40話「姪っ子の心愛ちゃん」
「おにーさん誰?」
弁当屋のバックヤードに姪っ子が現れた! この子は確か小学1年生で7歳。 ツインテールのなかなか可愛い子だ。
ユニコーンが好きみたいでユニコーン柄のタンクトップを着て、ジーンズ生地のショートパンツを履いている。
きっと夏休みで店の奥側に建ってる家の中にいたんだな。
「涼おいたんの友達なんだ、よろしくな、俺の名前は健人」
「ケント! イケメンだー!」
子供でもケーネストがイケメンなのは分かるらしい。キャッキャッと喜んでいる。
◆ ◆ ◆
姉の弁当屋の奥にある母屋の方に案内してもらい、居間で美味しい出汁巻き玉子とチキン南蛮を食べさせてもらった。
ここの甘酢あんのソースも絶品なんだよな。
デザートにはスイカが出た。夏感あって最高だな。
異世界産よりしっかりと甘い。
縁側には午後の眩しい光を受けた綺麗なクラゲの風鈴が吊られていて、涼やかな音がしていた。
「そんでばぁばのとこでね、とうもろこしとトマトをとったよ! 楽しかった!」
姉の娘の名前は島崎心愛、ここあちゃんという名であだ名はここちゃんだ。
彼女が父方の祖母の家に行った時の事をお昼ご飯を食べながら教えてくれてる。
あちらの家庭菜園の話なんだろう。
「よかったね、ここちゃん。とうもろこしもトマトも新鮮で美味しかったろ?」
「うん! おいたんのお友達、いつまでうちにいれるの? 明日一緒に釣りに行こうよ!」
釣りも好きだが時間がかかる。
「釣り? 残念だけど、そろそろ帰らないといけないんだ、また今度な」
「えーー、明日は近所の川でうなぎ釣りだよ?」
わーーっ! しかもうなぎか!
行きてぇ!! でも、釣りは時間がかかるし、洞窟の壁画前で絶対騎士が心配して待っててくれてるから、あまりこちらに長居をするのも悪い。
「うなぎいいなあ! でも俺を待ってる人がいるからまた今度な」
そして食後に姉と物々交換をしながら軽く会話をした。
「涼、じゃない、今はケントか、今日はなんでまた駅ビルまで行ってたの?」
「A4サイズが入るフォトフレームを探しに。家族の写真を入れたくて」
「え? 家族ってあちらの? それ見れる? 見たい」
姉が異世界の俺の家族に興味を示した。
それはそうだよな。
「ああ、見れるよ。公爵夫人と公爵令嬢が今の俺の家族だ」
俺は魔法の袋の中からプリントアウトした、ひまわり畑の妻と娘の写真を取り出して姉に見せた。
「わー! これが奥様! 美人! お貴族様だ! 高貴な雰囲気!」
姉は矢継ぎ早に興奮した声で感想を伝えてくる。
俺もなんとなく鼻が高いよ。
「公爵夫人だからな」
「それでこっちの可愛い子が、悪役令嬢のギロチンにかけられる……」
姉の勧めてくれた漫画なので、ミルシェラの原作での運命を姉は知っている。
「絶対そんなことにはさせない! 運命を変える! 娘は第二王子にはやらん!」
俺は確固たる意志を姉に伝えた。
「な、なるほど、頑張って」
「ああ」
それから姉に車で家まで送って貰い、また蔵の鏡から異世界へと戻った。
「公爵様! 無事のお戻り、安心しました!」
「心配させてすまないな」
洞窟の警護の騎士達が3人いて、やはりゲートの壁画の近くで出迎えてくれた。
彼等に護衛され、俺は無事ダンジョンを通り抜けて別邸に着いたのは夜で、洞窟担当の護衛の騎士達とはここで一旦お別れ。
別邸には別邸の護衛騎士が待機しているから。
ここまで護衛してくれた3人には別れ際に「お疲れ様、これ、良かったら食べてくれ」
と、アンパンとコロッケパンとコーヒー牛乳を手渡して帰した。
そして別邸内で一休みしながら俺は一人で、お土産の弁当を食らう。
俺の晩飯はアジフライのついたのり弁当だ。
シンプルに美味い。ちなみに冷えたビールと共にいただいた。
喉越しを通り抜けるシュワシュワのビールで清涼感を味わって、こっちも最高だった。
ちなみに別邸の騎士達にも簡単に食べられるアンパンとコロッケパンとコーヒー牛乳を支給した。
大変美味しかったと高評価だった。
さて、ミルシェラは先に護衛達と帰したので俺も明日の朝には公爵邸に帰ることだし、こちらの寝室のベッドで一眠りしようと思う。




