表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/115

43話「おつまみ」

 その日は午前中に社交ってことで妻と護衛騎士とで湖のピクニックへ向かった。


 スイレンの咲く湖と聞いて行く気になったのだ。

 モネの絵を想像しながら行ったら、似たようなピンクのスイレンが咲いていた。



「ボート遊びが出来るらしいが、乗ってみるか?」

「あなた、漕げるんですか?」

「流石にオールを漕ぐくらいはできる」

「では信用しますよ?」


 とは、言いつつもなんか不安げな妻。



「心配ならすぐ近くに護衛騎士のボートを配置しよう。お前達、別のボートに乗ってついて来てくれ」

「かしこまりました」


 俺は騎士に声をかけて、近くにいてくれるように頼んだ。



「ボートは乗る時に揺れるのが慣れませんわ」


 おっかなびっくり船着き場から手漕ぎボートへ乗り込もうとする妻。


「まぁ、水の上だから多少は仕方ない、お手をどうぞ」



 俺は妻にエスコートの手を伸ばした。



「……ありがとうございます、きやっ!」


 手を掴もうとしたその時、体勢を崩しかけた妻。


「おっと! 危ない」


 俺はよろめく妻をしっかりと抱き止めた。ケーネストの体幹はしっかりしているらしくちゃんと支えられたことに安堵した。


 抱き止めた瞬間は、まるで少女漫画みたいな絵面だと思ったが、原作は女性向け漫画だから、あながち間違ってはいないな。



「や、やっぱり小さな船は苦手ですわ……」

「なら、なんで乗ろうと思ったんだ」

「他の人達が乗っているじゃありませんか」



 周囲を見ればこのピクニックの参加者の多くがボートに乗っている。



「なるほど、空気を読んだのか」

「ふう……」



 冷や汗をかいたのかハンカチで額の汗をぬぐう仕草をする妻。


 そういやひまわり畑に行った時に沢山お土産もくれてたんだよな。

 俺は懐から魔法の袋を取り出し、更にひまわりを出して舟に飾った。



「あなた、綺麗ですけど急に何をしているんですか?」

「見てのとおり、映えると思って船にひまわりを飾ってる」


「ばえる……?」



 そしてタブレットを取り出し、不思議そうにする妻とひまわりに飾られた船や、湖のスイレンなどの写真を撮った。

 今度は撮影用のカメラを日本から持って来よう。



「あなた、それにお花なんか入れていたんですね」

「こんなこともあろうかと」

「変わった人ですね」

「ひまわりは種も食べられるぞ」


「ひまわりの種だなんて、リスじゃあるまいし」

「いや、本当だぞ、パウンドケーキに入れたり」

「ケーキに?」

「そうだ、今度作ってみせよう」



 ひまわりの種のケーキの話を聞いて何故か妻はおかしそうに笑った。

 よく分からないが、リラックス出来たなら、それでいい。


 そうして俺達はしばらくボート遊びをしたが、転覆などせず、ちゃんと岸まで戻った。



「ふう、無事に陸まで戻れましたね」

「ちゃんとオールくらい漕げると言っただろう」

「今後は信用しますわ」


「まぁ! 公爵夫人のボートはとても素敵ですわね! お花がいっぱいで!」


 何処ぞの貴族令嬢が俺達の使ったボートに感動してる。


「主人が突然飾り始めたのですわ」

「素敵ーー」


 貴族のレディがひまわりに飾られた花の船を見て、目を輝かせている。


「良ければ、お乗りになりますか? あなた、しばらくひまわりはボートに乗せていても?」

「かまわないぞ」

「だそうですわ」


「まあ! ありがとうございます! カーライル!」

「はい、お嬢様」


 どうやら身なりからしてこのカーライルという男性は護衛騎士だ。


「あなたとこのボートに乗りたいわ、いいでしょう?」

「かしこまりました」



 おっと、これは騎士と令嬢の組み合わせだ! 素晴らしい!

 俺は舟に乗る護衛騎士とレディの二人をにこやかに二人の様子を写真に撮ったりした。

 帰ったらミルシェラに見せよう!



 その後は美味しいものを食べたり飲んだりして、何事もなくピクニックは終わった。



 夕食後になって、バルコニーでの晩酌の時間となり、俺はミルシェラにボート遊びをする騎士と令嬢の画像を見せた。



「ほら、これが今日行った湖での出来事だ。このボートに乗るレディと騎士、素敵だろう! 騎士もかっこいいし!」


「うん! ……じゃない、はい! お花いっぱいのボートキレイ!」


「……またあなたはミルシェラに騎士と令嬢の良さをアピールしているんですか」



 ミルシェラに騎士の良さをアピールしてると、急に現れた妻に見つかった。



「いいじゃないか、実際素敵だったろ」

「花のおかげでしょう」


 妻の態度はクールである。


「じゃあ俺、いや私の手柄だな」

「すぐ調子に乗るんですから……」

「わははっ」



 妻になんか言われても、今夜の晩酌のお供は 枝豆ととうもろこしのつまみ上げとキュウリの浅漬けでご機嫌だ。美味いから。


 そして子供のミルシェラにはサイダーだ。


 俺はどさくさに紛れて同席した妻にもおつまみを勧めたりして、上機嫌でその夜を過ごした。


 このアレンシアも実はけっこう寂しがりで可愛いんじゃないか?

 わざわざこうやって構われに来てるあたり……な?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ひまわりの種!MLBの選手(〇谷選手)ですかね!爺やは、オウムを飼っていた時の餌で、試しに食べてみましたが、、激マズでした(苦笑)さすがに、ケーキは見たことがないですね。ググってみます!
お猫様の同類と考えれば行動パターンは理解できる・・・か?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ