58話「お誘い」
そして買い物した後は寝る前に作業。
写真館で撮ったものを売り物にせるための作業だ。
ケーネストのこのルックスで日本での買い物資金を稼いでもらいたい。
タブレットで編集作業して、サイトに登録。
そして帰宅して、資料集の売り上げでまた便利そうなものを買った。
妻へのお土産に綺麗なレースや化粧品とかもネットでポチる。
こっちはめちゃくちゃかわいい見た目の化粧品が多いからな。
今期の夏はマーメイドモチーフ推しなのか、貝殻のデザインのものなどが出ていたのでそれを買ってみた。
流石にハイブラ買えるほどにはこっちでは今は稼げてないから見た目で選んだ。
ま、安心安定の資星堂とかのファンデとかも買っとくけど。
娘にもこっちの映画や本を見せてやりたいけど、言語が違うからなぁ……。
無念。
ひとまずミルシェラには綺麗なレターセットと日記帳、そしてぬいぐるみをお土産にした。
そして異世界の仕事も実は密かに持ち込んでいた。
書類をコピーしたり整理したりもした。書類もちゃんと魔法の袋に入れて来たんだ。
異世界言語は入ってないため、PCで文字がうてないので手書きになるのは面倒くさいけど、ここは仕方ない。
そして通販が揃った頃には異世界に帰る。
◆◆◆
俺は5日目の夜に公爵邸に戻った。
今は夜の10時くらいで、外はもう暗いし、日本の夏と比べてだいぶ涼しい。
そしてやはり夜だというのに律儀に妻が出迎えてくれた。今夜も綺麗なドレスを着てる。
「ただいま」
「今回は遅かったじゃないですか?」
ん? そこはかとなく機嫌が悪い?
亭主元気で留守がいいってのは、こちらの女性には当てはまらないのかな?
「すまない、色々と買物とかをして時間がかかったんだ、これはお土産だ」
俺は魔法の袋からキラキラした綺麗な化粧品の類を出した。
「まあ、なんてキラキラして綺麗な……」
思わず男の俺でもかわいいのでは? と、パケ買いした化粧品にアレンシアも見惚れてる。
「化粧品の使い方は、えーと、まずこの化粧水や乳液で肌を潤してからパウダーの類を使ってくれ」
「はい……ところでこの液体は、何です?」
アレンシアは化粧水や乳液の瓶を見てはいるが、読めない異世界の文字の表記されたラベルに眉根を寄せている。
「肌にいい成分が色々入ってる、ダンジョン産だ、心配なら俺が先に目の前で使ってみせようか?」
成分については説明が色々面倒なのではしょってしまった。
「いいです……メイドで試してみます」
「そうか、わかった。ところでミルシェラは?」
「あなたが夜に帰ってくるから寝てますわよ」
「そうか」
とくに変わりはなかったならいい。
「ところであなた、ちゃんと仕事はしているのですか?」
今回は5日も留守にしたせいで突っ込まれた。
「あちらに持っていってたよ、全くしてない訳ではない」
「まったくもう、あんまり長く不在にしないでください」
「悪かったよ、家の事を任せきりで、あー、そうだ、お詫びに観劇にでも連れて行こうか? 美術館巡りでもいいぞ」
思いつきでおでかけに誘ってみた。
「それは……デートのお誘いですか?」
アレンシアは目を見開いた。驚いてる顔だ。
俺はそんなに意外な事を言っただろうか?
「デート? まぁ、そうとらえても問題はないが」
しかし、改めてデートと言われると少し照れるな。
「じゃあ……急に言われましてもすぐにはスケジュールも空いてませんから、秋にある第一王子殿下の誕生日パーティーの後にでも、王都で」
もう、夏も終わるから、割とすぐではある。
妻はそう答えるなり、俺に背を向けたが……耳が赤かったような?
「わかった、王都で──」
俺がそう言い終わる頃には妻は早足で去って行った。 ま、いっか。
そういや美術館巡りや観劇となると王都がいいのか。芸術系は首都系に集まってるもんだろうしな。




