50話「オムライスとシードル」
俺と王女殿下がモンドラで役目を果たしてから、そこで1泊することとなった。
宴の終わりに用意されていた部屋に向かう途中、廊下で宰相が我々に声をかけて来た。
「エカテリーナ王女殿下、エルシード公爵様、お二方とも、今から王城のバルコニーまでおいでください」
「「はい?」」
俺と王女は何故バルコニーなんだと首を傾げた。
「民草が城の周りに集まって来ています。雨が降った事がよほど嬉しかったようですので、雨を呼んでくださった客人に皆の前でお礼を言わせて欲しいと王がおおせです」
ああ……そういうことか。
本当にバルコニーに王と王妃と王子王女が待ってたし、民も雨が降ったと大喜びでわーわーと祭り状態だった。
しかし、雨に濡れながらなので皆、びしょ濡れじゃないか。
「この度、雨を呼んでくださったフェルデ王国からの聖なる使者、エカテリーナ王女殿下とエルシード公爵のお二人に盛大なる感謝を!!」
また派手に下に集まった民衆達からわーっと歓声が上がった。
ははは、救世主扱いだな。
水は命を維持するのに大切なものだから、おかしなことではないけど。
そして我々は降りしきる雨の中、モンドラの豪華な客室で1泊してから神殿のゲート経由で国に帰国し、王女は王城へ、俺は公爵家にそれぞれ帰宅した。
神殿に向かう途中では今から帰るコールを魔法の鳥がしてくれているので、夕刻には公爵家の屋敷に帰った訳だが、こちらの空は……見事に晴れてる。
綺麗な夕焼け空が見えたし、玄関では美しく着飾った妻が律儀に出迎えてくれた。
この辺はマメでえらいなと思う。ちゃんと綺麗なドレスを着て仕事で遠出をしてきた夫を出迎えてる。
「お帰りなさいませ、あなた」
「ただいまアレンシア」
「モンドラでは何も問題はありませんでしたか?」
「雨も降ったし、大変感謝されたよ」
「まぁ! どうしてそれを魔法の鳥ですぐ伝えてくれなかったのですか!?」
「え? 何故だ? モンドラで雨が降ると君も嬉しいからとか?」
アレンシアは何かあそこと関係あったのか?
「あ、雨が降らずにあなたや王女殿下が気まずい思いはしてないかくらいは気をもんでおりましたのに!」
「ああ、そうなのか、心配してくれたのか。しかし雨が降らずとも別に殺されはしないから、別に君は気にしないかと思った」
「全くもう!」
「すまない、気がまわらずに」
「ともかく、晩餐の用意はできておりますので」
「あ、そう言えばミルシェラは?」
マイスイートエンジェルは? 変わりないか?
「晩餐の席におりますわよ」
「ではそこで今回の土産話をしよう」
そして俺が晩餐の場たる食堂に到着するなり、駆け寄って来たミルシェラに飛びつかれた。
かわいい!! 頭をよしよししてから席に着き、今回の土産話をしながら食事をした。
「まぁ、それではあなたは完全に救世主扱いではないですか」
「なんでパパが祈ると神様が来たのでしゅか?」
「んん~、私がその水を呼べる神様をたまたま知っていたからかな?」
「パパしゅごい」
「たまたまだよ」
何故か俺の体が光っていたとしても、本当にたまたまだと思うから。
だって俺、元はただの社畜だし。
まだ神社の神主とかやってたら、もしかしてとは思うけども。
ちなみに今夜の晩餐は出かける前にレシピを渡して伝えていた俺のリクエストのオムライスだ。
出張の後でミルシェラに会うので、子供の好きそうなメニューにしてもらった。
案の定、ミルシェラも美味しそうにはぐはぐとスプーンを手にして美しい黄色い卵に包まれたオムライスを食べてる。
米も炊き方を料理人達に教えて預けていたので、ちゃんと中身はケチャップライスだ。
つまりチキンライスの中身的なやつ。
キャンドルの灯りに照らされたシードルを傾け、俺は自らを労った。
しゅわっと弾ける微発泡の口当たりがなんとも爽やかでフレッシュ&フルーティなリンゴの果実味がこの夏にもオムライスにも合う。
──俺、今回もお疲れ様でした。




