう」



 ベリー摘みを終え、俺達は公爵邸に帰った。

 そして料理人に採れたブラックベリーを籠ごと渡し、ジャムにしてもらう事にした。


 晩餐にはヨーグルトにブラックベリーのジャムを早速混ぜて出してもらった。



「悪くありませんわね」

「だろう? それにブラックベリーは美容と健康にいいらしい」

「まあ! そうなんですか!?」

「ああ」

「おかわりは……いえ、何でもありません」



 素直におかわりが欲しいと言えばいいのにな……。



「明日の朝も出すように言っておくよ」

「はい。あ、明日と言えば、あなたの親戚が来られますから、屋敷にいてくださいましね」

「ああ、そういえば手紙がきていたな」



 ◆ ◆ ◆



 後日、エルシード公爵家の親戚が現れ、家主として、俺が対応することとなった。


 親戚の叔父と叔母は秋めいてきて涼しくなっていたので、庭園を散歩しつつ話しをしたいと言ってきたので我々は応接室から出て来た。



 そしてその親戚からはとんでもない話をされた。



「は? アレンシアが男の子を産めないようだから愛人を作るか離縁して新しい妻を迎えろ? 正気で言ってるんですか?」



 なんてことを言い出すのか、この痴れ者達は!

 しかし一応アレンシアの耳に入らないよう、わざわざこやつらが庭で話そうとした理由が分かった。



「もちろん、家門の為に跡取が必要だし、他の家でもやっていることだろう? なぁ、ケーネスト」



 叔父だからと言って、言っていい事と悪い事がある。叔母も叔父に賛同してるようで、全く止めようとしない。



「とんでもないことを言いますね。病める時も健やかなる時も伴侶と家族を愛し守っていくと神に誓いを立てたはずであり、妻が男子が産めない場合は離婚しますとか、愛人を作りますなんて内容は含まれてないはずです」



 俺は言葉に怒気をにじませ、いつもより冷たく低い声で話した。



「それでも男子は必要だろう? 紹介したい女性がいるんだ」


「なんですか? 女衒ぜげんのような真似を……。やめてください。私は他に女を作って妻を傷つけるような真似はしません、娘にたいしても父親として誇れないような行動はできません」


 俺は叔父の誘いをきっぱりと断った。


「先だっても男子も残さずに死にかけたこともあるではないか」

「だからなんですか、私は今、生きているでしょう」

「今はな、だが、すでにああなった事がある以上、慎重に、もしものこと事を考えるべきだろう?」


「いざとなったらミルシェラに信頼できる婚約者を見つけて婿入りさせればいいんでしょう、遺言にも書いておきます」

「後悔するぞ、ケーネスト」



 何だこいつ脅しか? 言う事を素直に聞かないなら俺を殺してでもエルシード公爵家を乗っ取るつもりか?



「私は妻を裏切らないし、そしてその事で後悔はしません」


 俺ははっきりと、そう宣言した。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まぁ、戦国時代の日本もありました。この手の話は、、男子を生めないという理由でね、頑張れ!古き悪しき風習を壊し、新しい風を起こせ!!、、ってどっかの野党の選挙演説になりそう(笑)因みに「エラグ酸」知りま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ