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48話 「白龍様」

「エカテリーナ王女殿下、エルシード閣下、祈りの場はこの大神殿近くの川の側となっております」

「「はい」」

「では、この神輿にお乗りください」



「神輿しに!?」



 モンドラの第一王子が用意したのは、確かに屋根付きの神輿であったので、思わず大きな声を上げてしまった。

 神輿で担がれて行くのは想定外だったのである。



「はい、お客様を川付近まで歩かせる訳にはいきませんので」


 だがしかし、そこはせめて馬車じゃないんですか?


「そうですか……王女殿下はともかく私は担ぐ人の負担になるでしょうから、歩けますが」

「公爵様もお気になさらず! 屈強な者が担ぎますゆえ!」


 確かに神輿を担ぐ為に待機してる男性達は屈強そうだった。

 こちらも民族衣装を着ているが、上半身はほぼ裸で筋肉隆々なのである。



「エルシード公爵、せっかく用意してくださっているのだから、乗りましょう」


 王女殿下にまでそう言われたら、断れない。


「はい、殿下」

「さあ、どうぞ」


 ……どうしても他国のゲストに徒歩移動させるのが気がかりらしい。ならば仕方がない。


 俺とエカテリーナ王女殿下は担がれて移動した。


 そして神輿は1つだけだったので、第一王子はどうやって移動を? と、思ったら、何と魔法使いがお鼻の長い、動物のぞうさんを転移召喚し、それの背に乗った!!


 おいおい、ぞうさんがいるなら、そっちでもよかったんですが!


 俺と王女殿下は同じ神輿に乗り、隣あって座る事となってしまった。

 あ、ちなみに護衛達には馬がちゃんと用意されていた。



「モンドラの第一王子はずいぶん大きな魔物を飼い慣らしていますね」


 王女殿下は、大きなぞうさんを見ながらそう言った。



「恐れながらエカテリーナ殿下、あれは魔物ではなく、動物ではありませんか? 私には飾り立てた動物のぞうに見えます」


「ゾウ? あのような大きな動物は初めて見ました」

「多分、ただの動物です」


 どう見てもただのぞうさんだよ。



「魔物の気が全く感じられませんから、あれはエルシード公爵の言われる通り動物で合ってます」


 王女殿下のお付きの魔法使いがやはりあれは動物だと教えてくれた。



「まあ、不思議なほど大きな動物がいるものなのねぇ……」

「転移召喚魔法で呼び寄せればティムした魔物に見える上にわが国やその周辺諸国にはいませんから、ご存知なくても致し方ないかと」


「公爵は物知りねぇ、私はもっと動物のことも勉強しなければ……」


 しかしこの世界の動物図鑑がどれほど充実してるのかは俺には分からんので、


「あれは何かと聞けば教えてくれる誰かがいるかもしれませんし、あまりご無理をなさらず、殿下には他にも覚える事が沢山おありでしょう」



 と、言っておいた。



「私は女だから勉強すると言っても、弟達程ではないわ。まだ彼等が成人前の子供だから、私が外交に出ているけれど」


 エカテリーナ殿下は少し淋しげな様子だった。

 便利につかわれていても王子殿下達が成長するまでのつなぎだと思ってる感じがする。

 勉強する意欲も高い立派な方なんだけど継承権がないのは残念なことだ。


 どちらかと言うと俺ならば王様より女王様の言うことを聞きたいけどな。


 神輿の上で王女殿下と雑談をしていたら、いつしか儀式の準備であろう、祭事スペースの作られた川の側に到着した。


 が、しかし。



「川が……干上がっているわ……」

「そのようですね、これは深刻だ」



 見事に眼前の川が干上がっていて、事の深刻さを物語っていた。



 巫女達が我々に頭を下げてから、特設ステージのような段差のある場所に並んだ。


 そして楽師達も既にスタンバイしていて、ついに雨乞いの儀式が始まった。


 雨よ……降ってくれ……。

 ジリジリと照りつける日差しの下で、20分くらい巫女達が汗を流しつつ舞い踊っているが、なかなか雨は振らない。


 30分、40分、未だ雨雲が来る気配も無い。

 おいおい、夏の太陽の下だぞ、そろそろ熱中症も心配なんですけど!?


 隣に座ってる殿下も額から滴る汗をハンカチでぬぐっている。


 ここまで来ると俺も、この手に汗握る状況では祈らずにいられなかった。


 俺はこの世界へと来る前に、霊体で龍神神社に行ったことを思い出し、思わず雨を呼べることでも知られる龍神様に祈った。



『龍神様! どうかこの地に雨を降らせてやってください!!』


 手を合わせて。


 すると、何故か俺の体が発光し始め、天空に大きく神々しい白い龍が現れた!!



「おお!? なんだあれは!?」

「龍神様! きっと雨を呼ぶ吉兆の龍神様だ!」


 と、俺が思わず叫ぶと、


「えっ、異国の神!?」


 と、モンドラの者達がざわめいた。


「いいからあなた達も一緒に祈ってくれ! 雨をくださいと!」


 俺の言葉にモンドラの者達が一斉に膝をついた。そして、



「「「神よ! 雨をお恵み下さい!!」」」


 どざーーっ!!

 天から雨が降ってきた。

 晴れてるのに、雨が降ってきたのだ、天気雨だ。


「「「雨だーーーーっっ!!!白き異国の神よ! ありがとうございます!!」」」



 歓声が上がった。

 大盛りあがりのモンドラの皆様。


 こうして……ほんとうにモンドラに久しぶりに雨が降ったのである。



「エルシード公爵は聖者なの? 本当に雨を呼ぶ神様がお出ましになるなんて……」



 龍神様は体感で5分くらい天におられたが、今はもう姿を消し、雨だけが未だ降り続いてる。


 目の前の川が、まるで本来の姿を取り戻すまで降り続けるかのように。



「さぁ? 確かに龍神様とは多少の縁はありますが」

「あれで多少だなんて……」


 降りしきる雨の中で狂喜乱舞するモンドラの人達を眺めつつ、王女殿下がため息をついた。


「王女殿下! 神を呼べる聖者様をお連れくださったのですね! ありがとうございました!!」



 びしょ濡れの第一王子のマハドがエカテリーナ殿下の前に膝をつき、その手の甲にキスをした。


 俺はただの元社畜なんで聖者は言い過ぎだと思うけど、とにかく雨は降ったので、エカテリーナ殿下と一緒によかったですね。と、マハド王子に声をかけた。






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― 新着の感想 ―
いやぁ~、まさか、こっそり、七つの玉、、揃えてませんでした(笑)でも、白くはないですけど(笑)、色々、ご利益がありそうだけど、そのまま天に召されなければいいですが、
後からでも良いので祠を作ってお供物を差し出さないとですね・・・異界とされてたから思わず日本の神基準で書いたけど良いのかな?
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